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この話はここで終わりです。
数日後。
コテハン素人探偵は、廃墟の諸々の浄化を友情価格で頼んだ金髪青年と一緒に帰路に就いていた。
先程その浄化諸々が終わったばかりだ。
その帰路の途中、金髪が口を開いた。
「……そういやお前に仕事を依頼してきた友人とやらには連絡しなくていいのか?」
金髪の疑問に、素人探偵が答える。
「共通の友人か、別ルートで伝わるんで大丈夫です。
それに、そもそも連絡したくても、もう出来ないんですよ」
「?」
「今回のことで、俺も頭にきてアイツのこと着拒否して連絡先消したんで」
「そうか」
「アイツ昔からクズで有名だったんですよ?!
噂じゃ、別の学校の生徒孕ませたとかで退学寸前になったり、とにかく問題行動が多かったんです。
我儘が過ぎて、今まともに連絡とりあってるのなんてその共通の友人くらいですもん。
今回だって、俺、最初は断ったんですよ。関わりたくなかったし。
でも、あまりにしつこくって、仕方ないから受けてみたものの結果がコレですよ」
「まぁ、ろくな奴じゃなさそうだもんなぁ。
でも、なるほどなぁ、あの音声はそういうことか」
「音声??」
「いや、こっちの話だ。とりあえず恨み辛みがあるやつらは浄化出来たはずだ。
あと場も清めたから、浮遊霊なんかももう近づかないだろ。
ま、また心霊スポットになったらその時はその時だ。友情価格で料金分の仕事はしたからな」
「ありがとうございました」
「あぁ、そうだ。それと」
「はい?」
「連絡出来ないならあまり意味は無いが、念の為に言っておく。
もしまたその友人から連絡来ても、絶対に関わるなよ」
「そのつもりですよ。さっきも言ったじゃないですか」
「念押しだよ、念押し。わかってるならいい」
***
助けて、助けて、助けて。
助けてくれ!!
彼はガタガタと震える手で、友人の携帯へ電話を掛けた。
しかし、携帯電話から聞こえるのは、機械的なメッセージ。
相手の電話に繋げられなかった、という簡素で機械的なメッセージ。
「なんでだよ!? なんで出ないんだよ??!!」
ヒステリックに彼が叫んだ時、それは顔を出した。
ひょっこりと、顔を出した。
それは女の子だった。
あの日、階段から降りてきて彼と顔を合わせた女の子だった。
弟が一緒に肝試しに行って、不幸な事故で亡くなった子ではない。
彼の弟を襲っていたその子はすでに現れなくなっていた。
この子は知らない子だ。
そう、知らない子なのだ。
女の子がニコニコ笑いかけてくる。
「ねぇ、パパ遊ぼ?
ママは一人でブランコになっちゃって遊んでくれなくなったんだ。
だから、今度はパパが遊んで?
もうパパしかいないの、遊んでくれるのは」
「なに、言って?」
自室のベッドに上がってくる。
女の子が上がってくる。
「ひっ、や、やめろ!!
来るな! 来るなぁぁあ!!??」
「ねぇ、ねぇパパ、パパにはあたしが見えてるんでしょ?
あたしが生きてた頃は見えてなかったのに、今は見えてる。
ふしぎだね。ふしぎだよね。でもね、その不思議のおかげであたしはパパと遊べるんだ。
ねぇ、パパ」
――――今度は、捨てちゃ嫌だよ?




