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みつばちジョニー

作者: Aoi

ある森の中に、きれいな花畑がありました。


色とりどりの花の周りには、たくさんのみつばちが飛びまわり、一生懸命花のみつを集めていました。


そんな中、一匹だけすごい速さで花から花へと飛びうつっていく、ひと回り大きなみつばちがいました。


ジョニーです。


「どいてどいて!」


ジョニーは他のみつばちよりも何倍も速く、何倍も多くのはちみつを集めていました。


「今日もみつを集められるだけ集めて、いつかみんなにおいらのはちみつを食べてもらうんだ!」


ジョニーの夢は、自分が集めたはちみつを世界中の人たちに食べてもらって元気になってもらうことでした。


風邪をひいた子がいればお見舞いにはちみつを持っていき、落ちこんだ子がいればはちみつで元気づけてあげました。


「やっぱりおいらのはちみつは最高だね!」


太陽の光を受けて黄金色に輝き、どこまでも澄みきっている自然のままのはちみつは、ジョニーの何よりの自慢でした。



ある日、森の近くの小さなとんがり屋根の家に住む、おばあさんのところにはちみつを届けに行きました。


「おばあさん、今日もおいしいはちみつがとれたよ!」


ジョニーはいつも、このおばあさんにはちみつを届けていました。


「おや、ありがとう。今日も元気そうでなによりだね」


そう答えたおばあさんのそばに、小さなくまの子どもが眠っていました。


「そのくまの子はどうしたんだい!?」


ジョニーはびっくりして、思わず聞きました。


「森の中でけがをしていたから連れてきたんだよ。

 けがを治して、元気になるまで面倒をみてあげようと思ってね」


おばあさんは、すやすやと眠っているこぐまを優しくなでながら言いました。


「それならおいらのはちみつを食べさせてよ!

 おいらのはちみつは体にとっても良くて、元気が出てくるんだから!」


ジョニーはおばあさんに提案しました。


「そうだね。それじゃはちみつをたっぷり使ったパンでも焼いて食べさせてあげようかね」


それからおばあさんは、生地をこねて、はちみつをかけて、オーブンでじっくりとはちみつパンを焼きあげました。


「うーん、とってもいい香り!」


ジョニーが思わずつぶやくと同時に、その焼きたての香ばしい優しい香りで、こぐまは目を覚まして起き上がりました。


「食べたいかい?」


おばあさんが聞くと、こぐまは大きくうなずきました。


「ほら、お食べ」


焼きたてのはちみつパンは、ふわふわとしてとろーり甘く、幸せが口いっぱいに広がっていきました。


もともととてもおとなしいくまの子でしたが、この時ばかりは夢中になってパンを食べました。


「気に入ってくれたみたいだね!」


一生懸命はちみつパンを食べるこぐまを見て、おばあさんは安心しました。


「はちみつには栄養がたっぷり入っていて、体にとってもいいんだ!

 たくさん食べて早く元気になりなよ!」


ジョニーもすっかり安心して、こぐまの周りをぶんぶん飛びまわっていました。



それからこぐまは、おばあさんの焼いたはちみつパンを毎日食べて元気を取り戻していきました。


森を駆けまわったり、丘をころころ転がったり、ときにはジョニーのはちみつ集めを手伝ったりもしました。


「こぐまくん、すっかり元気になったね!」


ジョニーのはちみつの力なのか、こぐまはけがをする以前よりもずっと元気になっていたのでした。


「やっぱりおいらのはちみつは最高だ!」


ジョニーはとても嬉しく思いました。



そんなある日のこと。


「いいかい、こぐまくん」


おばあさんが、いつものように夢中になってはちみつパンを食べているこぐまを、優しくなでながら言いました。


「これから先、悲しいときもつらいときもあるかもしれない。

 でもくじけてはいけないよ。

 どんなにつらくても”明日”は必ずやってきてくれるからね」


「大丈夫だよ、おばあさん。

 この子ならきっと元気に生きていけるさ。

 なんていったっておいらのはちみつをたっぷり食べてきたんだから!」


ジョニーは自信を持って言いました。


「そうだったね」


おばあさんとジョニーは、元気にパンを食べるこぐまを見ながら笑いました。



その次の春、ちょうど森の花畑が色とりどりの花を咲かせたころ、おばあさんは天国に旅立ちました。


とても安らかで、まるで気持ちよく眠るように旅立っていきました。


そしてその朝、こぐまは一人ではちみつパンを作りました。


今までおばあさんが作ってくれていたのを、じっと見ていて作り方を覚えていたのです。


おばあさんがそうしていたように、じっくりと生地をこね、はちみつをたっぷりかけてこんがり焼きあげました。


そうしてその焼きたてのはちみつパンを、ジョニーにプレゼントしたのです。


「ありがとう……いつの間にか覚えていたんだね」


ジョニーはひと口、食べてみました。


いつもみんなで食べていたときと同じように、パンはふわっと軽く、はちみつのまろやかな自然の甘みが口の中に広がりました。


「うん、おばあさんの焼いてたパンと同じだ、すごくおいしい……!」


ジョニーはびっくりして、おいしくて、急に懐かしくなって、心がいっぱいになって、小さな涙を一つぶこぼしました。


こぐまは、煙突から出る煙が青空へ消えていくのをじっと見つめていました。


「おばあさんが言ってたとおり、君にもおいらにも、みんなに”明日”はやってくるんだね」


ジョニーは、こぐまも自分と同じように悲しくてさびしいんだと分かりました。


「これからはきみが、はちみつパンで誰かを元気づけてあげなよ。

 はちみつならおいらがいつでも持ってきてあげるから」


こぐまは黙って、小さくうなずきました。



それから毎日、ジョニーははちみつを集めてはとんがり屋根の家に届け、こぐまはそこではちみつパンを焼きました。


そしてそこには、森の動物や生き物たちがパンのおいしそうな香りに誘われて、やってくるようになりました。


「おいしいおいしいはちみつパンだよ!」


ジョニーとおばあさんとこぐまのはちみつパンは、森じゅうのみんなをいつも元気づけてくれる、特別な贈り物になったのでした。



終わり



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― 新着の感想 ―
[一言] 個人的に思ったことを書きます。著者様の伝えたい事と違っていたらすいません。 技術というものは、思わぬ形で受け継がれていくものですね。おばあさんからこぐまへ、そして、こぐまからまた誰かに引き継…
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