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リバーシブルラバーズ  作者: yoshino
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お隣はリア充


 さて、そのまま僕は一緒に過ごす相手を見つけられずにクリスマスイブを迎えてしまった。

 街はすっかりクリスマスモード。クリスマスソングが鳴り響いているし、近所の家はイルミネーションが取り付けられている。

 おそらく、すでにグアムに向かった家族のことを思いながら僕は帰路についていた。


 遥希は「大丈夫? 父との話がひと段落したら会いに行こうか?」と僕のことを心配していたが、ほんとは僕だって遥希と過ごしたいわけではない。

 できることなら女の子と過ごしたいんだ。


 たまたますれ違った恵太にも「練習が終わったら連絡する」なんて言われ、僕はいろんな人に心配かけてしまってるんだなと思った。


 ピロピロピロリン♪


 ケータイが鳴り、僕はポケットから取り出して確認した。

 メッセージがきていて、画像も添付されている。

 そこには空港にいる妹の姿。自撮りしているみたいだ。


『おにーちゃん、お土産買って行く待っててね!』


 呑気なやつだなと思いつつ歩いていると、家の前に僕と同じ高校の制服を着た女子高生がいた。

 いや、近づくと正確には僕の家の前ではないことがわかる。

 直矢の家の前だ。


「ねぇー、入っていいの〜?」

「あー、今、家に誰もいねぇ……し……」


 家から出てきた直矢は僕の顔を見て固まった。


「あ、朱音」

「久しぶりー」


 内心では動揺しているけど、僕は片手を振ってなんでもないというように挨拶をする。

 直矢はすっかりチャラい男になっていた。制服も着崩して、髪もワックスでセットして、僕から見てもかっこいい。

 待っている女の子も茶髪で短いスカートをはいている。

 そして、その顔を見て驚いた。彼女は学年のアイドルといわれる美優ちゃんだ。


「さすが直矢、こんなかわいいカノジョできてるなんて」


 思わず心の声が漏れる。


「いや、ちが、こいつはカノジョじゃねぇっつーか」

「ひどぉい! でもそうなの! 何回告白してもオッケーしてくれないのよね。することはしてるのに」


 美優ちゃんが直矢を睨む。その顔もぜんぜんかわいい。


「女遊びもほどほどにしとかないと刺されるぞ、じゃあな」


 こいつは遊び相手が山ほどいるのに僕は独りか……なんて虚しく思いながら、僕が家に帰ろうとすると呼び止められた。


「お前んとこの家族がスーツケース持って出かけてったの見たけど、まさか今夜独り?」

「そうだけど」

「じゃあ俺と一緒に映画でも見ようぜ!」


 直矢が言うと、隣にいた美優ちゃんがぐっと直矢の腕を引っ張って自分のほうに寄せた。


「今日はずっと美優と過ごすって言ったじゃん!」

「え、そうだっけ」

「そうだよぉ! 直矢のバカバカ! もう! ずっと一緒にいてもらうんだから!」


 バカップル見せつけんなよ……。僕はその様子を背にして自室へと戻って行った。




 ダイニングテーブルには晩御飯が用意されていたが、とくにクリスマスだからというものではなく、ふつうの晩御飯だった。

 はぁ、今頃、直矢は美優ちゃんとちゅっちゅしてるんだろうか。


 テレビをつけてもクリスマスの話題。

 しばらく見ていたが、消してソファーの上でケータイをいじる。


 なにもする気が起きず、晩御飯を温めて食べ終わったあと、静かな部屋で僕はゲーム機をとった。

 少し遊んで、窓を見るとカーテンが開いていた。普段はしまっているのだが、母が掃除をした際に開けたのだろう。しかも、旅行に行くから慌てて掃除したんじゃないかな……。

 いつも通りの状態に戻そうと、カーテンを閉めようとしたとき、僕はまた見てしまった。


 直矢の部屋の窓が開いている。


「寒いだろ、閉めようぜ」

「いーじゃん! 寒いから美優、直矢にくっついちゃおー!」


 いちゃいちゃしている声。

 呆然として見ていると、直矢と目が合った。


「ちゅーして?」

「は!? いまは無理だって!」

「なにそれ、じゃあ美優からする」


 美優ちゃんに押し倒される直矢。そのまま、え、なにしてるんだろう。

 どんどん服を脱がされているように見えるけど。


「っ!」


 そこで、僕は自分のしていることが覗きであることに気づき、思わず自室から飛び出た。

 ずっと制服のまま過ごしていたので上にコートを羽織り、スクールバックを荒荒しく持つと、家から出る。


 そして走った。

 息がきれるまで走った。


 途中、雪が降り出して、女の子が「きゃ、ホワイトクリスマス!」なんて言っているのを聞いた。

 もうすっかり夜なのに街はカップルだらけ。僕の居場所なんてない。

 どこもかしこも人だらけ。


「・・・」


 しかし、さすがにずっと走り続けることもできず僕は立ち止まった。

 そこは閑静な場所。


 地元のさびれた神社だった。



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