第13話「ライバルたちの本音と争奪戦」
舞踏会の日が近づくにつれ、学園内は浮き足立った空気に包まれていた。
僕も準備に追われていたが、一番の悩みは「アレクセイ殿下の独占欲」だった。
休み時間のたびに彼が教室まで迎えに来て、僕を連れ去ろうとするのだ。
「ルカ、充電が切れそうだ。図書塔へ行くぞ」
「授業まであと十分しかないですよ!」
そんな攻防を繰り広げている廊下で、またしても彼らが現れた。
「やあルカ君。顔色が悪いね、ビタミン不足かな?」
ミハイルが爽やかに現れ、バスケットに入った果物を差し出してくる。
「こらミハイル、食べ物で釣るな。ルカ、俺のところに来い。剣の稽古場で使っている休憩室、お前好みに改装しておいた」
ジークフリートが強引に僕の肩を抱く。
「改装?」
「ああ。床に断熱材を入れて、クッションを三十個ほど用意した。どうだ、組み合わせてみたくないか?」
悪魔の囁きだ。
クッション三十個。
それは僕にとって、積み木遊びのような無限の可能性を秘めたおもちゃだ。
「……ちょっとだけ、見てみたいかも」
僕が心を動かされた瞬間、背後から氷点下の殺気が放たれた。
「……貴様ら」
アレクだ。
彼の背後に、怒りのオーラが具現化して見えそうだ。
「俺のルカに、安っぽい餌を撒くな」
「安っぽいとは失礼な。俺の用意したクッションは最高級だぞ」
ジークフリートが反論する。
「僕だって、ルカ君のために香りのいいハーブ園への鍵を用意したのに」
ミハイルも負けていない。
三人のイケメンが、廊下の真ん中で僕を囲んで火花を散らしている。
「ルカは俺の専属だ。巣作りも、昼寝も、すべて俺の管理下で行う」
アレクが僕の腕を強く引く。
「独り占めは良くないって言ってるだろ、アレク」
ミハイルが僕のもう片方の腕を掴む。
「ルカの才能は国宝級だ。騎士団の疲労回復にも役立てるべきだ」
ジークフリートが僕の背中を押す。
「痛いです! 引っ張らないで!」
僕は悲鳴を上げた。
これは「誰がルカと付き合うか」という恋愛バトルではない。
「誰がルカという名の『高性能・自動快適空間生成装置』を手に入れるか」という、もっと実利的な争いなのだ。
それが余計に悲しい。
「いい加減にしろ!」
僕は三人の手を振りほどいた。
「僕は物じゃありません! それに、巣作りは僕が『作りたい』と思った時にしかできないんです! 強制されたら良いものは作れません!」
僕の叫びに、三人はキョトンとした。
「……そうなのか?」
「芸術家みたいなものだな」
「気難しいところも可愛いね」
なぜか納得された上に、好感度が下がらない。
どういうことだ。
「とにかく! 僕は今から一人でトイレに行きます! ついてこないでください!」
僕はトイレに駆け込み、鍵をかけた。
「はあ……モブに戻りたい……」
個室の中で、トイレットペーパーを三角に折りながら、僕は深くため息をついた。
このままでは、舞踏会の日に何が起こるか想像するだけで胃が痛い。




