2章 FRIEND
「こ、これは....」
僕は入学当初のクラスメンバーではなく
長い間学校へ来てなかったので、ガラッと
クラスメンバーは変わっていた。
教室も担任の先生もクラスメイトも
全く知らないのに、何処か懐かしくそして、
辛かった。
やけに僕は皆んなから遠ざけられてる
ような気がした。ここから僕の学校生活
が始まる。今度こそ楽しい学校生活をー
〜ホームルーム〜
クラスの委員長らしきメガネの女の子が
教卓の後ろに立った。
「みなさん。おはようございます。」
無表情で、まるで違う世界を見るような
目でクラスの全員にあいさつをする。
「今日はみなさんは初対面の方がいらっしゃいます。自己紹介お願いいたします。」
..................
「あっ!」
あまりの急な振りに僕も数秒遅れて
反応してしまった。
「ぼ、僕の名前はシュン・アレクレイター
です。えーっっとーー、えー、好きな食べ
物は、ーーえっと、りんごです。」
一礼して席に座る。
座った瞬間顔が熱くなり、鼓動が早くなる。
人前で話すなんて、最初から高難度すぎる
と、自分に言い聞かせる。
「あのアレクレイター家の....」
「まさかぁー。」
「居場所がなくなったのか?(笑)」
「家にいてもクズ扱いなんだろうな(笑)」
「やめろって。聞こえるだろ(笑)」
クラスの生徒が口々にささやく。
......やっぱりこうなるんだ......
僕はアレクレイター家の長男なのだ。
その前に、アレクレイター家とは、過去に起こった《三代大陸戦争》と言う3回起こった大きな戦争に大きく貢献した組織だ。その戦前にはただの小規模な暗殺組織だったもののその戦争の貢献のおかげで、今になっては企業をはじめに学校や店、軍隊などを統括する大きな組織と成り果てた。
そんな、天下の大組織に生まれた僕は勉強は愚か魔法さえまともに使えないゆえに、家族からも兄弟からも生徒からも先生からも白い目で見られていた。
妹が唯一の救いだった。癒しだった。
あまりの情けなさに涙が机の上に落ちる。
どうして、どうして僕ばかり。
「なんか泣いてるぞ」
「なにあれ笑える。」
「やっぱり、、クズだな。」
その瞬間。
「クズはどっちよ(笑)」
挑発的なその言葉は一瞬で生徒たちを
静まり返らせた。そして、生徒が彼女
をギロっと睨む。僕もその流れに乗り
あの言葉の発信人物恐る恐る見る。
「本当にクズばかりね....本当に...
陰で愚痴愚痴と陰口ばかり...
本当に腹がたつわ!」
淡々と話を続ける彼女はとても美しく、
長い黒髪を風になびかせ必死に訴える
その姿はまるで女神だった。
「言いたい事があるなら本人にはっきり言うのがこの世界のルールよ!」
その時彼女は苛立った顔のまま教室のドアを開け、勢いよく閉めて去って
しまった。
僕も、吸い込まれるように彼女の後を追いかける。彼女の行った先は屋上だった。
「バタン!」
そっと閉めたはずのドアが風のせいで
勢いよく閉まる。
「えー、...さっきは...」
「なにか用?」
「さっきは、ありがとうございました。」
深く礼をし、心から感謝する。
その時彼女はこちらに振り向き、
眉間にシワをよせて、言う。
「別に助けたわけじゃないわ。」
僕を突き離すように言う。
「いや、でも実際助かったので....」
本当は嬉しかった。こんな僕を他人が
助けてくれるなんて、今までユキ以外
ありえなかったから。僕は心を踊らせ
ていた。なぜなら、彼女と《友達》に
なれるかも。と思ったから。
彼女が振り返って言う。
「言っておくけど!あなたも私が言った
クズの中の一人よ。」
教室で見せた苛立ちのまま言う。
「泣き虫だし、なにも抗議しないし、、、
腹がたつわ!あなたを見ていると。」
「......えっ......」
手足が震える。またもや僕はクズだった。
誰が見ようと、助けられようと僕は、、
クズだった。
「バタン!」
彼女は勢いよくドアを閉め、屋上から
立ち去る。
「なんなのよあの男。」
僕はまたもやこうなった。
友達になれると思ったのに。
また、友達ができなかった。
教室に戻れる気がしない。どんな目で
見られるだろう。どんな陰口を言われ
るだろう。考えただけで胸が苦しくな
った。なぜ、こんな家柄の子に生ま
れた、なぜなんだ。なぜなんだ。
僕はきずかぬうちに屋上の床を何度も何
度も拳で叩いていた。血が出るくらい。
なにをしている私。さっきあんな事を
言ったから。私のせいで、シュン・ア
レクレイターが、あんな事に、、、、
「ユ、ユキ・アレクレイター?」
屋上を下りる階段にユキ・アレクレイター
がそこに立っていた。
「私の名前を知っているんですね。」
もちろんだ。知らないはずがない。
この学校の魔法師の上位者だ。
この学校は、上位者を20名に絞り込ま
れる。ユキ・アレクレイターは16歳と
言う幼さでもう、上位の3位まで登り
つめている。
「なぜ、こうなった!!」
シュン・アレクレイターの叫ぶ声に
反応して、ユキ・アレクレイターが
咄嗟に走っていった。
私も流れに乗り、走っていく。
「っ?!」
私は愕然とした。
彼は心身ともに不安定状態、
何度も床を殴ったおかけで床と手は
血まみれだった。
「お兄ちゃん!」
ユキ・アレクレイターも口を手で押さえ
驚きを隠せなかった。
「も、もう、ほっといてくれ!」
立ち上がり猛ダッシュで屋上から立ち去る
シュン・アレクレイター。
「お兄ちゃん!」
必死に叫ぶユキ・アレクレイター。
彼女は俯いていた。
「だ、大丈夫?」
私が彼女の肩に手を乗せた瞬間。
「なぜ止めなかったの!」
「.....」
「あなた見てたんでしょ!」
彼女は泣きながら私の肩を揺さぶり
私に何度も問う。
「あなたがなにかしたの!お兄ちゃんに!」
「ハァハァ。」
息を荒げて私に何度も問う。
そして、シュン・アレクレイターを追い
かける。屋上から出ようとした瞬間に、
「許さないから。」
「バタン。」
その冷たい声に私は絶望した。自分に。
私は、クラスの皆んなにも、シュン・ア
レクレイターにもクズと言ってしまった。
なのに、なのに、自分がクズに成り下が
ってしまった。
私も追いかける。
シュン・アレクレイター
ユキ・アレクレイター
の元に。
謝らなくては。