恵太との過去
初めて、恵太に会ったのは中学一年生のとき。
ずっとやりたかった剣道部に入り、そのとき同級生の恵太と顔を合わせた。
でも、なぜだろう。少し記憶が曖昧だ。
「あのときの朱音はすごかった。背が低いながらも姿勢がぴんと伸びていて、美しいと思った」
「わぁ、すごいねぇ! 朱音ちゃん! 強豪高校の主将から褒められるなんて!」
「そうは言っても、昔の話だしな」
恵太の中でも美化されているんだろう。
部活前の準備時間、すっかりなれた僕は仕事をさっさとすませられるようになっていたのでこうしてすこしくらいなら話せる。
「当時は、俺が朱音を見ているだけの時間が長かったな」
「そうなのぉ。恵太ね、中学のときは朱音ちゃんのことばっかり話しててぇ」
「待て」
にこにこ話す高菜の口を恵太が無理やり塞いだ。高菜もごもご言っている。
「高菜の言うことはあまり気にしないでくれ」
「う、うん」
頷くと、高菜が無理やり恵太の腕を外して言う。
「シャイなんだからぁ」
少し不機嫌そうだ。そりゃそうか、自分の好きな男が他の女の話をしているのだから。
僕は、高菜の恋愛を応援することを決めたのだからこんなことじゃだめだな。
「そうだ、朱音」
と、恵太がかがんで僕の耳元で話す。
「直矢の家に行ったらしいな、直矢が喜んでた」
「えっ、あいつもう話して・・」
「仲直りしたみたいでよかった」
そう言って、恵太は練習場へ。それを見た高菜が眉をひそめる。
「もぉ、ひそひそ話とかずるいよぉ」
「ご、ごめんな、高菜」
「・・ううん! 朱音ちゃん悪くないもん!」
首をぶんぶん振って高菜が言う。そうは言っても気になるだろう。
申し訳ないことばかりしている・・。高菜は僕が女子になってから初めてできた友達なのに・・。
「でも、中学のときに話してた相手って朱音ちゃんだったんだねぇ。なんだか、聞いてた話と少し違う感じがしてたから気がつかなかったよぉ」
「違ったんだ、そうだったかな」
「すっごく寡黙で、見た目は小さくてかわいいのに、中身がかっこいいって言ってたよぉ? あ、今もかわいいんだけどぉ! かっこよさは、あんまりないかなぁ。とってもフレンドリーだし!」
成長期遅くて、中学のときはチビだったんだよな僕。それは覚えているが、寡黙だったかな。だれかと間違えてるんじゃないか。
それにしても、この調子だと恵太は結構、高菜にいろいろ話しているんじゃないだろうか。自分に好意を持ってる子に残酷なことするな・・。
それは僕もか。
僕のことを好きだとわかっていながらほかの女の子とくっつけようとしているのだから・・。




