直矢との過去
物心ついた時には、もう直矢と遊んでいた。
毎日、毎日、家に来たり、家に行ったり、お泊まりしたり、お泊まりしに来たり。
まるで家族のようだった。
妹が生まれてからは、直矢もまるで妹の兄かのように振舞っていた。
私たちはいつも一緒だった。
幼稚園では、追いかけっこや縄跳びなど、体を動かす遊びばかりしていた。
一番楽しかった思い出だ。
だけど、小学校にあがってしばらくしたときに変化が起きる。
「***なのにずっと一緒にいるのはおかしいよ」
そうクラスメイト言われて、私たちはあまり話さなくなった。
それでも家に帰ると、二人でお風呂に入ったりしていたし、宿題も一緒にすることが多かった。
直矢は、少し離れていても私が怪我するとすぐに近づいて来たり、熱っぽいとすぐに気がついてくれた。逆も然りだったと思う。それくらい私たちはお互いのことをわかっていた。
「ねー、カブトムシ取りに行かない?」
夏休み、私はそう直矢に提案した。
彼は嬉しそうに頷いて、二人で森へ行った。よく知ったところだったし、両親とよくバーベーキューに行っていたのでわかると思っていたのだ。
だけど、夢中で仕掛けを作ったり、ほかの昆虫にも目移りしていた私たちは暗くなっていることに気付けていなかった。
しらない間にもう午後五時。夏なのでまだ明るいがそれでも雰囲気が変わっていて、私たちは迷子になった。不安で泣きそうな私に直矢は励ましの声をかけた。
「何があってもおれが守ってやるから」
ぎゅっとつないだ手は震えていたけど、それでも強がる直矢に私は救われた。かっこいいと思ったんだ。
直矢はどんなときも私を助けてくれる。それがどれだけ支えになっていたか。
私は直矢にずっと惹かれていた。
今思えば、誘拐されても文句は言えないほどの場所をうろうろしていたが、幸運にもそういった事件には巻き込まれなかった。ただ、二人ともぼろぼろにはなっていたが。
結局、父が私たちを発見し、そこから帰ることができた。
あれからこっぴどく怒られたのも今ではいい思い出だ。
しかし、そういったことを繰り返すうちに周りの目は思っていたよりも厳しくなっていった。
私たちは多少強引に引き裂かれ、外ではもはや他人だった。
私はただ直矢を見ることしかできなかった。
かっこよくなっていく彼を。
明るく、周りの人たちは笑わせる彼を。
遠くから、羨ましげに見ていた。
そうこうしているうちに中学生になり、私はとうとう私の知らない彼を見るのだ。
知らない派手な女子と、部屋で抱き合っている姿を。
「朱音、どうしたんだよ」
「・・気持ち悪い、近づかないで」
滅多に学校で話さなかった私たちは、むしろ学校でしか話さなくなった。
家で会話することはゼロになったのだ。
それでも一言二言、挨拶するかしないか。
所詮、こんなものなのだ。あっさりと関係は崩れてしまうんだ。
私から切り離した関係だった。
直矢は私のことをずっと気にかけてくれていたのに。
なんて、もう、手遅れだ。




