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彼と甘い感じ

本編削除してこっちに載せる事にしました。

「・・・ぶえっくしゅっ!」


 鼻がむずむずっとして、その次の瞬間には、女としてはいただけないくしゃみが出た。

 もっと女らしく、小さく、くしゅんと出来ないのかと、やった後に思う。

 思うが出てしまったものはしょうがない。

 むず痒さの残る鼻をすんっと鳴らした私の耳に、ふっと吹き出す笑い声が聞こえた。

 周りはあの日見た、一面の花畑。


 あれ? 私またあの場所にいる?

 確か異世界という名の、海外旅行先で掃除の仕事を始める事になって。

 疲れて眠ったんだっけ?


 疑問に思う私の顔の前に、ピンクの花が一輪浮いた。

 その花が、私の鼻先をくすぐる。


 さっきのくしゃみは、これのせいか!


「ちょっ!さっきもこれやったでしょ!?」


 今の状況よりも、先程のくしゃみを思い出し、鼻のむず痒さを思い出した私は、慌ててその花から顔を背けた。

 自分の顔の前で揺れる花を、ぺしぺし虫を追い払うように叩く私に、見えない相手が笑いを含んだ声で言った。


「気持ちよさそうに眠っていたな」

「寝てる人を変な起こし方しちゃいけないって習わなかったの?」


 むっとして、その声のした方を睨む。

 声はすれども、姿は見えない。

 でも宙に浮いたままの花が、確かにそこに、彼、透明人間さんがいる事を教えてくれる。


「残念ながら、習ってない」

「それじゃ、今私が教えてあげるよ。そんな事をしたらどうなるかって」


 言って、私は彼がいるだろうあたりに手を伸ばした。

 温かな空気の層に触れ、そこに彼の体があるのを確信した後、私はにやっと笑う。

 そして、どーんっと勢いよく透明人間さんの体に向かって飛びついたのだった。

 まさかの急な私の行動など、彼は読めるはずもなく。


「なっ!?」


 焦る声と共に、私の体の衝撃に、彼はそのままぐらりと体勢を崩した。

 彼の姿が見えない私は、ある意味、自分も恐怖を感じながら一緒に花畑に倒れこむ。

 だって、姿が見えないから、そのまま自分が顔面から花畑に突っ込む感じがしたんだよね。


 凄い勢いで地面が迫ってきたし。

 ちょっとリアルにびびったよ!


 けれど、そんな私の恐怖は、温かな空気の層の上でぽよんと止まり。


「すごい。私今浮いてる!」


 感動して声を上げた。

 まあ、それってつまり。


「・・・私の上にいるっていうだけだが」


 むっとした透明人間さんの声に、今度は私がぷっと吹き出した。


「・・・重い」

「うーん、何か空耳が聞こえるなぁ」

「おい」


 呆れる透明人間さんの声はすっぱり無視して、私は温かな空気の層、つまり彼の体を手探りで触り、落ちないように自分の体勢を整えて、その上にぺたっとくっつき直した。

 たぶん、彼の姿が見えてる状況だったらしないだろうけど、見えないって便利だ。

 それに触った感触は、ぽよぽよしてるし、こう、ね。


 寝るには丁度いいっていうか。えへ。


 そんな失礼極まりないことを考え寝転ぶ私の頭上で、彼が震える息をついた。


「・・・おい」


 止まっていた呼吸を無理やり押し出したような、戸惑ったような透明人間さんの声。

 彼の姿が見えない私には、いまいち実感はないのだけれど、彼にしてみれば今の状況って、物凄いらぶらぶな二人みたいなわけで。

 離れた方がいいかなって思う私と、もう少しこの不可思議な状況を楽しみたい私がいる。


 だって、本当、なんか浮いてるみたいな感じがして面白いんだよね。


 結局動かずに、ふふふーと意地悪く私が笑うと、透明人間さんはまた大きく息をついた。

 ありゃ本気で怒ったかな?と考えた私の背に、彼の腕らしき温もりが回って抱きしめた。


「・・・もし、私がここから出られず、お前を閉じ込めたら、どうする?」


 急な問いかけに、私はぱちぱちと瞬きを二度した後、笑った。

 私は勿論いまだ、これを夢だと思ってる。

 だから、答えはこうだ。


「そしたら、透明な人が見えるように、特訓する」

「特訓・・・?」

「そっ。えーと、この花畑を走り回ったり・・・とか?」


 とりあえず、特訓といえば足腰を鍛える事から、なんて話す私に、とうとう彼が吹き出した。

 彼が笑うと、その上に乗ってる私まで揺れるわけで。


 お、落ちそうでなんか、怖いんですけどー!


 そう焦ったけれど、体はがっちり彼の腕らしき温かな空気の層に包まれていて、落ちる事はなく。

 彼は一頻り笑った後、そっと私の頭から背中にかけて、何度も何度も優しくなぜた。

 温かい空気の層にそんな事をされると、こちらとしては、安心して段々眠くなってくるわけで。

 ふわっと欠伸をした私の口元に、今度はそっと温かな空気が触れる。


 これは透明人間さんの手かな・・・?


 ぼんやりと思いながら、それに頬を摺り寄せると、私の背に回った腕に力がこもった。


「・・・お前と一緒なら、この場所でも、いいな」


 そう言った透明人間さんの声を夢現に聞きながら、私は眠りに落ちたのだった。

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