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夜行バスの乗客

作者: 神名代洸
掲載日:2016/12/15

遊びに行くために前日の夜から夜行バスに乗って行こうと友達と話していたが、それがのちに恐怖へのドライブになるとは考えもしなかった。

僕たちは5人。

横一列に座席はとってある。しかも最後尾なので多少の声を出してもうるさがられることもなく話が尽きることはないまま、こそこそと喋っていた。


「なぁ、夜の休憩時にさ、サービスエリアにはいるじゃん、起きて時間まで遊ばね?」「無理だって。そういうのってたいした時間とってないはずだぜ?」「えっ?そうなのか?それは知らなかったよ。ってかなんでお前知ってんだよ。」「なんかやりそうな気がしたから調べといたんだよ。」「なんかってなんだよ。」言われたそいつは膨れてその場で黙り込んだ。

それでも結局はやる事に。ただ出発時間だけは聞いとかないとな。乗り損ねて置いてかれたら話にならない。

運転手に聞くと30分くらいあるそうだ。

なら少しは遊べるかも…。と言うことでかくれんぼをやっている。

手っ取り早いのがそれだったのだ。時間は15分。それ以上は無しだ。時間になったらお開き。

で、ジャンケンして鬼を決めたのだが、負けたのは僕だったので鬼をやっている。

売店などは人が多いので探すのに一苦労した。

で、3人は見つかった。あと1人だ。

遠くで誰かが動く感じがしたが、ダチかどうかは分からなかった。

あと残り5分。

焦ったよ。

で、試しにバスに戻ってきて俺らがいた先を見てみると…いるではないか。これで全員捕まえたことになる。ガッツポーズをした僕。仲間は意外なところに隠れていたやつを小突いている。でも楽しかったぁ〜。

後は車内で食べる菓子でも買いに行こうと言うことで売店に来ている。さっさと買ってバスに戻って来た僕らは自分らの席に座りバスの出発を待ちながら菓子を食べていた。

その時は他にも乗っている人はいたのだが、皆顔色が良くない。

バスを間違えたか?そう思って言っていたらバスが発車した。

バスは目的地まで運んでくれる。

ペチャクチャと喋っていたが時期に睡魔に襲われ皆眠りについた。

どれくらい走ったのだろう…。

目が覚めた僕はバスの前の方を見た。

乗客は少なくばらつきがある為みんなの様子がよくわかる。

バスの走る音以外は何も聞こえてこない。

両隣のダチもみんな寝ていた。

「何だよ。みんな寝てんじゃん。ってか遊ぶんじゃなかったのかよ。」僕は独り言をブツブツと言っていたが声をかけて来た乗客がいた事に気付くとその顔を見た。

知り合いでも何でもない。

なのになぜこの人は僕に声をかけて来たのか…謎だった。


「あの〜、あなたも寝られないのですか?実は私もなんですよ。バスの座席って窮屈ですからね。落ち着いて寝られないって言うか。」「で?どうして僕に?あなたのことは何にも知らないんですよ。話なんかできるわけもない。」僕は突き放すように話を終えようとした。すると、目の前の人は一瞬僕を睨みつけるような顔をしてまた平常心に戻っていた。そんな顔をしてる。


「このバスどこ行きか知ってますか?」「はぁ?○×行きでしょ?」「はぁ〜…、違いますね。」「じゃあ、どこ行きなんだよ。」「あの世行きですよ。自分じゃ行けない人の為にバスが出てるんですよ。知らなかったんですか?」僕は冗談かと思っていたが、とてもそんな風には見えなかった。と言うことは…。僕は友人達を慌てて起こし、このバスはやばいと皆に言った。けれども誰1人として僕のことを信用していなかった。それもそうだ。皆寝起きでボケていた。

しかし、僕の必死の説得でようやく本当だと気付き、慌てて運転席へと歩いていく。

途中まで来た時に突然ブレーキを踏まれたせいかバランスを崩してその場に倒れた。皆将棋倒しのようになっている。

「いってってってってっ。大丈夫かぁ?運転手も下手か?突然急ブレーキなんて高速でやったら事故るぞ、絶対。」そう思っても仕方がないブレーキだったのだ。

しかしわざとではなかったようだ。こちらをちらりと見てまた普通に発進したのだから。

しかし、気になった…。始めと運転手が違うと言うことに。

さっきの客が言うには、交代時間だからだそう。ならなんの問題もない…ってか本当に変な人だ。あの世行きバスなんてもの聞いたこともない。

皆首をかしげたが、一人仲間のダチが言った。そう言う噂のバスがどこかのバス停から出てると聞いたことがあると。

んなこと今急に言われても、対応のしようもない。

次のバスが泊まる場所まで着いたらすぐに降りようと言うことになった。

もし本当ならやばいからだ。

しかし、発進してからまだ時間は経っていない為、止まることはなく高速を走り続ける。

小一時間ほど経った頃ようやくバスは給油の為ガソリンスタンドに車をつけた。僕等はそこがどこかわからなかったが、降りたいと運転手に告げ荷物を手に慌てて降りた。その後何事もなかったかのようにバスはゆっくりと走り出した。

