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四拾捌話 国家存亡の危機

「死に際の一瞬、俺に傷を浴びせてきた。その往生際の悪さを評価するよ。でも‥‥リパル・リュミエール討ち取ったぞ!」

 視界がフェードアウトしていた。


 ♦♦♦


「り、リシュアンは無事だろうか‥‥?」

 僕、桜羅・光麟はぼそりと呟いた。

「分かりませんな。しかし、無事とお思いなられた方がお心は軽いのではありませんかな?」

「あ、ああ。そうだな。そうす――――」

「————急報です! 光龍軍! 撤退! 撤退です! 華怜将軍によると大敗したと!」

「大敗とはどれほどか!?」

「報告から推察するに半数は失ったと! 我らも四万は失ったと! リシュアン殿も重体で立ち上がれないと!」

 半分腰が浮いていたが、力なく僕はドッと玉座に座り込み、頭を抱えた。死なないでよ。リシュアン‥‥!


 ♦♦♦


「り、リシュアン総司令! 大敗! 大敗です!」

「そんな‥‥! そんなバカな話があっても良いのか⁉」

「大敗とは‥‥。リシュアンや各将の安否は⁉ 残存兵力は⁉」

「恐れながら未だそのような詳しい内容は伝わって来ておりません。しかし、このような情報が。半数近くを失い、リシュアン総司令も重体と!」

 会議室にかなりの絶望が走った。あのリシュアン・レオンハルトが負けて重症だなんて。皆、どこかで考えていなかったのだ。あのリシュアン・レオンハルトが負けることなんて、と。

「続報です! 残存兵力は十八万! その他将校は皆無事ですが、リシュアン総司令が倒れたことにより戦意の喪失甚だしく、立て直しは難しいとのことです!」

 リシュアンが倒れたから。その一言に俺はピンときた。

「マルム。北部に行ってリシュアンのフリして北部軍を立て直せ」

「ハ?」

 疑問符が混じってるな。説明してやろう。

「リシュアンが居ない北部は立て直しが難しい。しかし、視点を変えればリシュアンという存在が居ないから立て直しが難しい。ならマルムがリシュアンのフリをして北部に出向いて兵を元気づければよいのではないか?」

「な、なるほど‥‥。承知しました! 今から兄のもとへ向かいます」

「ああ、気を付けていけ。北部はまだ戦場だ。最悪の場合リシュアンの居城に入るように」

「ハハッ」

 マルムが退出した後にバルドが言った。

「まさかマルムにそのような使い道があるとは‥‥」

「いや、俺も内心不安だぞ。マルムは微妙にリシュアンと比べると背が低いからな」

「そのくらい何とかなるでしょう」

「続報です! 氷晶軍追撃の気配は無いそうです。続いて各将校の安否ですが全員無事です! 葉桜軍の華怜・鈴銀将軍は無事で現在引き上げ葉桜国に帰還されたとのことです!」

「葉桜国からは謝罪の言葉が。我らの力が足りずこのような結果になってしまった事、心から詫びる。とのことです!」

「いや‥‥。彼ら彼女らもよくやってくれた。こちらからは折角の援軍を無意味にしてしまった事とても申し訳ないと送れ」

「しかし総司令が負けるとはかなりの予想外ですね‥‥」

「これは我が軍の再編ほどの規模の敗北ですよ。なんにせよ二十万の軍が北部の地で消滅したのですよ」

「ああ、だがこれだけは言わせてくれ。リシュアンを‥‥裁かないでやってくれ」

 俺の言葉に大臣たちが俺たちの方を見た。リシュアンのことをあまり良く思わない者たちは目が血走っていたし、リシュアンに近い人物は安堵のような表情で俺を見た。

「承服いたしかねますな。いくら王のご命令とはいえそれは納得致しかねる!」

 リシュアン反対派の筆頭モンステッド・ハエル。内政副長官。

「その通りである! モンステッド内政副長官の言う通りである!」

 モンステッドの異母弟イレンボル・ハエル。内政副長官補佐。

 それに乗せられたのかあちこちで賛同の意見が上がった。

「‥‥馬鹿か! お前らは! 今この国は二十万規模の軍を失ったのだぞ。それに加えて内輪揉めで軍の最高責任者である軍総司令リシュアン・レオンハルトを失うのがどれ程重い事か分かっているのか⁉」

 そう言っていた奴らも右宰相に一掃された。

「‥‥。右宰相の申された通りだ。ここは国内外の情勢が落ち着くまでリシュアン総司令の裁可はその後で十分ですよ」

 司法担当大臣ロブ・ドーマー。裁判や法律を司る。

「総司令のことも心配ですが我々は北部以外に目をやるべきだ」

「と、言いますと?」

「我々は北部の地で大敗を喫した。これにより領土は昨年の山脈の戦いとほぼ同じに戻ってしまった。しかも北部軍が壊滅状態という事は北に自ら鍵をかけた。そうとなれば南の翆玲が押し込み、この王都まで攻めあがることは想像に易い。北への逃げ道がない我々はそこで終わりです」

「なんと! ではこれは国家存亡の危機ではないか⁉」

「ああ、全土に第二級厳戒態勢を敷け。徴兵令発令の準備を。いつでも発動できるようにしておけ」

 バルドの言葉にこの部屋がピキッと固まったように感じた。

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