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劇的なる浪漫詩集および抒情詩集 Dramatic Romances and Lyrics  作者: ロバート・ブローニング Robert Browning(翻訳:萩原 學)
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時は巻き戻る Time's Revenges

題名の Revenge は『復讐』ではなく、しかし『返答』でもないようで、このように訳した。といって SF ネタでもなく、これで正解なのか保証の限りではない。

私はずっと、海を越えての友人でありました。

私は彼を好きで、彼は私を愛しておりました。

I've a Friend, over the sea;

I like him, but he loves me.

全ては私の書いた本から起きたのです。

彼の贔屓ぶりが世に知られましたのは

It all grew out of the books I write;

They find such favour in his sight

彼がむごたらしくあなたを虐殺してからで

それもあなたが私の本を褒めなかったからでした。

That he slaughters you with savage looks

Because you don't admire my books.

彼は彼なりに最善を尽くし、その脈がもしかしたら

この重い頭に今宵嵌め込まれたのかも知れません。

He does himself though,---and if some vein

Were to snap to-night in this heavy brain,

次の月まで、私が生きようとしたならば、

周りは私を落ち着かせようとしたでしょう、

To-morrow month, if I lived to try,

Round should I just turn quietly,

あるいは寝間着から伸ばした私の手が

彼を見つけるまでは。遠い国から彼は来て

Or out of the bedclothes stretch my hand

Till I found him, come from his foreign land

この貧しい場所に私の看護をしようと

私の吸物を作り私の顔を洗う

To be my nurse in this poor place,

And make my broth and wash my face

私の火を灯し、そして何よりずっと

古き良きユーモアに満ちた笑顔で付き合うものだから

And light my fire and, all the while,

Bear with his old good-humoured smile

つい私も言ってしまう「あまり近づかないで頂戴

来るなら殺して、夜も昼も止まらないんだから

That I told him ``Better have kept away

``Than come and kill me, night and day,

こんなの熱で動悸や痙攣するより酷いじゃない

彼のぎこちない靴のきしみったら!」

``With, worse than fever throbs and shoots,

``The creaking of his clumsy boots.''

私にはわかります、彼ならこうしたに違いないと。

セント・ポールが2時を打つようにはっきりと。

I am as sure that this he would do

As that Saint Paul's is striking two.

思いますに、むしろ悩みの種は私。

そうです、会わないよりは会った方が良い。

And I think I rather ... woe is me!

---Yes, rather would see him than not see,

手を挙げるだけで彼をそこに座らせられたなら

でも私の前には空の椅子しかありませんから

If lifting a hand could seat him there

Before me in the empty chair

今夜、私の頭痛は本当にきつくて

もう読むことも考えることも辛くて

To-night, when my head aches indeed,

And I can neither think nor read

紫色になっている指ではペンも持てないほど

この屋根裏部屋は凍りつく寒さで!

Nor make these purple fingers hold

The pen; this garret's freezing cold!


さて私は女性であった筈。そこに男が

目覚める、笑う幽鬼にして蛇の王子が

And I've a Lady---there he wakes,

The laughing fiend and prince of snakes

私の中で、彼女の名に於て祈るや

運命はその途に何やら化け物を寄越す

Within me, at her name, to pray

Fate send some creature in the way

彼女へ捧げる私の愛も、色褪せてしまうような

突き上げられ表向き我慢させられるような

Of my love for her, to be down-torn,

Upthrust and outward-borne,

なので私も自分に示すことにしようか、海よりも

深い情熱を私が要することになるのだと

So I might prove myself that sea

Of passion which I needs must be!

それ良くないことばかり考えるわ想像は異様だわ

寝たきりのその姿は弱々しい等など

Call my thoughts false and my fancies quaint

And my style infirm and its figures faint,

皆批評家は言い、まだまだ非難は続くのだが

怒りの言葉は一言だってあなたに届きはしない。

All the critics say, and more blame yet,

And not one angry word you get.

しかし喜んで欲しい、私が迷っていることに

我が頬を彼女の足元に差し出そうか

But, please you, wonder I would put

My cheek beneath that lady's foot

我が足元に踏み躙るよりはましかと、

かのフィレンツェ人の栄誉を。

Rather than trample under mine

The laurels of the Florentine,

そしてあなたは見ることになる、如何に悪魔が足掻くかを

火の神が寄越されるか、さもなくば他の終末を迎えるかを!

And you shall see how the devil spends

A fire God gave for other ends!

部屋へ上っては下りつつ、あなたに告げよう、

この屋根裏は、愛の最高の冠を以て飾られよう、

I tell you, I stride up and down

This garret, crowned with love's best crown,

そして愛の完璧な宴を以て供されようと。

思うに彼女が為に何を失おうと、

And feasted with love's perfect feast,

To think I kill for her, at least,

身も心も平和も名誉も構わない、

青年期の終わりや人たる者が目標にするようなもの一切。

Body and soul and peace and fame,

Alike youth's end and manhood's aim,

かくて我が魂は、罪作りな肉体にあって

満杯に満たされ、外にも内にも食われよう

---So is my spirit, as flesh with sin,

Filled full, eaten out and in

彼女の顔、彼女の目、

唇、可愛らしい顎、口元なる

With the face of her, the eyes of her,

The lips, the little chin, the stir

影が揺らぎを以て。そして彼女は

(あなたには告げよう)穏やかに決することだろう、

Of shadow round her month; and she

---I'll tell you,---calmly would decree

私は火炙りにされるべきであると。

それで彼女の欲望が達せられるなら佳し

That I should roast at a slow fire,

If that would compass her desire

そして彼女をして招待せしめよう

明日の夜、有名な大舞踏会へ。

And make her one whom they invite

To the famous ball to-morrow night.


天国は存在するのかも知れません。地獄は存在するに違いありません。

そしてその間に、私達の大地が此処に存在するのです。善哉!

There may be heaven; there must be hell;

Meantime, there is our earth here---well!

後半に出てくるフィレンツェ人とは、詩聖ダンテの事らしく。それにしては「神曲」への寓意は、とどめの一節以外に見られない。

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