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六拾伍話 アウレリア

 十八神将。四神、五龍、六天神、三虎の十八人の総称であり、三十年前の最強の将を並べたものである。四神が最も強く、三虎が下。五龍、六天神はその間に入る。

 四神は氷晶、炎獄、翆玲、葉桜の四か国に居た将たちであり、光龍には居なかった。

 四神の中で生き残っているのはただ一人。ヒメルが師範と崇めるアルトゥスただ一人である。その他の三人は五年前までに病死又は戦死している。しかし、生き残ったアルトゥスも七十九歳。もう死が近い年だ。

 当然と言えば当然である。三十年前の時点である程度の戦果を、大陸全土に知れ渡らせておく必要がる。そのためには、少なくとも十年の時間が必要であり、軍人殆どが二十歳前後で軍に所属するため、三十から四十歳程度の年であることは否めない。それから三十年。つまりは六十から七十。

 最近の病死した人間の平均年齢は六十五歳。戦死も含めれば、年はもっと若くなるため含めない。

 そう考えればアルトゥスは大陸の中でも長命の部類に入る。

 五龍は光龍に四人、葉桜に一人と光龍が数を占める枠である。

 五龍の生き残りは光龍の二人。第四席光龍国軍政担当大臣バルド・レオンハルト、第三席右宰相グラウス・グルドマン。残りの二人は第一席北部指令イオ・アストレイと第二席東部指令シグルド・ハーゲン。この一年の間に戦死した光龍最強の将軍二人である。

 六天神・三虎は当時の階級であり、今になって才能を開花させた将が多く所属している。

 例えば六天神が末席セレスティア・ノール=ヴァリア。彼女は当時十代であり、頭角を現し始めたばかり。死ぬ間際の能力であれば五龍の第一席と掴めた逸材であった。

 生き残りであれば三虎の第二席、堅固の総括者エルマーシャ・リンド=フォールンや六天神第二席の葉桜軍総司令鳳蓮・明耀。彼は後の時代に新たに補填として六天神第二席を掴み取った。

「その入れ替わりが激しくなりつつあり、今の将の実力を鑑みて新たに任命しようという話がある」

「今はそこに我らが殿が入れるか、という話か」

「その通り。今年の初めの戦に続き、この戦でも敗北となれば、確実に六天神以降の席となってしまう。ならば、ここで少しでも実績を出すため影武者をお呼びしたと?」

「だから、ここに俺が呼ばれたのかー。ランシェ」

「マルム様、いえ、リシュアン様。準備は宜しいですか?」

「ああ、問題ない。兄様の振りをしておけばいいのだろ? 簡単だ」

「宜しく頼みます」


 ♦♦♦


「内壁各所制圧され、階段から続々と兵が下りています!」

「‥‥無念だが、奧壁まで下がる!」

「各所もう兵が足りません!」

「兵糧の概算が! 後二日です!」

「チッ、央都王との一騎打ちでゲルムが相打ちになったことで一気に崩れ出したか‥‥」

 攻城戦三十一日目。遂に一月を超えた。ゲルムが央都王の一騎打ちで相打ち‥‥といってもともに城壁より落下した。央都王は気絶していたが、偶然、近くに居たアルトゥスとその兵に助けられた。

「早くしないか! 葬獄!」

「やはり‥‥何かを知っておられたのですか?」

「いや‥‥、聞かなかったことにしてくれ。これは、この城が落ちるか救われるかの窮地なのだ」

 アウレリアは少し眉を顰めた。それが正しい反応だ。

「‥‥分かりました。私たちも薄々気付いていました。バルバトス将軍が毎日計算をし、狂いが無いかを考えていたことを。しかし、私たち幹部に教えないとはどういう事ですか! それは私たち北部軍を信用していないと取っても宜しいのでしょうか⁉」

 歩み寄り、絶叫に近いような声で俺の胸ぐらを捩じり上げた。

「なっ、バルバトス様は‥‥!」

「そんな馬鹿な‥‥」

 胸ぐらを掴んだ手を払い除け、閉ざした口を開いた。

「良からぬ吹聴。勝手極まりない思い込み。それで内部崩壊をさせようとしているとも取れますよ。それに、あの他の出自も出自なので」

 ギリッと歯ぎしり。


「内部崩壊もいい所だ。各地で不平不満に弱音が聞こえる。これもさっきの貴様の所業だぞ」

「そんなこと言われましてもねぇ」

「これで、この城が内側から崩壊してみろ。貴様の所為だ。俺は明日指揮を執らない。貴様が一人で何とかしろ。第四将如きがどうこうできる状況ではないと思うがな。精々頑張りたまえ」


 ♦♦♦


「起きられましたか」

「ああ、明日で決めるぞ」

「御尤もです。もう攻城を始めます。第三陣、四陣へ伝令」

 強風が吹き荒れる。追い風。いい風だ。

「落とせ」

 夜十一時。最後の大攻勢が始まった。

「第二陣以降は夜が明けてから投入します。東壁と西壁の攻城長には話は通してあるので問題なく」

「分かった。奴らがへばってきたら俺が城壁上に上がり鼓舞して回る」

「それはそれは心強い。しかし、それが無いよう努めます」

「期待しておるぞ。我が忠実なる臣下とその配下の兵達よ」

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