女子化2日目
起きて、胸元を触ってみると、そこにはやっぱり以前にはなかったふくらみ。
僕はぼさぼさの髪をどうにかするためシャワーを浴びた。
ここで、シャワールームの鏡に映り、初めて女の体を見ることになるが、まぁ華奢で白い体だった。
顔はそれほど好みではない。男だったときと変わらぬ特徴はしっかりと捉えている。
目つきが悪そうなところとか……。
シャワーから出て、パンツだけはいて自室へ制服を取りに行く。
スカートをはいて、シャツを着ていると、ケータイが鳴った。
電話のようだったので出ると、それは直矢からだった。電話番号、いつ交換したっけなと思っていると、彼は話し出した。
『ちゃんとブラつけろよ』
「え?」
『そのまま制服着ただろ、お前』
「っ!?」
まさかと思い、窓を見ると直矢がこちらを見ていた。
僕は無言でカーテンをしめて電話も切る。
「くそぉ、なんでこんなラッキースケベみたいなことしてんだ・・」
でもブラなんてつける習慣ないし、忘れてた。
そこに関しては感謝するか・・。
なかなかブラがつけられず、しばし奮闘すること数分。
やっと着替えが終わり、台所から食パンを取り出して食べる。
準備をして玄関に行き、鍵が落ちているのを見つけた。
どうやら、昨日は鍵をしめて帰って行ってくれたらしい。
そして、その鍵をポストに入れたのか。
「おはよ、朱音」
ドアを開けると、直矢がいた。
「もうお前とは絶交だ、絶交」
「友達じゃなくて恋人になるってことでいいのか?」
「そうじゃねぇ」
一緒に登校するなんて、何年ぶりだろうか。
「お前、ほんと女好きだな。あんまかわいくない女でも、女子だったら一緒にいたいのか?」
「俺は朱音以外、好きじゃないけど」
「どうだか」
なんて話しながら教室につく。
直矢とはクラスが違うのでここでお別れだ。
「ちょっと、朱音ちゃん! 直矢とはなにもないって言ってたじゃない!」
席につくなり、女子がわらわらと集まってきた。
「あれからずっと美優が泣いてたのよ! なにも思わないの!?」
「ご、ごめんなさい……?」
ちらりと美優ちゃんのほうを見ると、彼女は目を赤く腫らしていた。
「だいたい、朱音ちゃんには遥希くんがいるんじゃないの!? いろんな子が遥希くんのこと好きなのに朱音ちゃんが仲良くしてるから諦めたんだよ!? 二人も彼氏候補がいるのおかしいよ!」
なんだと、僕は遥希と付き合っているのか? いや、候補だから付き合ってまではいないのか?
自分のことなのによくわからないな……。
「家が隣とか知らないし、ちゃんと縁切ってよ」
低い声でそう言われ、僕は頷くしかなかった。
その様子を見ると、女子は離れて行った。
直矢、愛されてるなぁ〜と思いながら、僕は座る。
ていうか遥希もモテるのかよ……。みんな柊家のことは知らないはずだよな。僕にしか言ってないって言ってたし。
金持ち補正がなくてもモテるのか。
うなだれていると、頭を小突かれた。
「つむじ」
そう言って、ぐりぐりと指で押される。
「もぉ、なんだよ!」
「いや? もう元気?」
「ん……まずまずかな」
押してきていたのは遥希だった。
僕は、女子の視線を感じながら話す。
「なんか、僕とお前が仲良いことになってるらしい」
「仲良しでしょ? よく親友って言ってくれてたよ?」
「まぁそうなんだけど、やっぱ男女になると違うような……。あ、女の子の友達作ろうかな」
「難しいんじゃない? ちょっと廊下で話きいてたんだけど、結構な女子が朱音の悪口言ってたよ」
「えぇ? まじかよ…」
男子のときも好かれてる感じはなかったけど、女子からの好感度が以前より酷くなっている気がする。
女子になって二日目で女子に嫌われてしまっていた。