この世界の始まり
今から遠い遠い昔。何もない世界に神様は自らの力を分断して、2つの種族を作った。それは竜と悪魔。竜は善き心を持つ種族となり、悪魔は悪しき心を持つ種族であった。彼らは始め出会うことなくその数を増やしていったが、世界は有限である。彼らが出会うことはもはや運命であった。彼らは己が生きていくために互いに争い、殺し合い、また数多の屍の山を築き上げた。
そのうちどちらも沢山の家族を、友を、同胞を失い疲弊した彼らは竜王と魔王、彼らの長との話し合いにより和平を結び、互いに協力しあうようにった。やがて竜王は最北端の大地に国を作り、魔王も最南端の大地に国を作った。
それからいくつの時が過ぎたであろうか。この世界にある生き物が生まれた。彼らは先の大戦で死んだ竜と悪魔の魂が混ざり合い出来た特殊な生き物。始めは誰もが特別な力があるわけでわなく、双方の種族も驚異ではないと思ったのか彼らに接触はしなかった。
だが、それは大きな過ちであった。彼ら人間は尋常ではない速さでその数を増やしていった。さらに魔法を発見し、様々な技術も大きく進歩していく。やがて人間は竜と悪魔の生きる大陸までその勢力を伸ばしていった。
古の言葉をつかう双方の種族とまったく別の言語をつかう人間は相容なれず次第に争い始め、人々は生きるために時に魔物の国以外のの集落を襲い、また生きる場所を失った魔物は人の村や町を襲うようになった。いくつかの竜は無駄な争いは避けるため、人が容易に立ち寄れない洞窟の奥や古びた神殿に身を潜み、魔物も彼らを守るという名目でその中に住むことを許された。
一時は人と竜、魔物の関係は悪化していたが一部の人間は彼らとの接触に成功し、竜の力を色濃く持つ人は竜人族、魔物の力を持った人を魔人族と呼ばれ、普通の人は違った力を持つようになった。
次第に落ち着きを取り戻したかも思えた人間であったが彼らの心は欲深く、双方の長を討ち取ろうという無謀な計画を持ち出した。だが竜王と魔王の力はあまりにも巨大で、人間は大陸の中央部に生きることを余儀なくされた。
それからまた月日と年月が流れ、人間に新たな力を持った子が生まれた。彼の名はレイアス、一本の剣を手に戦う勇者である。人々にとっての希望であり、竜と魔物にとっての新たな驚異であった。
さて、これはあくまでも勇者の話。物語の主人公は彼ではない。彼の仲間、長く孤独な生活を送っていた魔法使いの話である。
ーーーーー人間は時に竜のように慈愛の心を持つこともあれば悪魔のように悪しき心を持つこともある。光になることもあれば闇になることもあるこの種族。それは幸運であるのかはたまた悲運であるのか・・・。