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丗参話 首を刎ねる。刎ねられる

「今年はこれで大陸停戦の季節ですね」

 大陸停戦とは毎年十一月と十二月に定められている停戦の決め事でかれこれ三百年続いている。

 もし、この決め事を破った国は即刻各国により編成される合従軍に打ちのめされるだろう。

「もうそんな季節ですか。となると大陸会議まであとひと月ですか」

 大陸会議。これは毎年十二月一日に定められる大会議。各国より代表が派遣され、次年度の大陸協定について定める。

「今年の大陸会議は一体誰が派遣されるのでしょうな」

「その点については既に俺が考えてある。俺、アレン・リシュホードと軍総司令リシュアン・レオンハルト、両宰相。何か異論はあるか? 遠慮なく申してみよ」

「そうですね‥‥。外交の面にてアリシア・ヴァルティア様を入れては如何でしょう?」

「リシュアン、良いか?」

「‥‥王の仰せのままに」

 俺に聞いたのは他に知らさぬ為の王の配慮か。忝い。

「では五人だが何かあるか?」

「いえ、御座いませぬな」

「そしてリシュアン総司令の謹慎期間が明日より始まりますな。うむ」

「‥‥はい。そう‥‥ですね。仕方がありません」

 謹慎期間。無断で王都を飛び出した軍律違反で十日間の謹慎が言い渡された。

「サギル。傷を抉る出ない」

「申し訳‥‥御座いませぬな」

「‥‥気にしないでください。落ち度は自分にもありますので」

「そうか‥‥。今日はこれで終わりとする」



 正直なこと言って、謹慎と言っても家に押し込められるだけだからそう重い罪でもない。

「ん。ありがとう。なるほどね。わざわざ悪いね。アリシア」

 謹慎期間、その者の家に立ち入っていいのは血縁者と配偶者。

 俺の場合はマルムとアリシア。義姉(ねえ)さんは血縁関係がないのでダメ。

「にしても良かったな。俺が謹慎となったのが大陸停戦中で」

「そういう問題じゃなくて、なんでそんな王都を無断で飛び出すようなことしたの?」

「一応、勢いで出てきただけで申告はしたんだけど、書簡の審査終わる前に王都飛び出しただけだからな」

「だーかーら‥‥。話聞いてる?」

「いや、だって外見てみろよ」

 窓の外に見えたのは煌く星々と流れ去る星。流れ星だ。

「もう、トワイン流星群の時期だっけ?」

「いや、あの明るさはレニモンド流星群じゃないかな?」


 トワイン流星群とはこちらの世界でいうところのふたご座流星群、レニモンド流星群はしし座流星群のことである。


「とゆーことは俺の謹慎期間もあと三日くらいか」

「なんでそんなことが分かるの?」

「田舎育ち故の天文学の知識‥‥かな?」

「フフッ。私もいつか行ってみたいな。リシュアン君の故郷」

「機会があったら連れて行ってあげるさ。それも全てが終わったらな」

「いつか‥‥か。‥‥一つ聞いてもいい? この前の会議で私を大陸会議に連れて行くか聞いた王様になんで後からお礼言ったの?」

「だっ‥‥てさ、俺は怖いんだよ。君がまた何所か遠く。俺の手の届かない場所に連れて行かれちゃうんじゃないかな? って」

「そんな。大陸会議なんだから――」

「——それがあるのが、戦国の世ってものだからな。絶対ないとは言い切れないし。ありがと。今日は。謹慎解けたらまた王宮で会おう」


 ♦♦♦


「狼鋼などに続き南都まで失った! これは儂の出し惜しみだったという事か! アーサ・リュミエール」

 アーサ・リュミエール。東都王でリパルやエレナの父。

「滅相もありません。我が子の力が及ばずこのような結果に‥‥」

「ならば三年以内にその子らを率い南都を奪還し、光龍の王の頸と軍総司令の頸を斬り飛ばして参れ!」

「ハハァ!」

「もし、失敗しようものなら三人揃って首を刎ねる。覚悟しておけ!」


 ♦♦♦


「炎獄との手切りとは誠良い判断であったと誉めてつかわす。しかし、我ら精強なる翆玲軍が貧弱な光龍軍の前線さえも抜けなかったとはどういう事であるか⁉」

「面目次第も御座いません。王のご命令とあらばこの頸を刎ねられても文句は言えません」

「その心意気! 大帝政翆玲国の軍人として誠立派で誇るべきものである! そのような素晴らしき心を持った貴様に命ず。数年以内に東部、中央部、北部の全軍合計五十万を率い光龍を攻撃し、これを滅ぼせ!」

「承知!」


 ♦♦♦


「翆玲と手切りされたとは! どの面を下げてここに居る! ゴルドン・フェル=グラナート!」

「‥‥そのこと、謝罪に参りましたが王の怒りは治まること知らず。この腹を切って詫びを」

「まっ、待て! 王もそこまでとは申されておらぬ筈である! 早まってはなりませぬ!」

「‥‥ふむ。その腹を切る勇気を汲み取り、もう一度チャンスをくれてやる。残軍や東部軍などほぼ全軍七十万規模に膨れ上がるであろう軍を率い二年以内に光龍を叩き潰せ。さもなくば貴様の頸、儂が直々に刎ねてやる」

「承知!」

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