平山一希の人生目録
何だか視線を感じる。
視線の出どころへ目をやるとニヤついた一人の男子高校生がそこにはいた。
「なんだよ」
彼に言うと、彼は相変わらずニヤニヤしながら近寄ってきた。
「お前、変な顔してぼーっとしてたぜ」
こいつは野村陸。
俺の友達であり、野球部員である。
「そうそう、昨日のアニメみたか?」
「みたよ。ヒロイン可愛すぎるだろ!」
陸は俺と同じアニメ好き、いわゆる『アニメオタク』である。
いつも俺は陸と、もう一人のアニメオタクである石川霧斗と一緒につるんでいる。
ただでさえ時間がない野球部にいながら、アニメも見なければならないとは、我ながら忙しいヤツらだなと思う。
「おーい!ヒマラヤー!」
「平山だよ!」
「ははは、今日もツッコミがキレてるなー」
人様の大切な名字をいじってくるのは村中太陽。
よく俺をいじってくるのだが、普通に良いヤツなので嫌いにはなれない。むしろ仲は良い。
「にしてもよー。今日の練習だるくないか?」
太陽が気だるそうに聞いてきた。
「まぁ大会も近いし、しょーがないんじゃないか?」
そう、一週間後に地区予選をひかえてる中、
我々の野球部は大会前の調整に入っていた。