白は嫌い黒は好き 中
珊瑚礁に大きな魚が寝ていた。普通鰭を曲げることは出来ない。泳ぐための鰭であるから折り曲げることも必要ない。その魚は金魚色の鰭を折り曲げていた。
魚と異質で白く、あるところには赤の海藻を上半身肌色の身体を守るように巻き付けていた。
海藻を食すアイゴという魚は不思議な海藻が揺れて食べようとするが中々食すことが出来ない。アイゴは諦めて不思議な海藻に離れていった。
大きな魚を巡回して守って敵が来ないか睨めつけるボディーガード。不思議なものを見る野次馬のお魚達。びびって逃走し巣に戻るお魚様々な魚がいた。
「ん...くすぐったいよ~」
大きな魚が大きく動きボディーガードを除いてアワアワして散開する。
海に声が響いて困惑する魚が岩にゴツンと当たったドジな魚もいた。
「ふぁぁ〜もう暗いね~ぐっすり寝ちゃった♪」
ボディーガードのピーちゃんはくるっと回った。
「えっ!ピーちゃんここまでやって来たの~?小さいのにさすがだね♪すごい♪」
小さく拍手する音はしないがピーちゃんに伝わったらしく嬉しそうに旋回していた。
「うん凄いよ。結構泳いだのに私を守ってくれるなんて♪」
「さてと...そろそろ移動しよっか。とりあえず黒い泡まで行こう!ホシもう一度見たいから。」
珊瑚礁に隠れて観察している魚達は突然強い水流に驚き奥深くまで隠れた。
「ふぱぁ」
ホシは昨日より少ない。しかしポツンと少しずつ光ってきた。
「あれー?少ないな〜あっ面白い~増えてきた!」
徐々に多くなり、あっという間に数えきれないくらいのホシが瞬いた。でも昨日よりあまりにも少ない。なぜだろううーん
今、全てが真っ黒。黒くて何も見えない。一人置いてけぼりにされてとても不安になるの。
でも黒くて何も見えないからこそホシはより綺麗に光る。一人じゃないよって皆言ってくれるの。とても沢山。だから私は白より黒の泡がすき♪
泡の呼吸に慣れてきた。
「そうだ!ムーンは何処にあるかな♪」
海をベットとして仰向けにプカプカ浮かんで観察する。あっこれ好き。
「んーえーどこかな...あれれー気のせいかな?ないんだけど。」
もう一度潜って目を擦る。目覚めたばっかだし。よし!スッキリ!
あ...人間も探さなくっちゃね。近くにリクがチラッと見えたしそこに行きたい!
頭だけひょっこり出して確認する。んーやっぱり昨日寝ぼけていたのかな?
「ムーンよりリクとやらに行こう!ムーンは後で探そういつでも見れるしね!」
ピーちゃんは頷くかわりにくるりと回転する。
リクかぁそこに「人間」がいるんだね。伝説の話が嘘かもしれないじゃん。私が確認してあげる。
ピーは人魚をみるが顔を確認することができなかった。金魚色の尾にぴったり付いていく。尾だけしか見えなくて上半身が暗くて何も見えなかったからだ。
珊瑚礁が無くなり底は光の砂粒と違う普通の砂だけになる。海面と底が近い。リクに近づいている。
泳げないくらいに窮屈になってきた。背中が泡に当たってるからもうほぼリクなんだろね。
「ぷぱぁ」
身体が海面にでるほど浅い。目の前は海がない。泡と砂だけ。今まで見たことないものばかり、昨日より驚くことばかり。異なる世界に放り込まれたみたい。
手でズルズルと全体を引きづる。鰭がもう役に立たない。泳ぐことができない。立つってどうやるんだろ。鰭が邪魔だなーこんな感情になったのは初めてだ。
先に海がない。いつも呼吸するのと同じくらい気にしていなかったけど...海があるありがたさが分かる。上も下もどこでも自由に行けた。でもここは....リクは...上には泳げない。下はサラサラの砂でできている。
なぜ上へ泳がないの?終始疑問だった。その理由が今手で支えないと崩れてしまう。
私の身体が重たい。
「ハァハァ重たい...」
こんなに重かったけ?上から何かぐんぐん押されている。座る体制に直すと楽になった。
「ここが.....」
リク.....何処よりも真っ黒で先が見えない。でも怖くはない。だってホシがいるから。沢山のホシが今も光って応援してくれる。
聞いたことがない音がする。いつも泳いでいる海の音。
不思議....ザザーーと赤子がまだ胎内で聞く安心する音がする。
また前に進んで戻って海が生きているみたい。
波に打ち上げられた銀髪で美しい人魚が座っていた。おとぎ話のように空想ではなく現実で、誰にも発見されずそこにいた。
楽しいはずなのに、なぜだろう笑えなかった。
怖くないのになんでだろう...
