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リバーシブルラバーズ  作者: yoshino
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「ぼ、・・私」

「まだ私って言うのに慣れないの?」


妹が僕、じゃない私のギプスを触りながら文句を言う。


「もうすぐ取れちゃうんだよねぇ。残念」

「どういう意味だよ」

「お姉ちゃんがまた無茶するんじゃないかって思うわけですよ、妹としては」


妹は、ちっちっと指を振りながら言った。


「っていうか直矢くんと喧嘩した? 直矢くん、辛そうだったよ」

「直矢に関しては私も辛いんだけど」

「はぁーまた痴話喧嘩かぁー」


おもしろがって妹は言うが、当人にとっては結構辛い。とくになにかあったわけでもないから特に解決策が思いつかないのだ。


中学のときみたいに。

あの肌色を見た日みたいに。


心が離れて行く感覚。


「それにしてもかわいい服ばっかり買ったね。デート?」


今日、僕は買い物に行っていた。そこで何着かかわいい服とカバンを買ってきたのだ。


「デートじゃない。人助け」


これは遥希のために買ってきたのである。さすがに、遥希の父に会うのにいつものあの格好じゃまずいと思ったのだ。


「女子になっていくね」

「女子だからな」


遥希の父親と会うのは、ギプスがとれる翌日だ。そう設定した。

緊張する僕に、遥希はなんども大丈夫だと伝えたが、果たしてどこまで本当だろうか。



* * *


そしてとうとう、当日。

ギプスがとれた左腕はやや痛かった。骨が折れて痛いというよりは、凝り固まって痛かった。


ぼ、じゃない、私は、ピンクのワンピースを着て行った。

足元はヒールである。歩くときにゴリラみたいになるので、妹にレッスンを受けてなんとか見れる形にはしてきた。


私たちの集合場所は、高そうなイタリアンの店だった。


「朱音かわいいね、似合ってるよ」


声をかけられ、振り返るとスーツ姿の遥希がいた。


「お前も似合ってるな」

「おっと、父の前ではお前とか言ったらだめだよ」


遥希は微笑む。


「遥希さんって呼んでね」

「お、おおー。お金持ちっぽい」

「偏見だね」


遥希は笑って、私をエスコートしてくれた。

すでに父は来ているらしい。もっと早くくるべきだったか。


「こ、こんにちは」


頭をさげると、上から厳格な声が聞こえて来た。


「この子が、遥希の?」

「ええ、そうです。お付き合いさせていただいている朱音さんです」


僕が顔を上げると、渋いおじさまがいた。いかにもデキる男だなと思いつつ、横を見て驚いた。

女の子がいる。しかも、どえらい美人だ。幼いのに、美人に見える。


「どうして、百合子がここにいるのですか」


厳しい声で遥希が言う。

この女の子は百合子、さんっていうのか。着物を着ているし、いいとこのお嬢さんであることに間違いはなさそうだが。


「だって、遥希さんがどうしてもわたくしとは会ってくれないと言うのですもの」


ぎろりと女の子に睨まれ、私は萎縮してしまう。


「僕は、朱音さんが好きなんです。百合子とのお付き合いはできないと申し上げているはずですが」

「わたくしはそれでは納得できませんわ」


百合子は、おそらく遥希のお見合い相手だろう。気はきつそうだが、美人な子だし、おばさんとのお見合いかと勝手に想像していたが私たちよりもむしろ若そうだ。


なにが不満なんだろう。


「もちろん、私も納得できない。百合子は家柄もいいし、有名な中学にも通っている」


ちゅ、中学生かよ! 大人びて見えるな。


「僕は、彼女をそういった理由で選んでいません。朱音さんは素敵な女性です」

「戯言だな。どうせ遥希もわかる、そんな理由で女性を選ぶことの愚かさを」


自分で、家を出た遥希がいかにすごかったのかをわかった気がした。

よくこんな威圧的な父親のもとから出られたものだ。


「わからないのであれば連れ戻すぞ」

「やれるものならやってみてください。僕は、もうあなたには止められないところまできているのです」


今にも言い争いが始まりそうだ。こんなので料理なんか食べられない。

前菜が運ばれているが、誰も手をつけてない。


「朱音さん、でしたっけ」


と、百合子が私に話しかけてきた。


「騒がしいですし、わたくしたちは他の席でお話ししませんこと?」

「そ、そうだな」


そう言うと、百合子は片手をすっとあげてなにかをウエイトレスに言った。その後、すぐに席を案内される。

立とうとすると、遥希が私の手をつかんだ。


「待って、二人きりになるの?」

「そうだよ、向こうもなにか話したいらしいしな」

「やめておいたほうがいい、百合子は手に追えない」

「・・だけど、百合子はやる気満々みたいだ」


すでに百合子は移動している。

行かないと、まずいだろう。


遥希はしぶしぶ手を離した。


「いるだけでいいって言ってたのに、ごめんね」

「あとでなんかおごれよ」


そう言って、私は百合子のほうへと向かった。

さて、女同士の戦い。


頑張りますか。



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