I can’t help you
遅くなりました!
長めなんで許して下さい
では!
みんなのこと大好きで大切にしたい
みんなの優先順位は一位だから。
――――――――山口海人 8才
オレの家では毎年夏に母方の祖母の家に行っていた。
山奥でなんもなかったけどすごく楽しかった。
向こうには母さんの姉の碧海さんの子供....つまりオレの従兄弟が五人もいた。
お姉ちゃんが一人とお兄ちゃんが二人と下に弟と妹が一人ずつ。
ミナミはいつもお姉ちゃん......雪ねぇと加奈子ちゃんとずっと人形遊びをしていた気がする。
雪ねぇはミナミ(とオレ)と六つも年が離れてたからかなり付き合ってる感がバリバリだったけどまあ楽しそうだった。(ミナミも付き合ってたっけ?)
男どもは近くの市民プールに行くのが主流でそれ以外では家でゲームばかりをしていた。
竜にぃとは離れてたけど(四つぐらい)寛太とは同い年だったからすごく仲が良かった。そしてオレによく付いてくるのがよっちゃんだった。
オレはみんなと(雪ねぇたちも含めて)piiのゲームをしている時がすごく好きだった。内容はカートのゲームだかバトルゲームだとかそんなんだったと思うけど、その時はホントに楽しかった。
おじさんがたまに連れてってくれるゲーセンとかが楽しくて楽しくて
どのくらいの時かな
よっちゃんが少し嫌になったんだ。
良く付いてきてニコニコ笑ってなんでも真似してくるくせにゲームの中でオレに勝つとカイト兄ちゃんに勝った!!と大騒ぎするところとかなんだか癇に障った...のだろう。
子供みたいな理由でよっちゃんを避けた。
そんなオレに気づいたよっちゃんはカイトお兄ちゃんがかまってくれない、と大騒ぎして....つまりは大泣きして....そんなのを見た碧海さんと母ちゃんににオレは叱られた。
「お兄ちゃんなんだからもっと優しくしなさい!」
と言われたオレはふくれてもっとよっちゃんが嫌いになった。
その頃のオレ的にはよっちゃんに合わせるよりも竜にぃについてったり、寛太と張り合ったりする方が楽しかったからオレはそっちを選んでいた。
よっちゃんも頑張ってついてこようとするがまだ小さすぎるとお母さん方から止められてしまう。
そう言われてでもと食い下がるよっちゃんのせいで
「竜!!寛太!!海人君!!戻ってきィ!!あんたら洋介とも遊び!!」
という碧海さんからの呼び出しも嫌で嫌で仕方がなかった。なんで俺達までと思ってた。
竜にぃが花火をわんさか買ってきては碧海さんに怒られていた。
もちろんその日の夜にはみんなで(子供たちだけ)で花火をした。その時にはよっちゃんも加奈子ちゃん
もいた。よっちゃんは花火を持ってきてはオレに見せてきた。もちろんそんなの面白いわけはなく、オレはそれを適当にあしらってた。(避けると怒られるから)そんなことより、竜にぃが置く花火を手に持つという荒業で雪ねえを追いかけるという面白いことを見て笑うのに夢中になっていた。(今にしたら末恐ろしいな)そういえば雪ねぇもお返しと言いながら反撃してたっけ?
