恋なの
「付き合ってほしい」
「・・え、えと」
百合子との婚約が正式に破棄になってから、遥希は私にそう告げた。
返事をすぐにはできずにいると、優しく彼は言った。
「わかってるよ、まだ朱音は決着がついてないよね」
「決着?」
「もやもやしてること、あるんじゃない?」
ある、と言えばある。
過去の記憶の齟齬とか・・。
「一つだけ聞かせて。僕のことは好き?」
「好きだよ、遥希のこと好き」
「ありがとう」
と、そこまで会話して、家に帰った。
そして自室に瞬間、私は死にたくなった。
もうそれは罪悪感というか、自分はなんなんだろうとか、そういう気持ちで、もやもやした気持ちっていうのは記憶のこととかどうでもよくなるほどの自分への不甲斐なさだった。
「うわぁああああああああああああああああ!」
「お姉ちゃんうるさい!!!!!!!!!!!」
叫ぶと、隣の部屋から壁ドンと怒鳴り声が聞こえて来た。
すぐさま口をつぐむ。
静かに整理しよう。
私は、恵太のことも好きで、遥希のことも好きなのか?
どういうことだ、ありえるのか。
この前のことで遥希のことを再認識したが、恵太のことも変わらず好きだった。部活に行ってときめいているのだから間違いないだろう。
え? じゃあ節操なさすぎじゃない?
付き合ってって言われたらどっちと付き合うんだ、私は。
心が苦しい。二人に好きと伝えた私はバカだ。
どうして、黙っていられなかったのか。
自分の気持ちを押し込められなかったのか。
前まで男だったのに、あっさり好きになって・・。
「朱音ー!」
窓の外から呼ばれて、私は窓に近く。
そこには直矢がいた。
「あれ、お前どっか行ってたのか?」
「あぁ、うん。遥希のとこ行ってた」
「へぇ、かわい〜格好じゃん」
そう言えば、今日はこの前買った女子らしい服装だった。
なんか直矢に見られるの恥ずかしいな・・。
「もういいだろ、窓越しで話すと母さんに怒られるんだよ」
「ほんと冷てぇなー俺なんかした?」
「・・」
ずっと直矢のこと避けていたからだろう、直矢は不安げに聞いてきた。
だけど、直矢はなにもしていない。私の心の問題だ。
「朱音、言いたいことがあるんだけどさ」
直矢は私の返答を待たずに言う。
「お前、前から女じゃなかった?」
「!」
その言葉を聞いて、私はびくっと体を震わせる。
神様は言った。
私が男だったことを知っている人が私のことを好きなのだと。
「直矢、もしかして・・」
私のこと、好きじゃなくなった・・?
い、いやいや、なにショック受けてんだよ!
恵太と遥希のこともあるのに、直矢が私のこと好きだったら問題が増えるだけじゃんか!
むしろ喜ばしいことなんだよ!
「もしかして、なに?」
「なんでもない!」
私は、そう叫んで窓を閉めた。カーテンも閉める。
いいことのはずだ。
直矢はもう私のことを好きじゃない。
なのに、なんで。
バカじゃないの。
「・・っ」
涙が出てくるなんて。
私、最低だよ。




