エピローグ「陽だまりの継承者たち」
「パパ! 見て見て!」
元気な声と共に、金色の髪の少年が飛び込んでくる。
五歳になる息子のシエルだ。
「どうしたの、シエル」
「ぼく、おしろつくったの!」
彼が指さした先には、リビングのクッションと積み木で作られた、見事な要塞があった。
ちゃんと入り口があり、中にはお気に入りのおもちゃが配置され、さらに日当たりのいい場所を選んで作られている。
「……すごいね、シエル。完璧な配置だ」
僕は息子の頭を撫でた。
どうやら、彼には僕の「巣作り」の才能と、アレクの「テリトリー意識」の両方が遺伝したようだ。
「ルカ、シエル。何をしている」
国王となったアレクが、執務を終えて戻ってきた。
年齢を重ね、さらに威厳と色気を増した彼は、僕を見つけるとすぐに表情を緩めた。
「パパ! これ、ぼくのす!」
「ほう。なかなか良い出来だ。だが、まだまだだな」
アレクは上着を脱ぎ捨てると、シエルの作った要塞の横に寝転んだ。
「ここが足りない」
彼は僕の手を引き、自分の腕の中に抱き込んだ。
「巣には、主と、守るべきパートナーが必要だ。これで完成だ」
「パパ、ずるい! ぼくもママといっしょがいい!」
「お前にはまだ早い。ママは俺の専属だ」
「うわーん!」
シエルがアレクの背中に飛び乗る。
僕は二人の「大きな子供」に挟まれて、苦笑しながらも幸せを噛み締めていた。
窓からは穏やかな午後の日差しが差し込んでいる。
僕たちの周りには、ふかふかのクッションと、甘いミルクと、家族の匂いが満ちていた。
かつて「空気のように生きたい」と願った僕は、今、この国で一番温かい空気を作り出す存在になっていた。
「愛してるよ、ルカ」
「僕もです、アレク」
これからも、この陽だまりの中で。
僕たちの物語は、ずっと続いていく。