山を歩けばなぜかいばらの道を歩き(竜にぃについてった結果)
牧場に行けばアイスクリームを変な食い方で食ったり(寛太と張り合い)
で落としたりして
海に行けば誰かを沈めたりしたり(だいたい竜にぃが雪ねぇを)
テトラポッドまでどっちが早く着くか競ったりして(寛太と張り合い)
誰かを砂に埋めたり(雪ねぇが竜にぃを)
みんなで遊園地に行けば毎回誰かが吐いたり(だいたい加奈子ちゃん、たまにミナミ)
濡れるっていう乗り物のずぶ濡れコースを選べば予想以上に濡れたりして(男ども。しかも着替えなし)
怖いっていう乗り物に乗ったら予想以上に怖くてそのあとしばらく全員無言になったり(絶句した)
加奈子ちゃんが二階から落ちた時(落ちたと言っても木の上に落ちたため軽傷だった。足の傷を縫ったくらい)来た救急車に「最新だ!!」「本物ってすげえ!」と騒いで碧海さんに「てめえらが目を離したからだろ!!」と怒鳴られたり。
そんな楽しいの(最後のは例外)と裏腹にいつでもオレはよっちゃんをかまわなければならなかった。
ホントにそういうのが嫌だった。
ホントに子供。
そんなある時、何十年かに一度の大流星群が降る日があった。
オレはその日を忘れない。
忘れなんかしない。
否、忘れてはいけない。
竜にぃがそれを丘に観に行こうと言った。
少し離れた丘だけど、ここ一帯の中では唯一木が少ない場所だ。
確かにそこならよく見えただろう。
オレと寛太はもちろん行く!!と言った。
そしてよっちゃんも行きたいと言った。
竜にぃは考えた挙句連れて行こうかと言った。
母さんたちには内緒という条件付きのこの星を見る会に
雪ねぇもミナミも行くと言った。
加奈子ちゃんはすでに寝ていたため置いていくことにした。(すでに九時ぐらいだった)
流星群が始まる十一時には着いておきたいからと十時には家を出る事にした。
各々九時半には布団に入りタヌキ寝入りをし(親達は普段から十一時前後に寝るためその前に“寝た”という印象を植え付けるため)
十時前に布団を少し膨らませるなどの小細工をして(そんなことしなくても親達は酒を飲んでいて酔っぱらっていて気づかなかったが気分的に)着替えて外の玄関付近に集まった。
みんなそれぞれ変なものを持ってきていた。雪ねぇは星座の図鑑、竜にぃは星のカービィの第一巻、寛太はアメ、オレはガム、よっちゃんは小さい人形。
ミナミだけは懐中電灯という実用的なものを持ってきていた。(みんなでさっすが~!となった。)
暗い夜道を進むにはあまりにも暗く足元さえも見えない。ミナミが持ってきた懐中電灯では六人分はカバーできなかった。今にして思うとやはり小さい。ミナミの詰めが甘かった。今だとしたら四つは持ってくだろう。
星を見に行った前の日には大雨が降っていたから土がまだ乾いていなくて滑りやすかった。
途中で雪ねぇが何度転んだことか。(みんなもそれなりに転んだが雪ねえが一番の多かった)そしてそれを笑った竜にぃを雪ねぇが絞めたりして。
そんな事をしながら丘に行くために通らなくてはならない小さな山を歩いた。
少し道幅が狭い所に入り全員が一列で歩いた。前から竜にぃ、ミナミ、寛太、よっちゃん、オレ、雪ねぇ
懐中電灯は一番前の竜にぃが持っていた。
黙々と歩いて進んだ。みんな足元に気を付けながら。だからたまに竜にぃが「ここに木の根っこがあるから気を付けろ!」と言っていたりした。
その細い道で....雪ねぇが転んだんだ。転んだ反射だったのだろう。雪ねえはオレの服の裾をつかんだ。バランスを崩したオレは自分のバランスをとるためによっちゃんの腕を掴んでしまった。そのまま足を踏み外してオレ逹3人は谷に向けて転がり落ちてしまった。
雪ねぇは途中でガンという音がして木に当たって止まった。
でも、オレとよっちゃんは止まらずに川に落ちた。いつもは小さな川。少しだけせせらぎが聞こえる位の。でも増水していたその時はガァーーーっ!!ッという大きな音が聞こえた。
そこに勢いよく落ちたオレとよっちゃんは流された。息もろくに出来ずに溺れそう...溺れてた。
オレが下流側でよっちゃんが上流側にいた。死にそうで怖くて苦しくてしょうがなかった。でも、川の端に生えていたツタのようなものにオレは掴まることができた。
はあはあと荒い息をする中よっちゃんは流れてきてオレは反射で手を伸ばした。よっちゃんの足を掴んだオレは自分の方に引き寄せた。掴んでる方の手はもちろん使えないからオレは自分の足でよっちゃんをがっしりと離さないようにしてよっちゃんの手を探しそれを掴んでない方の手で握った。そして顔が水面から出たり入ったりとする状態で苦しいながらもよっちゃんはあはあと荒い息をした。
これからどうしようかと悩んでいたオレの手元からプチプチと音が聞こえた。その音は止まることがなく手元のツルは切れそうだった。
耐えきれないんだ...―――――!!!
どうしようここから違うものに捕まるにしても両手がなくちゃできない。
よっちゃんを掴んだままじゃできない....!!
このまま二人でツルが切れてしまうのを待てば、二人とも死ぬだろう。
よっちゃんを離してしまえば?
