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「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。 〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜  作者: 高瀬船


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2話


 始めの頃は、ウェンディの成長速度が落ち始めてからは、ウェンディの両親は医者を手配して色々と調べてくれた。

 奇病にかかっていないか、呪いのようなものにかかってはいないか。

 大層心配し、国中の医者に診せた。

 だが、医者達はウェンディの体は健康体だと、皆口を揃えてそう言う。

 そんなはずが無い。

 成長が止まっている、魔力が落ちている、魔法の腕が落ちている。

 間違いなく奇病か呪いではないのか、と時間と金をかけて調べたが、やはりウェンディには何の問題も見つからなかった。


 それまで、ウェンディを心配し、愛し、病や呪いをどうにかしようと躍起になってくれていた両親だったが、何の問題も無い。異常もない。

 それを知ると、両親は段々と冷たく、余所余所しくなっていったのだ。


 最初の頃はまだ、少し余所余所しいくらいで良かった。

 だが、ウェンディが誕生日を迎える度。

 全く成長しないウェンディを見る度に両親の顔は歪み、まるで得体の知れない、気味の悪いものを見るような目に変わるのは、早かった。


 それだけなら、まだ良かった。

 だけど、ウェンディが信頼し、愛していた専属護衛騎士のフォスターからも年々冷たい態度を取られ、今では両親よりも冷たい態度、視線で見られるようになった。


 フォスターはウェンディの義妹であるエルローディアに傾倒し、今では彼女の専属護衛騎士ではないかと見間違うほど彼女の傍に侍っている。

 かつてはウェンディを優しく、愛情溢れる瞳で見つめてくれていたフォスターの目は今は蔑みや嘲笑の感情が浮かび。

 かつてはウェンディを見る度に柔らかく緩んでいたフォスターの頬は、今はウェンディの姿を見る度に不快感を顕に歪む。

 かつては愛おしそうにウェンディを呼んでくれていたフォスターの声は、今は刺々しく、低く冷たい。


 ウェンディの姿を視界に入れる度、フォスターの顔が不機嫌そうに、不快そうに歪むのだ。


 ウェンディは、自分のドレスの裾をきゅっと握り、父が待っていると言う部屋に向かって小走りに駆けて行った。




 コンコン、と扉をノックする。


「お待たせしてしまい、申し訳ございません。ウェンディです」

「ああ、呼んでいたんだったな。入れ」

「失礼します」


 中から、素っ気ない父の声が聞こえ、ウェンディはそっとドアノブに手を伸ばし、扉を開けた。

 ガチャリ、と音を立てて扉が開き、廊下から室内を見たウェンディは、そっと目を伏せた。


 室内には、自分の父親であるホプリエル侯爵と、その横には妻であり、母親の侯爵夫人。

 そして、何故かウェンディと専属護衛騎士の魔法契約を結んだフォスターが、隣にエルローディアを座らせてソファに並んで座っていた。


 そこは、エルローディアの場所は、本来であればウェンディが座る場所だ。

 だが、ウェンディが姿を現したと言うのに室内の誰もエルローディアを咎めるような事はしない。


 それどころか、部屋の入口で突っ立っているウェンディに怪訝な顔をして、侯爵が「早く座れ」とばかりに顎をしゃくった。


 ウェンディはフォスターとエルローディアの姿を視界に入れぬよう、ぽてぽてと歩き、彼らとは少し離れたソファに一人で腰を下ろした。

 すぐにウェンディの前に温かい紅茶が入ったカップが置かれて、使用人はすぐに部屋から退出した。


 室内に、使用人が居なくなってから、侯爵が重々しく口を開いた。


「十日後、四年に一度の祭典がある。そこで、ウェンディとフォスターには魔法演術を行ってもらうが……分かっているな?」

「──はい、お父様」

「私は、問題ございません侯爵」


 ウェンディとフォスターが同時に侯爵に言葉を返す。

 だが、フォスターの声は僅かに嘲りのような物が含まれていて。

 ウェンディはちらり、とフォスターを見やると、フォスターは不遜な態度で、まるで小馬鹿にするようにウェンディを見返していた。


「私は四年前より魔力も魔法の腕も上がっております。……ですが、ウェンディ様は大丈夫なのですかね? 明らかに四年前よりも魔力も魔法の腕も落ちています」

「……ホプリエル侯爵家として、正統な血筋のウェンディと、その専属護衛騎士のフォスターしかこの大役は務められん。ウェンディの兄は今、仕事で海外に赴いているし、エルローディアは我が家の正統な血筋では無い。ウェンディとフォスター、お前達しかいないのだから、恥を晒さぬようにしっかりとやり遂げなさい」


 恥を晒さぬよう──。

 そう話した侯爵の視線は、ぴったりとウェンディに定まっていた。


 侯爵も分かっているのだ。

 ウェンディの魔力も、魔法の腕も、年々、年月が経つにつれて落ちていっている事に。

 だが、今のホプリエル侯爵家に祭典で魔法演術を行える人物は、ウェンディとフォスターしかいない事は。


「ウェンディ。お前は今日からフォスターと共にしっかりと魔法演術の鍛錬をしなさい。訓練場を使い、朝から晩までしっかりと励め」

「かしこまりました、お父様」

「承知しました、侯爵」


 フォスターは胸に手を当て、余裕気に頷いて見せた。

 だが、ウェンディは。

 たらり、と背中に汗が伝うのを感じて、静かに目を閉じたのだった。


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