リクの近くにいるのになんでだろう..
泡ももう慣れて苦しくないのに......いつもなら楽しいはずなのに...
ああ..ここは海、先にはリク。私はこの先には行けない。ここまでだ。泳ぐとしない限り。やっぱり伝説通りなのかなあ...
超えられない柵ができてしまったような感じがする。
いや元々あったのだ。逆らえない自然の柵を目の前にして..伝説通りだ
『自然は美しく綺麗か醜く残酷。どっちでしょう。』
小さい頃問われた事がある
どっちかは分からない。でも答えはどっちもなんだろう。
ホシは手を伸ばしても届かない。誰にも独占できない綺麗なホシ。
リクは鰭を伸ばしても泳げない。残酷で美しい
「うっ......うっ.....もう.....こ、こまでなのかぁ...」
人間は奥深くにいてるかもしれないし...
腕ではなく着た巫女服で涙を拭う
「泣いちゃ駄目......もう泣かないって....」
決めたのに
人間に会うために人魚界に逆らってここまで...
「グスッ...やって来たのに...」
泣いても自然は助けてくれない。ホシさん助けてよぉ..知っている。ホシは誰でもない。だから私も助けてくれない。
初めて自然というものに恨んだ。泡の上には行けない。リクと海は何もかもが違う。そして自分にも....
「人間に..ウッ....会いたいのに」
手首で涙を隠して泣いた。ホシに見せたくないもの...
声は波の音よりも響いて悲哀の歌にも聞こえた。
........
暫く海に少し浸かった砂のベッドに座っていた。
ピーちゃんはいない。危険だから遠ざけた。何処かの巣で眠っているのかな。珊瑚礁が沢山あるから楽しんでまだ寝てないかも。
泡が暖かい。海もいいけどここでもぐっすり眠れそう...
泡の水流に当たって気持ちいい。銀髪は乾いて前髪が靡いていた。
髪が靡いてふふっと笑っちゃった。
「あーあ!私が人間だったらなあ!」
星に声が届くように大きな声で、スッキリした声でさけぶ。もし人間なら既に恋しているのかもしれない。不自由だけどリクにも泳げた。
もう元気を取り戻していた。まだ私は諦めない。人間を探す。絶対にホシの光に決意を向けた。
「はぁーースッキリした!我慢してたらより辛いからね!泣いてスッキリするのよ!」
ビシッと適当にホシに向かって言う。実際は言い訳だ。かっこよく言って恥ずかしさを抑えるために。
顔が真っ赤に...ゥー見ないで...誰もいないけど
呼吸するのが苦しい。独特な匂いと味がする。
観客が一人だけいるとも知らずに人魚は歌い始めた。
「♪....窮屈な世界だと知らなかった魚は窮屈な世界だけ~」
「ねぇ...世界だと気づいた魚は〜檻を破ったの~」
大陽陸はどこから美しい声、眠ってしまいそうな声が聞こえてきた。
「歌?」
海月渓愛は気付かず歌に集中していた。
「~檻を破って知ってしまって恐れて、怖くて元の世界に?.. ..!」
視線を感じて歌をやめて振り向くと....
え...人魚?私と一緒?
「Am! guyc poou....」
意味が分からない言葉だった。
もしかして...もしかして!人間だ!鰭がないし、リクの上に立っているから間違いない。
心の奥底では諦めていた。もう人間はいないと認めていた。
でも人間に出会えた。
この状況がなんだが楽しくて
人間に出会えて嬉しくて
男が慌てているのが可愛くて
「ふふっ」
声に出して少し笑ってしまった。変に思われてないかな?ちょっと不安になる。
やっぱり白い泡より黒い泡のほうが好き...