しょうがないよな。だってこのままでも二人で死ぬだけだし。
それなら一人でもさ助かるじゃん。
それにもしかしたらよっちゃんだってなんかに掴まれるかもしれないし。
そんな御託を並べてオレが悪いわけではないと自分に言い聞かせた。
「ごめんな。よっちゃん。」
オレは手を離した。
でもすぐに後悔をした。
どうして離したの?
というような裏切られた顔をしてよっちゃんは流れていった。
心がおかしくなりそうだった。
それを引き戻したのは手元で鳴るプチプチという音だった。
我に返ったオレは掴まるものを違うツタに代えて無我夢中で登った。
その頃から身軽だったオレはひょいひょいともと居たところまで登った。
一人で帰ったオレに雪ねぇが「洋介は?」と聞いた。
オレが頭を横に振ると
竜にぃとオレ以外は泣きだしてしまった。
しくしくと泣く雪ねぇに竜にぃは怒鳴った。
「一番年上が泣いてどうする!今は家に帰んのが先だろ!!」
泣くのはやめようと雪ねぇは涙をふき鼻声の小さな声で「ごめん」と言った。
そこからはみんな行きの時以上に黙った。
でもたまにズッ!という鼻をすする音が聞こえた。
家に着いてすぐ碧海さんに怒鳴られた。
「あんたら何してたの!!こんな夜に!!」
みんな転んだりしてドロドロになっていたし枝なんかでひっかき傷を作っていたからまずそれを怒られた。
碧海さんの後ろにいた親達も一緒になって怒った。
「みんないないからどうしたのかみんな心配したんだからね!!」
オレたちはそのお説教を俯きながら黙って聞いた。
「....洋介はどうしたの?......なんで居ないの?.....あんたどうして濡れてんの?」
碧海さんがオレの肩をゆする。
おびえたオレをかばうように竜にぃが
「川に溺れたんだ!!」
と叫んだ。
「海人も一緒に落ちたんだ。だから濡れてんだ」
そうやって始まった説明で碧海さんが泣き始めた声もなくただ涙だけが頬を伝ってた。
「お母さん。私が悪いの。私が転んで海人君を引っ張ったりしたから」
「...雪ねぇは悪くないよオレに....みんなが落ちてく時、洋介手を伸ばしたんだ。オレに手ぇ伸ばしたのにオレそれ掴まなかったんだ。」
寛太が言った。
オレは自分も落ちていってたしそれには気付かなかった。
「掴んでたってけが人がふえただけだよ。寛太は悪くない。私がもっと考えて懐中電灯をたくさん持って行ってたら...こんなことになんかならなかった。」
「ミナミちゃんの所為なわけがない。オレの所為だ。オレがそもそも見に行こうなんて言わなければ良かったんだ!」
竜にぃが言い放った。
それからしばらく私の所為だオレの所為だという悲しい会話が続いた。
しばらくして
オレは静かに口を開けた。
「みんなは悪くないよ。全部オレのせいだ。」
みんなが黙った。
「オレが手なんか離さなければよかったんだよ」
誰かが息を飲んだ音が聞こえた。
それからオレはその時のことを出来るだけ正確に伝えた。
オレのその時の気持ちも織り交ぜて。
帰る途中たくさん考えたんだ。
でもどうしたって
オレの所為じゃないか。
オレが殺したんじゃないか。
「―――――――あの時、違うものに掴み変えるからオレに掴まっとけとか言えばよかったんだ。でもオレそんなこと思い付かなくて....だからオレがよっちゃんを殺し...」
「これは事故だ!!!!!まだ死んでなんかない!!!」
今まで黙っていた碧海さんが大きな声で言った。
「これは事故。砂良!!救助隊を呼んで!」
それを聞いたオレの母さんは「わかった」と言って電話をかけ始めた。
碧海さんには悪いと思うけど今もし、よっちゃんが生きてるのなら酷だ。
オレが裏切って置いてきたのに
それでも苦しい中生きてるなんて
でも死んでるだろう
あの流れだ。
生きてる奇跡が起きる確率はあまりに低すぎる。
今の騒ぎで起きてきていた加奈子ちゃんがオレの服の裾を掴んで
「よっちゃんどこにいるの?」
と言った。
胸が締め付けられそうだった。
「...とりあえずドロドロだったら風邪ひく。てめえら一人ずつでいいから風呂入ってこい。」
おじさんが言って
一番濡れてるオレから入る事になった
