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とある公園で、二人の男性が話していた。
一人は、平々凡々な容姿の黒髪の二十歳ほどの男性。
もう一人は金髪の、雰囲気だけなら遊んでる男性である。
金髪の男性が口を開いた。
「お前もたいがい、おっかない男だなぁ」
「なんの話ですか?」
「今回の仕事だよ。たしかに人手が足りなくてお前に手伝いを頼んだのはこっちだけどさ。
あの子、見捨てる必要は無かったんじゃないか?」
金髪の男が言う、あの子と言うのは黒髪の男性にとっては学生時代からの友人のことである。
昨日、発狂した恋人に殺されてしまったが。
「見捨ててなんていないですよ。
俺は絶交されても、とりあえず助言をしました。
それをどう受け取り、どう活用するかは彼女自身の問題です。
小さな子供ではないんです。自分で判断した結果でしょうから。
それで、彼女が命を落とす結果になったことは、とても残念に思いますけどね」
そもそも今回の件は、金髪の男性の下に舞い込んだ依頼だった。
昔は、祓い屋とか拝み屋、陰陽師、修験者とも呼称されたシャーマンの家系の末裔である。
その依頼というのが、掲示板にて八尺様(仮)と呼ばれていた少女の捜索依頼であった。
警察ではなんの手がかりも掴めず、捜査は事実上の打ち切りとなり、藁にもすがる思いで金髪の男性へ少女の家族が依頼を出してきたのだ。
しかし、ちょうど別件で立て込んでおり、すぐに取り掛かるのは難しかったため、金髪の男性は黒髪の男性にさらに依頼を出した。
もちろん二人の仲が旧知だったことも関係している。
調査を依頼して、黒髪の男性が調査を開始して少し経過した頃、知人であり、今回犠牲になった女性から助けを求められたのだ。
その頃には、つまり黒髪の男性が掲示板を建てた段階で、すでに彼は女性の恋人が怪しいことを掴んでいた。
しかし、物的証拠はなくこのままでは友人である女性も危ないと判断した黒髪の男性は、友人が初めて八尺様(仮)と接触した近所の森へ調査に出かけ、神隠しにあった、その後、今回の依頼人である金髪の男性へ一連の流れを報告して、再度森を訪れる。
そうして、骨となった八尺様(仮)を発見、通報した。
その後、金髪の友人曰く、八尺様(仮)の怨念やら諸々は祓える段階ではすでに無く、封印するか神として祀るか、もしくは八尺様(仮)の悲願を叶えてやるかという話になった。
それで、金髪の友人が出した答えが、まず死者の願いを叶えてやるというものだった。
そう決めた理由は様々な要因があるらしいが、決め手になったのは、黒髪の男性の友人である女性が現在交際していた、そして昨日発狂して自らの首を刃物で切り裂いて自殺した男を生かしておいても傍迷惑にしかならないし、もっと犠牲が増えるよりはいいと考えた結果だった。
もし、八尺様(仮)の気が今回の二人を殺しても収まらないようなら、封印か祀るかの二択になるだけだった。
幸いなことに、気が済んだらしく今は家族の元に遺骨は戻り、近いうちにちゃんと弔われるようだ。
「そういえば、お前の友達の彼氏さん、なんで被害者の目をくり抜いてたんだ?」
金髪の友人の言葉に、黒髪の男性は一度目を瞑り、今回の件で不幸な終わり方をした二人に忠告した時のことを思い出す。
報告するにあたって、黒髪の男性はあの家へ再度赴いた。
女友達には彼氏を無理やりにでも同席させるよう頼んであった。
その甲斐あって、二人に話をすることは出来たのだが、当たり前だが顰蹙を買って終わりだった。
だから、本当の所はわからない。
これは、黒髪の男性の妄想だ。
そう前置きをして、黒髪の男性は金髪の友人へ返した。
「過去の犠牲者を調べた時に、何人かはその顔を見つけることが出来ました。
写真や画像に写る彼女達の瞳は、とても綺麗で美しいと表現するには十分なものがありました。
だからじゃないですか?
すでに加害者は亡くなってますし、本当のところはわからないてすけどね」