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「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。 〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜  作者: 高瀬船


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21話


 扉が開いた先に、ヴァンの姿を見たウェンディはぱっと表情を明るくした。

 ウェンディの心に、じわりと温かい感情が満ちる。


「──ヴァン! 良かった、さっきはどうしたの!?」


 ウェンディはヴァンに駆け寄る。

 今までは、ヴァンの胸元以下の辺りに頭があったウェンディだったが、身長が伸びたお陰でウェンディの頭はヴァンの肩から少し下辺り。


 身長が伸びたお陰で、ヴァンとの距離も近くなったウェンディは嬉しくて笑顔を浮かべた。


「ウェ、ウェンディ……その、すまない。さっきは驚いて……」


 しどろもどろに答えるヴァンに、ウェンディは苦笑いを浮かべる。


「それは、そうよね……。私も目が覚めたらこんな風になってて……」


 そこで言葉を一度切ったウェンディは、ヴァンの手を取った。


「ねえ、お願いヴァン。私、あなたと無事に専属護衛の契約が出来たのよね? あの直後、全身が燃えるように熱くなって、辛くて……。それで……目が覚めたら、こうなってたの。ここは、どこ……? 私の部屋じゃないのよね?」


 不安からだろうか。

 ヴァンの手を握るウェンディの手に力が入る。

 ヴァンはウェンディを安心させるように彼女の手を両手で優しく包み込み、頷いた。


「分かった。あの日の事と……それから今起きてる事をウェンディに説明するよ。ウェンディはまだ目が覚めたばかりだ。座った方がいい」

「──え、あっ、きゃあ!」


 ヴァンはウェンディをひょいっと抱き上げると、そのまま室内にあるソファに向かって歩いて行く。

 しっかりヴァンの腕に体に支えられたウェンディは、あまりにも近いヴァンとの距離に、何故だか胸が騒いだ。


「ソファに下ろすぞ。──ナミア、紅茶を用意してもらってもいいか?」

「ええ、かしこまりましたヴァン様」


 何だか、ヴァンとナミアのやり取りが以前より気軽になっている。

 それに、ナミアはヴァンの事を名前で呼ぶようになっている。


(私が気を失っているうちに、仲良くなったのかしら……?)


 ウェンディが不思議に思っていると、自分の隣にヴァンが座った。

 ソファが沈み、ウェンディの体がヴァンの体に傾いてしまう。


「ウェンディ大丈夫か? やっぱりまだ体調が……ベッドに横になった方が楽?」


 ぱしり、とウェンディの肩を抱いたヴァン。

 ヴァンは心配そうにウェンディの顔を覗き込むが、ウェンディは笑ってそれを断る。


「今まで沢山寝たから大丈夫。大事な話でしょう? ちゃんと座って聞きたいわ」

「……分かった。だが、少しでも辛くなったら言ってくれ。ベッドに運ぶよ」

「ありがとう、ヴァン」


 こくり、と頷いたウェンディとヴァンの前に、淹れたての紅茶が入ったカップが置かれた。



 ヴァンは、ここが伯爵邸である事を最初に話し、どうして伯爵邸にいるのか。そうなってしまった理由を最初に説明した。


 そして、ウェンディとヴァンの専属護衛騎士契約は無事成立している事。

 フォスターとエルローディアが専属護衛騎士の契約をする事。その契約記念パーティーを侯爵家で開催した事。

 だが、恐らくフォスターとエルローディアの契約は失敗した事。

 ウェンディが原因不明の熱病で倒れた事で、ウェンディの結婚の話がなくなった事。


 そして、ウェンディの籍が、ホプリエル侯爵家から抜かれてしまった事を、ヴァンは説明した。

 メイドのナミアは、ウェンディが侯爵家を出る時に一緒に来た事を伝えると、ウェンディは自分の顔を覆って俯いた。


「ウェンディ、大丈夫か……?」


 ヴァンは、心配そうにウェンディを伺う。

 いくらあんな家族だと言っても、自分の実の両親だ。

 その両親からあっさりと捨てられてしまったようなもの。

 ウェンディが傷付くのも無理は無い、とヴァンは苦しげにウェンディを見やった。


「そう……そう、なのね。……私とヴァンの契約は、無事に成立した、のね……。それは良かったわ……」


 だけど──、とウェンディは悔しげに唇を噛み締める。


「無理矢理、結婚させられなかったのは……良かった。だけど……こんなに、簡単に……っ」

「ウェンディ……」

「お嬢様……」

「私の、十八年間は一体何だったの……。お父様も、お母様も……エルローディアという《《侯爵家に相応しい娘》》が一人居れば、十分なのね……。侯爵家に、何の役にも立たない私のような出来損ないは、簡単に捨ててしまえるのね……」


 それが、ウェンディはとても悲しくて、寂しくて、苦しかった。


 絶対に泣かまい、と心に決めていた。

 だけど、ウェンディがまだ幼い頃。「妖精姫」と持て囃されていた頃は、両親は本当に優しかったのだ。

 ウェンディの事を大切な娘だと周囲に自慢していたし、誇らしげにしていた。


 そんな、昔の幸せだった頃の事を思い出して、ウェンディは悔しくて悔しくて涙を零した。


「……っ、悔しくて悔しくて、どうにかなってしまいそうだわ……っ」

「……ウェンディ、無理に感情を抑え込まないでいいんだ。我慢しなくていい」

「──ヴァンっ、私、お父様も、お母様もっ、エルローディアも! フォスターも全員大っ嫌いだわ! もう、二度とあんな人達のために泣きたくないっ!」

「──ああ、だから。今思いっきり泣いてしまえばいいよ」

「──あああああっ!」


 泣き叫ぶウェンディの体を、ヴァンは強く抱き締めた。


 ウェンディが声を荒らげ、泣き叫ぶ姿はとても痛々しい。

 ヴァンはただただ何も言葉を発さずに、ウェンディを抱き締め続けた。

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