入ってる間ずっと
よっちゃんが頭から
離れやしなかった。
風呂を出ればもう遅い時間だってのに
テレビがついていた。
そのテレビの前には子供全員が揃っていた
オレは風呂が空いたことを伝えると
適当な場所に腰を下ろした。
テレビではちょうど例の流星のことがやっていて
「きれい!」
だとか
「すごいね!」
とテレビの前に立ちはしゃいでる加奈子ちゃんの隙間から見えた流星の映像は
気持ちが悪かった。
加奈子ちゃん以外は無言で見るというその光景は自分がしてしまったことがどんなことなのかを訴えてるみたいだった。
一瞬だった。
離したのは一瞬。
顔を見たのも一瞬。
でも頭にこびりついて離れない一生。
なにも知らない加奈子ちゃん。
オレがしたことを知ったら
なんて言うかな。
どうするかな。
碧海さんとかがいっそ怒ってオレを殺してくれたらどんなに楽だろうか。
事故にした碧海さんはどんな気持ちだろう。
せめて
せめて
恨んでいてほしいと願う。
深刻な顔をして受話器を持ちながら家をうろつく碧海さんを見てそう思う。
生存率は低いって言われたみたいだ。
それでも生きていると信じて
そんな連絡を待って受話器を持っている。
おじさんがてめえらは明日のために寝ろと言ったが結局寝たのは加奈子ちゃんだけだった
他はみんな起きて連絡を待った。
ご飯はほとんどみんな食べなかった。
みんな無言だった
おばあちゃんは悲しそうな顔して空を見ていた
そんな昼の後ぐらい
よっちゃんは見つかった。
オレが知らない顔をしてたけど。
場所はここよりオレの家に近いぐらいのところ。
ずいぶんと旅をしたものだ。
そこまで行く途中どの辺で息絶えたのだろうか
なるべく早く死んでいて欲しい。
オレに裏切られて
手を離されて
それでも生きるためにもがいただろう
あがいただろう
でも
死んだのだ。
よっちゃんを川が殺したのではない
確かにこの手で殺したのだ
みんなが恨んでいてくれたならよかった。
でもその結果を聞いた時
オレの隣に立った竜にぃは泣きながらオレの頭を雑に撫で
「お前のせいなんかじゃねえかんな.....!!!」
と言った。
それを聞いた瞬間
オレはみんなと違う意味で泣いた。
責めてくれ!
恨んでくれ!
恨んで!恨んで!恨んで!恨んで!
恨んでくれよ!!!!!
そして願わくば殺してくれ!!!!!
オレは死ぬべきだ!
死ぬべきだ!
あの時オレには何があった?
殺意があっただろうが!!
ここで殺せばまとわりついてこないだとか!
この手を離せばこいつがいなくなるチャンスとか!!
思ったじゃないか!!!
殺すのは簡単だった。
だってオレは手を離せば殺せた。
すがる思いで
泣きたい思いでつないでいるその小さな手を!
よっちゃんの気持ち無視して
自分が生きたいから
邪魔だったから
自分のために殺したじゃないか!!
オレはその夏
よっちゃんが死んだ二日後家に帰った。
ぐちゃぐちゃで
もう壊れそうなオレに
誰も近づかなかった。
ただ一人を除いては。
一連の話を聞いたナツキは
空っぽのオレに
使命をくれた
「.....今はあたしのそばにいてくれるだけでいいよ。あたしカイトの親友だもん。.....でも大きくなったら泣いてる人に手を差し伸べて。」
「.......」
「あたしが泣いたらあたしに。タクヤが泣いたらタクヤに。あっ!泣いてなくてもねつらそうだったら手を差し伸べるんだよ!相手がつらそうなら絶対助けてあげて。みんなのこと大切にして。そしたらみんな幸せだよ。もちろんカイトも。みんなの人気者になれ!誰からも慕われるいいやつになれ!」
ナツキは笑顔で言った。
オレは泣きながら絶対なるね絶対なるねとナツキに何度も約束した。
オレはみんなが大好きだ。
クラスのみんなも家族のみんなも
みんなみんなオレが助けるんだ。
助けてあげるし
見返りはいらない。
オレはいいやつでありたい。
ナツキありがとう。
オレはその時、ナツキの強さに惚れたんだ。
だからナツキが大好きだ。
オレは出来る事なら
みんなを
助けて
助けて
助け終えたら
死にたい。
うっわ.....今回でカイトのこと嫌いになる人多そうだな。