第18話「ヒロインの覚醒と逆転のシナリオ」
スランプを脱出した僕は、以前にも増してアレクとの絆を深めていた。
そんな中、物語は急展開を迎える。
ヒロインのマリーナが、ついに「聖なる乙女」としての力に目覚めたのだ。
しかし、ゲーム通りの展開にはならなかった。
「ルカさん! 見てくださいこれ!」
中庭に駆け込んできたマリーナの手には、光り輝く杖が握られていた。
「聖女の力……だよね? すごいじゃん!」
「そうなんです! この力を使えば、もっとふかふかの綿を無限に生成できるんです!」
「……え、使い道そこ?」
「はい! これでルカさんの巣作りをサポートできます! 最強のクッション工場が作れます!」
彼女の目は、世界平和よりも快適な寝具の開発に燃えていた。
どうやら彼女もまた、僕の巣の魅力に取り憑かれ、完全に「そっち側」の住人になってしまったらしい。
「待て待て、その力は魔王を封印するためのものだろう」
アレクが呆れたようにツッコむ。
「魔王なんて、最高の安眠空間に閉じ込めてしまえば、永遠に寝てくれますよ! 戦わずして勝つ、それが私たちの正義です!」
マリーナの力説に、妙な説得力を感じてしまう。
「……一理あるな」
アレクも納得してしまった。
「よし、ならば作戦変更だ。ルカ、マリーナ。お前たちの力で、王都全体を巨大なリラクゼーション空間に変える計画を立てろ」
「規模がでかいよ!」
こうして、本来ならシリアスな聖女覚醒イベントは、「国家総安眠計画」の始動へとすり替わってしまった。
僕とマリーナは、最高級の素材と聖女の魔法を組み合わせ、究極の癒やしアイテムを開発する日々を送ることになった。
ジークフリートは素材の調達係、ミハイルは運搬係としてこき使われ、学園はかつてないほどの平和と、微かな眠気に包まれていた。
「これでいいのか、乙女ゲーム……」
僕は完成した「聖なるコットンの山」を見上げながらつぶやいたが、その横で幸せそうに昼寝をするアレクとマリーナを見て、まあいいか、と思えた。
ハッピーエンドの形は、一つじゃないのだから。




