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記された命と変化

奇跡的回復を果たした私は、その日のうちにもう一度精密検査を受けることになった。ありとあらゆる項目をすべて正常という結果がでてお母さんは安堵している。でも、そこにはお父さんの姿はなかった。気になった私が聞こうとする前にお母さんが教えてくれた。


「お父さんは、あなたの検査の結果が気になりすぎてソワソワしすぎてたから一度落ち着いてきなさいと外にだしちゃった。ごめんね。」


それを聞いた私は、ほんのりと心が温かくなっているような気がした。孤独しか感じなかった心はこんな些細なことでも温かく感じるようになっていた。私は、笑顔で答える。


「ううん、大丈夫だよ!」


それをみたお母さんは、笑顔で頷いてそのあとそとにいるお父さんを迎えに行った。その隙に私は、病室の鏡の前に立ちもう一度自分の姿を見る。ふと見ていると右腕に巻かれた包帯の隙間からなにかが見えている。見てはいけないと思いつつもどうもそこから目を離せないでいる私がいるのに気がついた。そして私は、決心してその見えているものの正体を知るために包帯を外した。そこには打撲の跡と擦り傷のほかに180とうっすらと記されていたのだ。


「これが私に与えられた最後の時間か・・・。イイヤツさんわざわざこんなとこにうつさなくてもいいのに。このことは、私だけ知ってればいいかな。」


と私が苦笑していると病室の扉がノックされる。右腕を隠さないとヤバいとおもったがすぐさまとびらをあけられてしまった。柳沼先生だった。あー・・いきなりばれちゃうのかなと思ったのだが・・・


「あー包帯を外したらだめですよ。傷口にばい菌が入って化膿しちゃいますよ。今巻き直しますね。」


何事もなく先生は包帯を巻き始める。あれ?これ私にしか見えないの?そんなことを考えたが口に出さないように胸裏にしまい込む。見えていないなら好都合と思ったからだ。


「柳沼先生ー。返事もしてないのに扉を開けたり何てちゃだめですよ。着替えてたらどうするつもりだったんですか?あ、先生もしかして確信犯?(笑)」


なんて笑顔でとぼけて言ってみる。前までの私なら絶対に言わなかっただろうけど今は違う。思ったことは素直に言おうと決めたから。


「それは、悪いことをしたね。ごめんね。うーん、さすがに学生に手を出しちゃうと僕が捕まっちゃうよ。」


と先生も笑顔で返してくれる。人と話すことって楽しいことなんだと実感した瞬間であった。包帯を巻きなおした後軽い検診をした後に先生は「またくるよ。」と病室からいなくなった。それに入れ替わるようにお父さんとお母さんが戻ってきた。


「おかえり、おとうさん!お母さん!」


と、私はその二人を今まで見せたことのない満面の笑顔で迎えるのだった。


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