第19話「王太子の決断と公開プロポーズ」
季節は巡り、卒業の時期が近づいていた。
アレクは次期国王としての準備に追われ、僕たちも進路を決めなければならない。
「ルカ、話がある」
ある日の放課後、アレクに呼び出されたのは、あの最初の出会いの場所、図書塔の資料室だった。
部屋に入ると、そこはきれいに片付けられていたが、真ん中には僕が最初に作った「伝説の巣」が、当時のまま再現されていた。
「……懐かしいですね」
「ああ。ここが全ての始まりだった」
アレクは僕の手を取り、その巣の上に座らせた。
そして、彼自身は僕の前に片膝をついた。
騎士の礼。
「……殿下?」
「ルカ・モレッテ。俺は、お前以外とは眠れない体になってしまった」
彼は真剣な眼差しで僕を見上げる。
「王としての重圧も、政治の暗闘も、お前がいれば耐えられる。お前が作る空間こそが、俺の国であり、俺の帰る場所だ」
彼は懐から、小さな箱を取り出した。
パカッ、と開かれた箱の中には、指輪……ではなく、小さな鍵が入っていた。
「これは?」
「王城の、俺の寝室に繋がる隠し扉の鍵だ。そして、俺の心臓の鍵でもある」
なんというキザな台詞。
でも、彼らしい。
「俺の番になってくれ。そして一生、俺の隣で、俺のためだけに巣を作ってくれ」
それは、プロポーズだった。
王族が、ただの男爵家の三男坊に、しかもオメガに求婚するなんて、前代未聞の大スキャンダルだ。
でも、不思議と不安はなかった。
「……寝心地の保証はしませんよ?」
「構わん。お前がいれば、岩の上でも熟睡できる自信がある」
「……ふふっ」
僕は笑い出し、彼の手から鍵を受け取った。
「わかりました。謹んで、お受けします。……ただし、寝室のインテリア権は僕にくださいね」
「全権を委任する」
アレクは立ち上がり、僕を強く抱きしめた。
その瞬間、資料室の窓の外から、パラパラと花びらが舞い込んできた。
見ると、中庭にはマリーナ、ミハイル、ジークフリート、そして多くの生徒たちが集まり、拍手を送っていた。
「えっ、見てたの!?」
「公開プロポーズだと言っただろう?」
アレクは悪びれもせず、ニヤリと笑った。
「これで、お前はもう逃げられない」
僕は真っ赤になりながらも、彼の方へ顔を埋めた。
歓声と祝福の中、僕たちの物語は、最高のハッピーエンドへと向かっていた。