僕等はその姿を黙って見ていた。これが最後の見納めになるかのように…。

実際、見納めになったのだ。

バスはそれからしばらくして高速を脱線して落ちたのだ。それを知ったのは降りてからしばらくしてから。

サービスステーションに降りていた僕等はそこで事故のことを知る。

全員ほぼ即死。

バスは大破して燃えたそう。スピードの出し過ぎとのこと。運転手は片手で携帯をいじっていたようだ。


僕等はある意味命拾いしたようなものだ。

ホッとしていたが、その時側には例の男性客が立っていた。男性いわく、腹痛の為しばらくトイレにこもっていたそうだ。その為バスに乗り遅れて僕らと同じようにここで降りたことになる。

ここは一般道への道が近い為、歩いてくる人もいるそうだ。何しろ足湯という魅力的なものがあったのだ。

賑わっている。

そこに僕らは場違いな感じで立っていた。

例の男性客も一緒だ。

ただ違うのは先ほどよりも顔色が良くなっているということだ。

「さっ、どうする?ここからタクシーでも捕まえて帰るか?」「ああ、そうだな。それがいいかもしれないよな〜。」「あなた方は考えが浅いですね〜。私達は本来事故したバスに乗ってたはずなんですよ〜。警察が来るんじゃないですか?ここに。」「ここに?でも、俺らが降りたのなんかわからないはずじゃ…。」「わかりますよ。荷物が減ってますからね〜。それに私が先ほど連絡しましたから。」「なんだよ。そんなこといちいち連絡したのかよ。ったりいなぁ〜。」

「めんどくっせー!」「だよな〜。」

仕方がないのでしばらく待っていると警察がやってきた。

そこでなぜ車から降りたのかを何度もしつこく聞かれた。それはそうだ。間違えば死んでいたのだから…。それでも僕等は悪くないことはすぐにあの男性のおかげで証明されることになった。

皮肉なものである。

良い印象などない。

なのに唯一グループではない彼が証人になったのだ。まぁ、ありがたいと言えばそうなのだが。

事情聴取を終え、解散となった僕等は各々タクシーを拾い帰ることに。

タクシーを拾うのは僕が最後のようだ。

まぁ、そんなことはどうでも良いが、あの男性はまだその場に立っている。不気味だ。

気にしないでタクシーに乗り込み自宅の住所を言う。運転手は黙ってカーナビの地図に登録する。ここから車で30分くらいかぁ〜。

まっ、みんなおんなじくらいだからよしとするか。手持ちもあることだし。

車をスタートさせると運転手は黙ってカーナビの地図通りに車を走らせる。

黙って景色を見ていると思い出してしまい気味が悪い。

そこで運転手に話しかけてみることに。

初めは黙って聞いていただけだった運転手は次第に喋り始め、話は盛り上がっていた。

その時さっきのサービスステーションでのことを思い出し、話してみると運転手は黙り込んでしまった。こちらでもよく聞く話なのだろうか…。


運転手はポツポツと喋り始めた。

この業界…長くいるが、噂は時々入って来るらしい。決まってバスの事故が深夜に起きる。しかも運転手は何かしら運転とは別のことをしていた時に起きることが多いらしい。

タクシー業界ではない事だ。

その時突然タクシーが急ブレーキをかけた。

前の車が接近しすぎて危なくなった為だ。

ヒヤヒヤものだった。

運転手も平謝りながらも運転を続ける。目的地まであと5分と言うところか…僕はうつらうつらとし始めていた。その時、運転手の顔があのバスの運転手に似て見えてブルっとした。運転手は真っ青な顔をしていた。震えながらどうにか車を路肩につけることができたのが奇跡のようなものだ。

「す、すみません。ここで良いですか?」「えっ?まだ先ですが…。何かありましたか?」「ええ、足を誰かが掴んでる感じがしましてね。」運転手は真っ青だ。

僕は運転手の足元を見て見た。するとそこにあったものは…たくさんの人の手だった。

両足びっしりと掴まれていた。青白い手は死人のものだとわかるのに対して時間はかからなかった。

「うわっ?!うわーっ!!」

僕は転がり出るようにタクシーから降りて走って逃げた。タクシー代はちゃんと払ったよ。お釣りはもらわなかったけどね。

すぐに友人にも連絡してみると、友人も同じ目にあったと震えた声で喋っている。

運転手はどうなったかなんて知らない。

ただ、当分バスやタクシーには乗れないなと思ってしまった僕だった。


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