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丗伍話 十二

「これより第三百十二回大陸会議を始める。それでは各国の王は念のため自分と付き添いの自己紹介を」

 議長炎獄王国の宰相カルディアス・グレイヴ=ラグナ。炎獄王国の宰相を務めて早十五年。

「光龍国王アレン・リシュホードだ。我が国からは両宰相————右宰相グラウス・グルドマンと左宰相セルジュ・セルド。そして軍総司令リシュアン・レオンハルト」

 俺はとりあえず頭を下げた。

 各国の――——特に翆玲や炎獄、氷晶の要人の目が鋭く俺を突き刺す。

「そして特使アリシア・ヴァルティア」

 氷晶国の一団の目が更に鋭くなる。当然か。

「では炎獄が次の紹介の席を貰い受けるとしよう。我が名は炎獄王ダリル・グライドン=キングである」

 威圧。本当にその一言に尽きる。背後から吹く熱風。正確にはそのような勢いか。そのれが俺達を抑え付ける。これが大陸最大の領土を誇る炎獄王か‥‥!

「次にそこに居る宰相カルディアス・グレイヴ=ラグナ。此度の会議はこの男が司会を務める。ここに集う各国の要人よ。恐れ(おのの)け。これが我が国が誇る大宰相カルディアス・グレイヴ=ラグナである!」

 威風が吹いた。炎獄の力‥‥恐るべしと言ったところか。

 炎獄国王のやけに長い紹介が続き、翆玲、氷晶、葉桜と続いた。

「それでは此度の大陸大会議の議題となる宣戦布告制度についてお話ししましょう」


 宣戦布告制度。それは攻め込む国が攻め込まれる国に対して事前に書簡を送る、という制度。

 メリットとしては民への危害が少なくなったり、戦争の大規模化へのエスカレートの可能性が大幅に防げる点。

 例えば、攻め込む事を(あらかじ)め知っておけば国境地帯の民が退去する時間があり、戦に巻き込まなくてもよい、只々普通に生活している一般の民を守る事が出来る。

 戦争の大規模化へのエスカレートとは、ただの領主、城主の暴走や国境守備軍の演習での手違いなどの国から命令されていないその他の理由で戦争が大規模化することを避ける、という事だ。

 デメリットを挙げれば、戦略性の大幅低下や自国兵への被害が甚大になる、奇襲や急襲がほぼ不可能になる、というようなことが挙げられる。

 戦略性の大幅低下。これは俺自身も少し悩むところだ。従来であれば、敵が揃う前に一気呵成(いっきかせい)に攻めかかり、領土を大幅に奪うことが出来た。しかし、この制度が制定されてしまえばそのような事は出来なくなってしまう。

 次の自国兵への被害。

 これは俺が一番考えるべきところだ。俺の仕事はいかに兵の損害を減らすか。その上で攻め込む、又は防衛するかという問題を突き付けられる。

 宣戦布告制度が制定されてしまえば国境を越えるその前に前線地帯に兵を固められてしまい、その後の侵攻が極めて困難となる。そのような前線を強引に突破しようと一度試みれば、兵の損失は計り知れない程となる。

 奇襲・急襲の話は説明せずとも分かるだろう。敵城を急襲し、それを落とすことが出来なくなってしまうのだ。


「では本日はこれにて解散。明日までに自分の考えを纏め、明日の投票をして下さい」



「難しい所だな。リシュアン」

「王‥‥」

 俺は跪いた。人目がなくとも、何時如何なる時でも王は王だ。俺の幼馴染という甘ったれた考えはこの縦社会では通用しない。

「良い。跪かずとも。今はお前のことを‥‥幼馴染として心配しに来てやっているのだから」

「フフッ。そうですか。しかし、難しいですね‥‥。民の安寧を取るか、兵の無事を取るか」

「そうだな‥‥。票は軍部と文官で大きく二分され、そこに王の力が加わると俺は予想する」

 今回の参加者は二十人。そのうち五人。各国の王は一票に付き二票分の力を発揮する。

 つまり点数としては十五と十を加えて二十五。

 二十五のうち、過半数の十三を何方かが超えればその時点で制定か否かが決まる。

「リシュアン。俺は兵を取るぞ」

「は‥‥?」

「民を守るのは兵だ。兵が死ねばその後には必ず民も巻き込まれる。しかも兵も元は民だ。兵を助けるという事は民を助けることにも繋がる。そうだ。これを言っておこう。炎獄は全員で反対を貫くそうだ。これで六。俺が加わって八だ」

「フフッ。俺を加えて九ですね」

「ハハッ。お前も同調するか。ならばもう一つ。俺とお前以外の光龍は恐らく賛成派に投票するぞ」

「そうなると他の国に頼ることしかないですね。出来ることは。そしてあと各国の軍総司令で十二。一つ足りない‥‥ですね」

「そこは‥‥葉桜に頼みに行く」

「葉桜‥‥?」

「ああ。葉桜の王は俺と年も近い。もしかしたら懐柔が出来るかもしれない。リシュアン、アリシアを連れて付いて来い」

「ハハッ!」

ここで壱話とタイトル被るのか‥‥!

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