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第15話 南の街の攻防戦

 〈暗き森〉でノエル達がレイアと出会い、旅を続けていた頃――。

 南方諸島に最も近い、大陸南端の港町。そこには各地から移動してきた戦士たちが集結し始めていた。カッツェの要請に応じて、魔物討伐のために集まってくれた猛者もさたちだ。

  ◆


 一人の街人が、慌てた様子で酒場に駆け込んでくる。


「また魔物だ! 今度は海岸に!」

「またか! すぐに住民を避難させろ!」


 酒場にいた戦士たちが、すぐに各自の武器を取って立ち上がった。その中の一人、賢そうな剣士が大きな声で街人に尋ねる。


「数や種類は?!」

「俺が見たのは半魚人タイプで、数匹まとめて陸に上がってきた。まだ数が増えているかも知れん!」


 既に何人かの戦士は、海岸に向かって駆け出している。その背中に向かって街人が叫んだ。


「――戦士殿達、頼んだぞ!」

  ◆


 海岸に到着した戦士達の目に飛び込んできたのは、どす黒い青色をした半人半魚型の魔物の姿だった。一匹ではない。大小合わせて五~六匹の集団だ。


「「うらぁああああ!」」


 すぐに戦闘が始まる。剣士の持つ長剣が魔物めがけて振り下ろされた。

 がぎっ、と鈍い音がして、半魚人の鱗のついた腕に傷が刻まれる。しかし魔物は全くひるまない。しゅう、という音と白い煙を立てて、傷が見る間にふさがってしまった。魔物はすぐに凶暴な牙を向いて反撃してくる。


(やはり、他の地方の魔物と比べて明らかに強い。回復力も桁違いだ。

 これらの魔物すべてが海の向こうから来ているのだとしたら、南方諸島では一体どれほどの被害が――)


 ぞくりと背筋に冷たいものを感じつつ、戦士達は魔物と対峙する。

 各地から集まった寄せ集めの集団ではあるが、腕に覚えのある者ばかりだ。その動きはすでに連携が取れている。各自が得手不得手えてふえてを補いあい、強力な魔物に対しても恐れずに立ち向かっている。


 屈強な戦士が、大剣を勢いよく上段から振り下ろした。

 魔物が態勢を崩した瞬間、細剣レイピア使いが急所を的確に突き、鋭い一撃を繰り出す。

 魔物が反撃に転じれば、片手剣使いの剣士が盾で防ぎつつ、後ろから魔導師が攻撃魔法を放つ――。

  ◆


 幾度もの激しい攻防の末、ようやく魔物の群れは退治された。幸いにも街人の発見と報告が早かったため、街に被害を出さずにすんだ。

 住民の避難が解除され、街に活気が戻ってくる。戦士達も互いの健闘を称えつつ、酒場に戻って次の戦闘までの態勢を整え始めた。


 ここ数ヶ月の間に、魔物の襲撃頻度は目に見えて上がっていた。魔物達のほとんどは、やはり海の向こうの南方諸島から襲来しているようだった。

 港町に集った戦士は、何人かの街守り役を残し、数人ごとにまとまって南方諸島へと渡っていた。南方諸島から大陸側への便りはほどんど来ないが、ここ港町での襲撃頻度から考えて、南方諸島での魔物被害が尋常ではないことは明らかだった。


 集められた戦士の中には、魔物の強さに恐れをなして逃げ帰ってしまった者もいた。しかし残りのほとんどは、先に南方諸島に渡った仲間を案じつつ、ジリジリとした気持ちで自らの渡航の日を待っていた。

  ◆


「カッツェは、まだ戻らないのか?」


 酒場にいた戦士の一人が煙草をふかしつつ、この街に呼んだ張本人の名前を出す。


「あぁ。俺が最後に会った時には、最北端の村の魔導師に協力を要請しに行くと言っていた。無事に協力を得ることができていれば、そろそろ折り返している頃だと思うが……」

「たった一人で、大陸を端から端まで縦断するというのか。何とタフなことよ」


 顎鬚あごひげを撫でながら笑うのは、先ほど話しかけたのとは別の男だ。少し年老いているが、魔導師のようだ。


「俺たちだけでは身が持たん。もっと強力な助っ人が必要だな……」


 中には、連日の戦闘で溜まる疲労に、不安を口にする者もいた。酒場の戦士達は口々に情報交換をし合いながら、カッツェの戻りを待つのだった。


  ◆


「……ぶえっくしょん!」


 赤銅色の鎧に身を包んだ大男が、盛大なくしゃみをする。


「カッツェ、風邪でも引いた?」

「いや……、どこかで色男の噂でもしているんだろう」

「……あっそ」


 隣で寝袋に包まっていたノエルが心配して声をかけた。すん、と鼻をかみながらカッツェが答える。心配して損したとため息をつき、ノエルは再び寝直すことにした。

 はは、と笑うカッツェ。目が覚めたついでとばかりに、ヴァイスと見張り役の交代へ向かうのだった。



===================

◆冒険図鑑 No.15: 南の港町

 西大陸の最南端に位置する港町。陸・海・空の貿易の要として、西大陸では最も発展している。石畳の道路、石造りの街並みは、東大陸の文化にも影響されているようだ。


 街の中には闘技場もあり、毎月闘技大会が催されている。優勝者には多額の報奨金も出るという。また、観戦者は試合の勝敗に賭けることができ、毎月 旅行者や冒険者から集まる賭博金によって街は非常に潤っている。そのため街には商人や貴族も多く住んでいる。

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