五拾話 真似
「お久しぶりですね。桜羅王」
「あ、お、お久しぶり。り、リシュアン総司令‥‥」
「いいですよ。リシュアンで。今は敗戦の咎で総司令ではないので」
四月中旬。俺は王やアリシアらと共に葉桜国を訪れていた。
メンバーは俺、王、アリシア。
「フッ、しかし見事なものだな。桜という花は」
「そうですね。光龍のガーベラと同じ程でしょうか‥‥」
「いや、これはそれ以上かもしれないぞ。アリシア」
俺達が居るのは川辺。川辺に咲き誇る桜を見てアリシアが簡単を漏らしたが俺はそれ以上の物を見つめていた。
「あの対岸を見てみろ。桜の並木がトンネルを作り出している」
「ガーベラじゃあれは出来ないしな」
王が言った。その通り過ぎるな。これは木だからできる事だ。
「では、あちらの小屋へどうぞ」
案内された東屋は王らが編成考えたんだろうなってくらい秘密を知ってる人間たちだけだった。
「人祓いしたんだから素直に話し合おうよ」
「‥‥そうだと思ってたよ。ただの花見だったらお前は俺達を誘わないだろ」
桜羅が話し始めたのにアレンが反応した。
「流石にバレてたかー。ま、いいや」
「桜羅王。先日は折角の援軍を無駄にしてしまい申し訳御座いませんでした」
「いや、相手が悪かったよ。あれは東西の二王が出て来てたんだから‥‥」
まずは御礼をしておかなきゃ相手国に礼を欠く。これが親善外交のキホンのキ。これは叔父上が俺の養育の時に言ってたんだっけ? アリシアに言われたんだっけ?
「じゃ、楽しみながら話そうか。華怜、あれを」
「あれ?」
「ああ、葉桜国の有名なお菓子‥‥名付けて和菓子だよ!」
その和をどっから取って来たんだ‥‥。
現れたのは色とりどりの桜、白、緑の串に刺さったモチモチしたもの。
桜色の餅に桜の葉を付けたもの。
様々だ。
「この串に刺さったのが『団子』、こっちの葉っぱが付いたのが『桜餅』。それでこっちが‥‥」
桜羅が淡々と説明を続けていく。
あ‥‥、美味しい。絶対マルム好きだろうな。こういうの。
俺は一息ついてお茶を飲んで話し始めた。
「軍の話を。この三年同盟の間に氷晶を占領したいと思っています。この話は確か四月頃にそちらの軍総司令に話を通していた筈なのですが」
「あ、あの話ですね。その話ですがまだ王宮内で話が分かれておりまして」
華怜が相手してくれた。まだ結論が出ていないのは仕方がないか。俺が投げ込んだ石を検討してくれているだけでも有難いと言っておかなきゃ。他国に自国の軍政、内政に介入されようとしてるんだから慎重にならざる負えないのは当たり前か。
「僕らが提案した関税無効化はどうなりました?」
「あ、それはもう解決したよ。こっちでは商人組合との協議の結果可決したからいつでも関税無効化は始められる」
「ふむふむ、分かった。来月辺りから始められるようにこっちでも調整するけどいい?」
「問題ない」
「アリシアからは何かある?」
「えーっと、うーん。あ、停戦仲介はあまり光龍に頼ら、ないで下さい、ってことかな?」
「ああ、ま、そうだな。俺達はあまり強い国ではないし仲介を頼まれても相手国が聞くかどうかは分からない。その代わり俺達も仲介を依頼しない」
「なるほどねー。分かった。それじゃあ、僕はこのあと少し用事があるから今日はここで解散しようか。また明日」
「報告‥‥! 南部翆玲軍動き出しました! しかも光龍南部と翆玲南部で広域戦線を作り出しています!」
「また動き出したか。光龍軍については俺は干渉できない。状況だけの報告を頼む」
♦♦♦
「翆玲軍動き出しました!」
「またか! リシュアン総司令が動けない今、頼れるのは南部指令と総司令代理‥‥」
『マルム・レオンハルト!』
俺、マルム・レオンハルトは今とても焦っている。リシュアンがここに居ないし、更迭されたからってこの難しい状況下で軍総司令代理を任されている。
「とにかく南部地域の兵数の把握を行い、それを動員する準備を。クレイド軍師官は第一級非常事態宣言を西部を除いた全土に。それと南部に第一級厳戒態勢を。東部には念の為第三級を発令。北部には第二級を。右宰相は南部の防衛線を作り上げて下さい。次に叔父上は招集した軍の移動路の策定を」
上手いことできたんじゃないか? リシュアンの言っていたことを適当に真似しただけだけど。
「続報‥‥! 翆玲軍は葉桜方面にも兵を伸ばし、そちらに四十万程。こちらには五十万程が来ていると!」
「王都圏に八万を招集。王都軍の兵数を確認。そのうち三分の二を南部へ送る準備を」
「葉桜国より報告! こちらのことは気にするな。こちらは第一将、第二将、第三将、リシュアンを動員すると!」
「リシュアン!?」
「リシュアン‥‥総司令‥‥が何故!?」
いや、俺が一番驚きな?
「はぁぁ!?」
これで十万文字‥‥。長かった‥‥。




