バトル
お、おうおうおう。
これはこれで圧巻だ。
「あ、あのぉ・・」
僕は女子に囲まれていた。
ギャルみたいな女の子。みんなスタイルがいい。
そして、クラスでも目立っていた女子ばかり。10人ほど。
これで僕が男だったらモテモテに見えるだろうか。否、見えないか。
彼女達はみんな、冷たい視線で僕を見ているのだから。
「どういうつもり」
「・・」
「直矢と毎朝一緒に登校して下校して。しかも、私たちとも遊んでくれなくなったんだけど」
その中でもリーダー格っぽい女の子が僕に歩み寄る。
これ、あれだ。いじめ?
いじめじゃないか、制裁を下されているのか。
「遥希くんとももう仲良くないって言ったのに」
さらに他の女子が言う。
「ご、ごめん。でも、ボクは離れようとして・・」
「どこがよ! あれだけ親密そうにしておいて!」
「ひぃっ!?」
肩をつかまれて僕は逃げ腰になる。
以前の僕だったら彼女らは背も低いし、腕も細いし、頑張れば振りほどいて逃げれたけど、今の僕はなんなら彼女らより小さい。
戦って勝てる相手ではない。
「何度も忠告しても聞けないようなら、物理的に痛めつけるしかないようなんだけど」
「い、痛いの嫌です、やめてください」
「じゃあ引っ越しでもなんでもして直矢から離れなさいよ!?」
引っ越せってそりゃ無理だろ! うちは賃貸じゃないんだぞ!
なんて言ってもわかってもらえないだろう。
「もうみんな告白してカノジョにしてもらったらいいんじゃ・・ない・・ですかね・・?」
「告白してもあんたがいるから成就しないんじゃない!」
それ僕のせいじゃなくて、好みじゃないだけじゃないのか。
にしても告白されてたんだ。ぜんぜんそんなそぶり見せなかったからわからなかった。
「聞いてんの!?」
「っ!」
制服を引っ張られ、近くに引き寄せられる。そして、右頰に平手打ち。
バチン!!
「痛っ!」
まじで痛い。ひりひりする。
手でおさえると、制服から手を離される。ふらふらとふらつきながら、体勢を戻すが、もうすでに僕はパニックだった。
「いい加減にしないと、学校に来れなくしてやるわよ」
「ぼ、ボクは、直矢のことも遥希のことも好きじゃない」
「それを本人に言えって言ってんの!」
足を蹴られ、僕はうずくまった。
なぜだ、女子ってこんな肉体的にバトルするものだったっけ・・?
妹はこんなの絶対しないと思うんだけど。
「ご、ごめんなさい・・」
「二度と直矢と遥希に近づかないで」
ここで頷くことは簡単だ。だけど、どうせあいつらは僕の気持ちなんて知らずに話しかけてくるんだろう。
「約束できないの!?」
「う、あ、そうじゃなくて・・」
「言い訳するな!」
また平手打ちが飛んでくる。
僕は固く目をつむって耐える。
耐える。
・・。
耐える。
あれ。
痛みがこず、おずおずと目を開けるとそこには腕をつかまれた女子。
つかんでいるのは
「恵太・・」
道着姿の恵太だった。部活が始まる前だったのだろう。
「見なかったことにする。だから、解放してやってくれ」
恵太がゆっくりと女子の手を離した。彼女らも突然の恵太の出現に驚いている。
泣き出しそうな子もいた。だったらするなよ・・。
「あなたも朱音が好きなの?」
ほかの女子が聞いた。僕が男だったことを知っているということはこいつも僕のことを好きなのだろうけど、そんな返答したら女子の怒りがさらに増える。
「俺は、好きじゃない。遥希と直矢も朱音のことは好きじゃないと言っていた。ただの友達だと」
「そ、そう・・なの・・」
女子達はそれを聞くと少し嬉しそうにした。
そして、やっと解放される。
僕は、恵太と二人になり、お礼を言った。
「ありがとう、お前がいなかったらぼこぼこにされてたよ」
「見つけるのが遅くなってすまない。朱音が女子からよく思われていないことは知っていた。それが直矢と遥希が原因だということも」
そう言うと、恵太は僕の頰に触れた。
「熱、持ってるな。冷やすぞ」
「いい、いいって。それよりお礼がしたい」
僕がそう言うと、恵太はしばらく考え、そして少し笑って僕に言う。
「じゃあやっぱり、マネージャしてくれ」
その誘いに、僕は頷いた。




