最強文豪-些細なカフェの過ごし方-
午後の優雅なお茶の時間。
「ねえ、貴生川さん。カフェ行きたい、カフェ」
「はっ?」
高級なお茶でティータイムしている最中、サギは砂糖を紅茶に大量に入れながら言い放った。
「だってさ、いつも屋敷のお茶だもん。たまには街に出てフワフワな泡のあるカフェラテ飲んでみたい」
カフェと言ってもこいつが言っているのは、
喫茶店ではなく珈琲を提供する方のカフェだ。
きっと今お前が砂糖をバカほど入れて飲んでいるお茶は
その数倍の値段がしているぞ・・・。
なんて贅沢な奴なんだ・・・。
「それに俺、そういうカフェ行ったことないし」
「カフェはどっちかって言うと高くつくぞ。コンビニの方が安くて美味い」
思わず一般論を言ってみるが
「コンビニに珈琲があるの!?
コンビニ行ったことないから新聞とおにぎりしかないと思っていたよ」
逆に玉砕された。
「貴生川さんはカフェ行ったことないの?」
「なんだよ、それくらいあるよ。まあ、編集との打ち合わせに使うから代金は向こう持ちだけど」
「なんだか、ケチだね」
「そうじゃなかったら行かん」
酒を飲むかのように紅茶をぐいっと飲んだ。
「じゃあ、今から行こうよ」
「え?今から?」
「ヘリ出すから」
待て待て待て!!!ヘリなんかで街に出たら騒動になる!!!
下手に迷惑をかけるのはよろしくない!
「電車で行け!」
「電車?」
「どうした?」
「切符の買い方わからない・・・」
・・・・・子どもか。
「うわあー!!これが繁華街!狭い所にたくさんの人がいる!」
盛大に一般人を否定する発言をするサギをスルーし、俺は先を歩く。
黒のスーツで歩かれるのはさすがに怪しかったので、服を選んでやる。
出版社から送られてくるメンズ雑誌を参考に選んだ。
我ながら「人」の服を選ぶのは上手い。というよりサギは元よりモデルのような見た目をしており、何を着せても似合うのだ。
カフェに着くまでに、街の女性が黄色い歓声を挙げてこちらへやって来る。
間違いなく、サギ狙いだ。
俺は繁華街に感動しゆっくりと歩くサギを引っ張った。
「ホラ、これがお前が飲みたかったカフェラテだ」
カフェに到着し、カフェラテをたどたどしく注文する。
いささかこんな場所はオシャレ層が来るところ。
俺自身も慣れていない。
注文し、数分後・・・
フワフワの泡が浮き、心地よい珈琲の香りが漂う。
「うわあ!本当にフワフワだね!」
そう言いながらキラキラした目でサギはカフェラテを飲む。
満足したようで、良かった。
俺は、周囲の目を気にしながら珈琲を飲んだ。
・・・もし、俺とサギが学生同士だったら、こうやって放課後にカフェにでも来ていたのだろうか。友人として。
「あのぉ~お兄さん、モデルですかぁ~?」
ふと気が付くと、周りは女性で囲まれていた。
サギをナンパする目的の女たちは気がついたら近寄ってきていて
俺たちは慌ててカフェから逃げる。
サギには悪いが目的の珈琲は飲めたみたいだし、良しとするか。
屋敷に戻った俺たち二人に、枯草が紅茶を淹れた。
サギは相変わらず砂糖を大量に入れる。
「ねえ、貴生川さん」
「なんだ」
「やっぱりゆっくり飲む紅茶が美味しいね」
「・・・・・」
ある意味、一般人の中に居なくてお前の場合は正解だ。