表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/58

四拾肆話 蜥蜴の尻尾

 崩魂平原合戦二日目深夜。リシュアン・レオンハルト以下一万二千。鵬砂城入城。

「まさかこの城が生きているとは。しかもこの軍を追いかける氷晶軍はたった数千。一帯から兵を動員しているためこの城を攻める軍もいない。しかも俺を追う軍もいない」

「明日以降の戦いに備え休息を始めます。ここから先は葬獄幹部にお任せを。殿はお休みになられてください」

「いや、そんな訳にはいかない。俺は少なくともこの城の軍の数を把握しておかなければ」

「じゃ、それだけにして下さいよ。そうじゃないと後からアリシア様にぶん殴られるので」

「お、おう。直ぐ寝る」

 じゃないと、こいつらが余りにも可哀そうだ。

「兵数集計終わりました! 八千です。合計して我らは二万。戦えない数ではないかと」

「ああ。そしてお前らの為にも俺は寝る。後は頼んだぞ」



「起きろ! 夜が明けるぞ‥‥。‥‥早く‥‥早く戦場に戻らないと俺たちは負けるぞ!」

 俺は翌朝飛び起きた直後に兵士たちを起こして回った。

 俺は寝て起きて気づいた。正確には夢の中で気づいたと言えばいいか。昨日‥‥今日の夜から俺はずっと考えていた。

 何故、氷晶軍は二十万程の軍で俺たちを追わなかったのか。追えばかなりの確率で俺は死んでいたはずなのに。

 その理由は一つ。俺を追うよりも戦果のあることがあるからだ。そしてそれは何か? そこが俺の思考の原点となる。

 単純である。光龍本軍三十万である。総指揮官が居ないあの軍に飛び込めば数さえ居れど叩き潰すことはできる。そのために俺をこんな奥地に押し込んだ。

 もしかしたらこの城が奪還されていなかったのもそういう狙いがあったからなのか。いや、それは深読みのしすぎ‥‥ではないか。

 そして俺が為すべきことはただ一つ。光龍軍の救出である。ここから平原まではこの軍を率いるならば半日。しかし、途中で索敵をしながら進むためもう少しの時間を要する。そんなことをしながら進めば、帰りつくのは今日の夜が限界だろう。しかも奴らが行軍中の俺らや、向こうに残る光龍本軍に夜襲を仕掛けていたりしたら益々事態は深刻な状況へと走り出す。


「帰るぞ。平原へ!」

 索敵用の斥候を先に出し、平原の開戦と同時に二万を率い、リシュアン・レオンハルト軍。鵬砂城より出陣。

「斥候の情報を待たずに前進を始める! 警戒しながら進め!」

 そうすると半刻としないうちに右翼に異変が起きた。

「右翼敵襲です!」

「放っておけ! 各将校に奇襲に対する対奇襲戦術は渡してある。本軍は先を急ぐぞ! こんな雑兵に全軍でかまっていたらそれこそ時間の無駄だ。敵の思う壺に嵌るという言葉がとてもよく似合う大惨事になる」

 こんな奇襲攻撃をしてこれるのは数百や一千単位の伏兵————つまり小規模部隊だ。それを二万で取り囲んで潰せば一瞬かもしれないが大きなタイムロスとなってしまう。それは今、俺たちが絶対に避けなけらばならない四つの柱の中に入っている。

 四つの柱とはこの戦いに勝つための柱で一本でも折れればその時点でこの戦は終了の合図を鳴らす。

 一本目は今言った通り時間の大幅ロス。

 二本目は俺の討ち死にがない。文字通り俺が死ねば総指揮官が居なくなり総崩れは必至だ。

 三本目にこの軍の全滅がない。この俺が率いる二万が全滅すればたとえ俺がその攻撃を掻い潜れようと、生きて戦場に戻ることはできない

 最後の柱は間に合わせる。平原で戦っている軍が全滅又は崩壊するまでに俺たちが間に合うしかない。

「総司令正面より三千!」

「ガルド!」

「ここに!」

「あの敵を受け持ってくれ!」

「心得申しました!」

 俺は正面の敵三千にガルド隊一千をぶつけるとそのまま横を通過。

 平原に近づくにつれ奇襲伏兵を行う軍の規模がどんどん大きくなってきている気がする。

「左右より断道を狙う五千ずつの合計一万を確認! 後列二千分断されました!」

「いい! 後ろにはランシェ達を組み込んでいる。気にするな! とにかく俺達は前を急ぐぞ!」

 この時俺の率いる軍は分断に分断を重ね、蜥蜴の尻尾を繰り返し二万居た軍は八千。合流をしてきているがそれでも一万程度だろう。

 前方の歓声が一層大きくなる。即ち平原の戦場にそれだけ近づいたという事だ。夕日が差している。

「前方に三万の横陣と東の文字を記した青旗を確認!」

「ここで出てくるか! 東都王!」

「左右斜め後方より二万ずつの軍を確認! 再び包囲戦の構えです!」

「今なら陣形が完成する前だ! 前方東都王の正面を穿(うが)て!」

 俺はハルバードを預けると腰から二刀を引き抜いた。今年から俺は武器を一新した。二本の直剣は二本の葉桜式曲刀‥‥カタナと呼ばれる武器に変更した。振り速度が速く、直剣よりも使いやすくリーチも長い。それに同盟国の物は使っておきたいからな。

「速い‥‥!」

 確かに速い。切り結ぶ速度は俺のトレンツの馬足も相まって物凄い速さを生み出している。これは直剣、曲剣には出来なかった芸当だ。

「待ってろよ東都王アーサ・リュミエール!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