逢わなきゃよかった
遅くなりました。
今一番好きなキャラの登場です
すたすたという規則正しい音が後ろから聞こえてくる。
オレの足元からは何も聞こえやしないが。
[着いたよ。ここがオレの家。]
「ここがカイト君の家....。」
オレの家は六階建てのマンションだ。(ユヨルの家は広い一戸建て)
あまり広いとは言えないが、一応2LDKだ。
マンションのドアの前に来て
玄関横にある植木鉢を気合を入れて持ち上げる。
[うっ...ぐう~~!!]
(物を持ち上げる事は出来るが、かなりの労力が必要。触るだけなら労力必要なし。)
ユヨルはあんぐりして
「言ってくれればいいのに....」
それもそうだ次からはそうしよう。
次はあるのか?
まあいいや!!
鍵をユヨルに託し開けてもらう。
ミナミは部屋にいるようだがまだ寝てるみたいでシーンとしてる ※実は、8時ぐらい
母さんは仕事に行っている
まあ誰もいないかと思っていた。
そしたらリビングから音は小さいがテレビの音が聞こえてきた。
それに合わせて
[へー....]
とか言う声が聞こえる。
泥棒か?!
いや!でも泥棒にしてはくつろぎ過ぎだろ!
オレは小さい声で待ってというユヨルを置いて
急いでリビングに向かった。
[誰だあぁァァァァァァ!!!!!!!]
聞こえるかは定かではないがとりあえず叫んでおく。
(ミナミには聞こえません)
[あっ。ミナミのお兄さん。]
そこに居たのは
ミナミの元彼
佐山南だった。
遅れてきたユヨルが叫んだ
「文化祭の時の!!」
オレは慌ててユヨルの口をふさいで
[ミナミに聞こえる!!!!!!]
と叫んだ。
その間佐山はじーっとニュースを見ていた。
[お前は何してんだよ!!!!!]
[えっとー....テレビを見てる。]
[知ってるわ!!!!!]
食い気味にツッコむ
[てか何?二人は知り合い?]
「えっと....文化祭の時に会ったんだよね。」
小声でユヨルが言う
[連行されたんだよ。]
しれっと佐山が言う
[.....ごめん。話が全く見えてこないんだけど。]
「ミナミちゃんにこの人がくっついて来てて....私勘違いして校舎裏に連れてったんだよ。でも連行はちょっと違うと思う。」
[連行だったような.....]
「ちがうよ。あれは認識の違いから来た間違いです~。ね!」
[今の考えだとそうなるんだ。.....へえ~...]
無表情でそう言う。
こういうやつだよ昔から。
くえねぇなぁ。
[ちゃんと説明してくれよ!!]
[....オレが君たちの後ろで浮いてたら、
[.....えっ?待って!浮けんの?!」
[へえ...幽体離脱の人って浮けないんだ。]
佐山は無表情で
「カイト君て浮けなかったの?」
ユヨルは不思議そうに
[浮けないよ!!!!]
「浮こうと思っても?強く思えば浮けるかもよ」
オレは力強く浮こうと考えた。
目をつむり強く念じた。
浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け!!!!!!!!
[すごーい。]
佐山が得意の棒読みで言った
浮いたかなと思って閉じていた眼を開けると
1ミリも浮いていなかった
[ユヨル今のなんだよ!!超恥ずかしいじゃん!!!なに今の時間!!!無意味でしょ!!!]
「ゴメン.....」
憐れむような眼で言われた。
佐山はしれっと
[まあ知ってたけど]
[言ってくれよ!!!!!!]
本気でツッコんだ。
「浮けないとは思ってなかった。」
[ほとんどの幽霊は早々に浮けることに気が付くもんだし。]
[じゃあ浮いてみろよ!!]
無表情のままふわりと浮いた。そのまま横に1回転する。
[これでいい?]
気付いたことがある
幽霊になってもちゃんと重力があるんだな。
逆さまの時佐山の髪は下にちゃんと向いたもんな。
[それって労力使う?]
