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リバーシブルラバーズ  作者: yoshino
20/28

悩み


「おい、朱音」

「・・っ」


窓越しに直矢と目が合ってもすぐそらすようになってしまった。

喧嘩もしない。


恵太に告白してしまってから、僕は直矢の顔がまともに見れなくなっていた。


なんでだろう、とても悪いことをしているような気持ちになる。

別に僕は悪くないはずなのに。


しかも、遥希には申し訳なさがないのだからよくわからない。


「お姉ちゃん、どうしてこうなるの」


妹は怒り通り越して呆れていた。僕の傷を見ての感想だった。

左腕はギプスをつけている。お風呂がめんどくさくて仕方ない。


それでも、そこまでひどくなかったので全治一ヶ月半くらいだそうだ。

ちなみに、高校の授業は終了し、春休みに入ったのでそこまで不備はない。


僕は部活がない日は昼まで寝て、ゲームしたり妹と話したりというダラダラした日々を送っていた。


というのも、部活で恵太と話すたびに赤面して疲れてしまっているからだ。


「け、恵太、はい、水」


高菜につつかれて水を渡すと、優しげな笑顔でお礼を言ってくる恵太に僕の心臓はもたなかった。


「朱音、ありがと」

「う、うん」

「ほかでやれよ!」


ほかの部員からはやしたてられながらも、それでも僕らは付き合ってはいなかった。

恵太はなにか思うところがあるらしい。


「まだ俺たちは思い出せていないことがある。それがわかったら付き合おう」


思い出せていないこと。言われて見ればあるような気がする。

僕たちの思い出がどこか危ういのは、そのせいだ。


だけど、思い出していないことを思い出す方法なんて・・。


ピロピロリン♪


メールがきて、僕はスマホを見る。

遥希からだ。


『頼みごとがあるんだ、今すぐ来て欲しい』


今すぐ・・?

僕は妹に出かけるとだけ言って、遥希の家に向かった。



* * *


遥希の顔は少しやつれていた。

いつものとは違うパーカー姿で、余裕のなさが伺える。

部屋に入るやいなや、肩をつかまれた。


「どうしよう、朱音!」

「ど、どうしたんだよ」

「お見合いさせられちゃうんだよ! っていうか傷まだ治ってなかったんだね、呼び出してごめん!」

「え!? お見合い!?」


僕は驚いて、思わず大きな声を出してしまった。


「さすが柊家だな」

「僕、朱音以外と結婚したくないよ!」


おいおいと思いながら、僕はクッションの上に座った。


「お前はお見合い相手のこと知ってるのか」

「2回会ってるし知ってるよ、知った上で嫌なんだよ」

「ひどいな」


どんな子なんだよ。


「その子が嫌っていうよりは朱音がいいんだけど、朱音が僕のことを好いてくれるかはわからないだろう」

「以外と現実見てるんだな」


遥希は、ため息をついた。


「でもお見合い相手に結婚の希望をもたせ続けるのもひどいよね。今度会ったら、たぶん誓約書を書かされる」

「誓約書?」

「絶対結婚するっていう約束の紙だよ、婚姻届は年齢的にまだ書けないしな」


高校生になんてことさせるんだ。

っていうか、ううん・・好きじゃない子と結婚させられてしまうのか・・。お金持ちも大変だな・・。

さすがにそれはかわいそうだと思う。


遥希は、紅茶をいれると僕の前に置いてくれた。遠慮なく飲まさせてもらう。


「あのさ、無理を承知で頼むんだけど」


おずおずと遥希は言う。


「うん」

「僕の彼女として父に紹介させてくれないか」

「うえっ!?」


思わず紅茶を吹き出しそうになった。


「恋人がいるならこの話は先延ばしにしてくれるらしいんだ、頼む。こんなこと頼めるの、朱音しかいなくて」

「え、え、いや、ボク!?」

「フリでいいから! 頼む、とりあえず、執行猶予を伸ばさせてくれ!」

「ちょ、頭をさげるな!」


土下座一歩手前の遥希を起こす。こんな御曹司に頭下げさせられない。

助けてやりたい気持ちはある。

だけど、父親に紹介って・・こいつの父親はデカイ会社の社長、会うだけで震え上がる。


「隣にいるだけで、話さなくていいから!」

「・・わ、わかったよ、いるだけだからな・・」


結局、おされて約束してしまうことになった。


「巻き込んじゃってごめんね、絶対お礼はするから」

「ほんとだよ・・」


紹介されるまでに、ちょっと女子らしくする訓練でもするか・・。

とりあえず、一人称を「私」に変えて話すようにしよう・・。




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