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ザハルカ

機関車の客室の中に肉が焼ける匂いが充満している。


越前は驚愕した。

「何だよ…これ…」


「何って、焼肉よ」姫姫姫が焼いた肉を口に運んでいる。

「…」アレスも涼しい顔をしながら物凄いスピードで肉を食べ続けている。


「それは見りゃわかるが、なんでこんな所に焼肉屋があるんだよ…」

「移動中暇でしょ?越前も食べなさいよ」

越前はゆっくりテーブルについた。


「あ、何の肉か気になる?」

「…ああ」

「大丈夫、牛の肉よ。やっぱりエルフやオークの肉を食べるのはなんか抵抗があって…元の世界に居たときみたいに牛や豚や鶏の肉ばかり食べてるわ、それで少し変わり者扱いされてるけど」

「俺も、牛とか豚の方がいいな…」

越前は焼肉を食べ始めた。


「今唐突に思い出したんだが、そういえばテスリスの町でkanonのグッズが流通してた理由が、確か『ザハルカ』っていう謎の脅威から身を守るためだって町の人に聞いたんだ。ザハルカって何だか知ってるか?あれも寄生虫の一種なのか?」

「あぁ、ザハルカね、ザハルカというものは、実は存在しないのよ」

「………?」


姫姫姫が急に真面目な顔つきになり、改まる。

越前も何となく緊張してしまう。


「越前、ここまで連れてきちゃって今更だけど、これから何が起きても良い覚悟はある?」

「いきなりだな、何だよ」越前は苦笑した。

「何が起きてもいいかなんて漠然とした聞き方したくないけど、そうとしか言えないから」

「…姫姫姫を信じれば、俺やテスリスの町は安全なのか?」

「………保証はできない、でも何とかしたいと思ってるから、協力してくれるなら、私も越前を助けたいと思う…」

越前は一瞬何かを思案しかけたが、直感が姫姫姫を信じろと囁き、越前はその直感に従った。

「俺は姫姫姫を信じる。覚悟はまだ、完全じゃないけどな」


「じゃあ、寄生虫について、ザハルカについて、真実を話すわ」

「わかった」

「私が知る限り、寄生虫について最も気を付けなくてはいけないことは、『寄生虫について知ること』よ」

「…」

「寄生虫について知ってしまうこと、寄生虫について思案することが、悪いものを呼び込む」

越前は急に頭痛を感じ始めた。毒の沼に足を踏み入れたような悪寒を感じた。

「ザハルカというのは、私があのテスリスの町から寄生虫を遠ざける為にばら撒いた嘘のバリケードよ」

「………」

「町の人はザハルカを恐れる。その為にカノンを信じる。その結界がある限りはあの町は安全」

「なるほどな…」

「実はね、他の町でも同じ対策を取ろうとしたの」

「まさか、」

「そう。他の町にはザハルカもカノンも定着しなかった。その町や村は滅んでしまったわ。テスリスには何か、私の保護よりも強い力が働いているのかも知れない」

「…巨夜…」

「越前の守護龍があの町を守っていたのかもね」


越前はテスラのことを思い出した。彼女は寄生虫について多くのことを知りすぎている。テスラが危ない。


「テスリスの町で俺が世話になった人は、寄生虫についての話をヘルメザから持ち帰っていた、彼女が危ないかもしれない」

「多分その人だけじゃない。ヘルメザから情報を持ち帰った人間は他にもいるはず。残念だけど寄生虫に関する記憶を消したりするような都合の良い魔法を私は使えないから、早いところ寄生虫の感染を『無知』以外の方法で防がなくちゃいけない」

「待てよ、まずい…巨夜は多分俺について来てる、あの町から巨夜が離れたらまずいんじゃないのか?俺はテスリスに戻らないとまずいんじゃ…」

「守護龍は別に越前の固有の能力というわけじゃないし、越前と一緒に移動しているわけじゃないわ。多分巨夜の社はテスリスにあるんじゃないかと思う。」

「…」

「それに巨夜だけが寄生虫からテスリスを守っているとも限らない、全然別の力かも」

「寄生虫について知っていても、『知ること自体が危険』という情報さえ知らなければ、危なくはない、ってことはあり得るか?」

越前の頭痛が強くなる。越前は目が回ってきた。

「それ以上は立ち入れないわね、はやく権限を手に入れないと…」


「くそっ…なんか、人質を取られた気分だ…こんな所で焼肉なんか食ってる場合じゃないぜ、早くフロストに着かなきゃ…」


ゴゴゴゴゴン!

突然車内が激しく揺れた。

「何だ?」

乗務員らしき男が慌ただしく部屋に入ってくる。

「姫姫姫様!線路に人が、人が立ち入りました!」

「人の立ち入り?」

「その人間が…機関車を、素手で、素手で!受け止めました!」

「!」

ただの人間じゃない。越前と姫姫姫とアレスの三人は車を降りて汽車の先頭に向かった。


汽車を素手で受け止めた男は、長身で眼鏡の男だった。汽車を受け止められる程の力があるようには見えない。


「何なんだ…お前は」

「トク トウ セキ ハ ドウ ?」

男の声は異常に高かった。

「越前、そいつ守護龍よ!」

「!」越前が姫姫姫の声を聞いた時、越前は男の眼鏡の残像しか見えていなかった。本体は既に越前の懐に入り込み、越前の心臓に一撃を繰り出していた。

「が」

越前の心臓は抉られて潰され、その衝撃で越前は100m後方に吹っ飛んだ。

越前は三度絶命した。


「越前!」姫姫姫が叫ぶのと同時にアレスが水蒸気の中から騎士の姿で突然現れ、眼鏡の男の腹を蹴り上げた。

アレスは風から3mはある巨大な大剣を出現させ、空中に舞い上がった男の首を切り上げて切断した。

吹き出す血。だが男の体は一瞬光の粒に変わり、次の瞬間には傷が完璧に再生していた。


「ミヒ メ メ メ メ」

眼鏡の男が着地し、姫姫姫の方を見る。

その視線をアレスが一直線に切り裂き、眼鏡の男の眼球を眼鏡ごと半分裂いた瞬間、また眼鏡の男が光に変わって別の場所に現れる。


「越前!」姫姫姫が越前に駆け寄る。胸に開いた大穴。

姫姫姫は白魔法を使った。越前の傷口の血管が森のように茂り、傷口を塞いだ。

「越前!起きて!越前!」

叫ぶ姫姫姫の背中を守るようにアレスが大剣を構える。

眼鏡の男は太陽の方へゆっくりと歩き出した。

「ヒ ヒカ リノ ホウ ホウ」


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