[使いませんよー]
「.....何色?」
ユヨルは小さく切りだした
[さあ。数えきれないから]
「.....!!!なにが見えるの?」
ユヨルは深刻な顔をした。
正直、今の置いてけぼり感をどうしたらいいだろうか
[腕時計。]
「私のは、どんな色で今は動いてる?」
[青と紫のチェックで動いてはいないよ。]
「紫色って何?」
[色の意味はあまり知らない方が幸せだよ。]
「どのくらい前から動き始めるの?」
[半年前]
佐山はこれまた得意の張り付けたような笑顔をした
「そっか....」
[ゴメン。すごい置いてけぼり感なんだけど]
「気にしないでいいよ」
すごく気になるんですけどぉ!!!!
[話途中だったから続ける。オレが後ろで浮いてたら、この人に掴まれて校舎裏に連れてかれて『ミナミちゃんに近づかないで!』って言われた。]
ユヨルの方を見ながら無表情で言った。
声真似が何気に上手い。
「あれは誤解だもん~~~~!!!」
[ユヨル.....小さい声。]
「ゴメン」
ユヨルは自分で口を押さえてもごもごしながら言った。
かっわい
「佐山君....?がミナミちゃんの後ろについて来てたからストーカーかなって思ったんだよ。」
ちょっと待てよ
文化祭にミナミが来た時を思い出そう
―――――その時ユヨルが小声でオレにだけ言ってきた
「ゴメンちょっと抜けるね」
そう言ったユヨルは教室の扉の近くでガッツポーズをして出て行った。
なんか映画みたいだなって思った。―――――――
あっあれかぁァァァ!!!!
あの時佐山のこと掴んだんだ!!
[この人。オレの話全く聞いてくれなくて。お兄さん彼氏なんですからもっとしっかりしつけてあげてください。]
[彼女じゃねえし。てかしつけてなんだよ!]
ユヨルは微妙に笑う
[.....へえ。]
それを見た佐山が意味深に笑う
「私たちが顔見知りなのはわかってもらえたと思うんだけど。佐山さんがどんな人なのか全く分かんないんだけど教えてくれない?」
[佐山はあの佐山財閥の息子で、見てのとうりイケメン。頭もいい。享年15歳。生きてたら同い年。ミナミの元彼。]
※カイトとは違うタイプのイケメン。
[紹介が雑だ~。]
ん?
何か違和感を感じる。
15歳?
15歳にしては大きくないか
最後に観たのが14歳の時だけど一年もたたずにこんなに大きくなるもんか?
顔も大人びてないか?
こんな服着てたか?
こいつ死んだ時制服じゃなかったか?(オレは事故った時の服。つまり制服を着ている)
[気づくの遅いですよ。知らなかったんですか?幽霊は成長します。ついでに言うと、日焼けもします。ほとんど人間と変わりませんよ~。]
「知らなかったの?」
[知らなかった。熱いとか寒いとか感じるのは知ってたけどそこまでは知らなかった。]
[お兄さんは壁、すり抜けられますか?]
[.....やったことねえ。]
「本気ですりぬけろって考えたら出来るかもしれないよ。」
この流れはどこかで.....
まあいいや
目をつぶり
すり抜けろすり抜けろすり抜けろすり抜けろすり抜けろすり抜けろ!!!!!!!!!
そう考えてリビングの壁に突っ込む。
バーン!! ※音がしたのではなく衝撃です。
[痛っェええええ!!!]←激痛に悶えている。
「...ゴメン。」
[すり抜けられないでしょう。]
[でしょう....?って!!知ってたならやらすな!!やってみろよ!!!]
佐山は無言のまま壁に近づくと勢いよく腕を壁に突き刺した。
そのままゆよるに近づきユヨルの頭の上から手を振りおろした!!
殴られると思ったユヨルは腕で頭をかばった
しかし予想を反して何の感覚もなかったユヨルはきょろきょろとした。
今ユヨルをすり抜けた!!!
幽霊が見える人には触れる....と言うか
絶対にすり抜けられない。
はず....!!!!
