砂の世界から……
思いつきのすごく短い文章です。
輝く光が強烈に降り注ぐ中で立ちつくす少女。
辺りは砂で埋め尽くされていて世界が止まってしまったかのような錯覚を受ける。辛うじて世界が止まっていないことを示すのは、太陽に熱せられた風が巻き上げる砂だけだった。
「どこに行けばいいの……」
途方に暮れた少女の声。
一面が砂の海のこの場所ではどこに向かえば良いのか。それを指し示す物は何もない。
全てが乾ききったこの場所で、尚も途方に暮れるしかない少女。そんな少女にも容赦なく襲いかかる強烈な日差しと、熱せられた風。
世界は非情だった。何の力もない少女を、砂以外には何もない場所へ投げ出した。
世界は無だった。砂は命を育むこともせず、全てを無に帰そうとする。
それでも少女は負けることだけは避けたかった。
例え世界が非情でも、挫けない様に歩き続けた。
例え世界が無でも、自分の存在だけは消されない様に歩いた。
「あと……少しだけ……」
最後の力を振り絞るように次の一歩を踏み出す。足跡を一つずつ残しながら歩き続ける。
例え何も見つからなくても、最後の最後まで足掻き続けようと、地面を踏み締める。
「待って」
不意に掛けられた声と共に、少女の手が何かに引かれる。
何もない砂漠のはずなのに。
全てを無に帰された世界のはずなのに。
「俺が、君を守って見せるから」
少女はその言葉の示す意味がわからなかった。あまりにも唐突に言われた言葉。彼は何から少女を守ろうとしているのかがわからなかった。
強烈な日差しだろうか。熱せられた風だろうか。どこまでも広がり続ける乾いた砂の世界だろうか。
いずれにしてもたった一人、唐突に現れた彼が少女を守りきるのは不可能だろう。
「……何から私を守ると言うの?」
少女は訝しんだ。
何もないはずの世界に唐突に現れた彼を。
何を指し示しているのかが、まるでわからない彼の言葉を。
「俺が防ぐことができる全てのものから」
「えっ……?」
彼は少女と同じで何の力も持っていないように見えた。しかし、彼の言葉と同時に砂の世界はどこかへ消え去った。
辺りは緑が溢れ、爽やかな風が心地よく頬を撫でる。
強烈な日差しも木々に遮られ、柔らかな木漏れ日となって降り注ぐ。
「俺に着いてきて」
彼が少し大きな手を少女に差し出した。
少女は少しおどおどしながらも彼の手を取る。
彼はにっこりとした表情を浮かべると、しっかりと手をつないだまま歩き出した。
「例えこの先に何があろうとも、俺は決して君を裏切らない。俺にできる精一杯の力で君を守るから」
彼の太陽よりも眩しい笑顔に、少女は心が引き寄せられていくのを感じた。
「ありがとう……」
まだ彼の全てを信じられる訳ではなかった。それでも、少女は小さなお礼の言葉と共に彼の少し後ろを歩き始めた。
二度と砂漠へ戻らないように。
思いつきで作り上げた文章です。
私はとあることをイメージして比喩的に文章を作り上げてみましたが……実際読んでみると人によって何をイメージするのかは違うような気がしてきました。
ここまで読んで下さった読者の皆様は、本当にありがとうございます。
どんなことをイメージしましたか? また、どんなことをイメージできますか?
感想等を頂ければ嬉しい限りでございます。
以上、ありがとうございました。
※私がイメージした内容については下記URLの活動報告に挙げておきます。
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/258120/blogkey/651682/