でもすり抜けた。
佐山は無表情のまますたすたとコッチに近づくとオレにもユヨルと同じことをした。
幽霊どうしは必ずと言っていいほど触れるものだと思ってた
でもすり抜けた
そしてさっきすり抜けたはずのオレの頭に触った。
[オレは何にでも触れるし何でもすり抜けられる。]
「見たことない.....」
[オレは特殊だから。]
[生きてるものに触ることもできるのか?]
[そうですよ。]
[ミナミに触ったことは?]
[あるわけないですよ.....簡単に触れていいやつなんかじゃないんですよ。]
息を飲む声が聞こえて
ユヨルがボロリボロリと声もなく泣いていた事に気付いた
[....そうか。]
[あ~でも...ミナミに近づく奴は邪魔するんですけど。]
佐山は無表情に舌をんべーと出した
佐山の人間らしい姿...と言うか本気の姿はすべてミナミがらみだ。
「つらくないの?」
[触れてしまうことより、やろうと思えば見せれることのが怖い]
オレとユヨルのあっ....と言う小さな声が響いた
[生きてるときより出来る事が多くなったくらいで、生きていたとき出来てたことは今もできる。でもしちゃいけないんだろうなあ。それってルール違反だよなあ。....オレはもう死んでるんだもんなあって.....]
会いたい
話したい
触りたい
抱きしめたい
一体どれだけの事がしたいだろう。
全部できる
全部遜色なくできる。
でもすれば
死んでる佐山が急に見えるようになったからといって
居場所があるだろうか
おびえる人がいるだろう
そしてもし
そのおびえる人がミナミだったらどうしよう
そんな事を思っているのだろうか
あいつのことだ
読めやしねえ
いつも何考えてんだかわかんなくて
表情という表情がなくて
あるとすればミナミの前だけで
佐山のあまりに簡潔な受け答えに一喜一憂するミナミに
“あいつと居て楽しいか?”
と聞いたことがある
ミナミはなんて言ったっっけ
ああそうだ
“楽しいとかじゃない。安らぐの。安心すんの。”
って言ってたっけ。
佐山が帰ってきたら喜ぶだろう。
平気でそこにとまり続けるだろう
佐山は死んでいて
高校は行けない
就職もできない
免許も取れない
結婚もできない。
そしてそれはすべて
生きてる人の特権。
そんなこともう知ってるんだ。
戻らないんじゃないんだ
戻っても仕方がないんだ。
[そんなかわいそう!!みたいな目で見ないでくださいよ。今の生活にもそれなりに満足してますから。]
「ゴメン....!口出すことじゃなかったよね!聞くべきじゃなかったよね!」
[気にしないでいいです。久しぶりに人と話せて良かったんで。]
[ユヨルもういくぞ。]
「えっ?あっうん。」
[....サヨナラ。]
ばさ!
ミナミの部屋から音がした
気付かれないように
急ぎつつ
音をたてないように
家を出た。
「一つ話しておくね。幽霊は基本消えちゃうんだ。死んですぐ。消えた後どこに行ったのかとか消えたのかは知らないけど、パッて消えちゃうんだ。でも幽霊になる人はね、消えずに何かに憑いたり、何かを探し始めたりするの。そういう人たちってね強い意志があってこの世に残っちゃったんだよねえ。それは例えば、家族が心配だからとか殺したいみたいな負の感情だとか.......好きな人を見まもっていたいとか。」
[.....]
「でも悲しい事なのかな?そういうのって少しずつ薄れてって最終的には消えちゃうの。負の感情は強いから相手が死んだとしても気持ちが残る場合があるけど。それ以外の場合はだんだん自分のことを忘れていく過程を見るうちに『もういいや』って思っちゃうの。」
[あいつは消えられなそうだな]
「.......佐山君腕時計って言ってたでしょ。あれカイト君の首輪と同じ物のようなやつなんだよね。....半年って言ってたでしょ?あれ死ぬのがわかるタイマーが動き出す時間なんだ。佐山君自分が死ぬ時をわかって死んでったんだよ。」
聞いた瞬間
アイツなんで死んだんだろうな。
死んでほしくなかったと
強く思った
ユヨルは悲しそうに笑った。
「逢わなきゃよかったよ。」
佐山のプロフィールっていります?