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廿捌話 誤解

「終止符を打つ‥‥。君には無理だと思うよ?」

「黙れ! 俺はこの戦でお前を討ち父上に認めてもらうのだ! そして兄上にも! 翆玲の民にも!」

 俺を討つ。無理だな。兵との信頼関係や私情、何より戦いにかける思いがかけ離れすぎている。

 せめてものハンデで俺は片手剣を使ってやるか。

「ガルド。道を開けろ。俺が仕留める」

「なっ、あの男かなりの手練れですぞ!」

「フッ、あのクラリスを打ち取ったんだ。大丈夫だ。いつも通り信じて待て」

「話は終わったか? 遺言を放させてやった俺に感謝するといい」

 バカ。遺言を言っとくべきはお前だと思うがな。

「死ね! リシュアン・レオンハルト!」

 勢い任せに突っ込んでくる。対して俺は動かない。いや、動く必要もない。

 目の前に迫ったその時、俺は剣を鞘から引き抜いた。空を斬った奴の剣。俺は受け流したのだ。

「お前! 妙な技を使いやがって! 真っ向から戦うという事を知らないのか! 恥を知れ!」

「お前こそ。俺は齢十七だが、数多の戦場、数多の敵将を見てきた。が、お前の様に愚鈍な奴は初めて見た」

「愚鈍!? この俺がか? フッ、自己紹介も有難う御座いますって感じだな。血刃騎士団に囲まれて尚、平常心を保っているとは!」

「恥を知れとは特大ブーメランだったな。一騎打ちの場に置いて、自らの力ではなく、己の率いる兵を使うとは。お家の名に泥を塗るぞ。跡継ぎは臆病で、自らの武が間に合わないと知ったとき、配下の騎士団を使おうとしたと」

「黙れ黙れ黙れ! さっさと死ね!」

 号令と共に、騎士団が俺を取り囲んだ。

 俺は先の氷晶戦より、武を磨いてきた。故に、このような騎士団、本気の俺には敵わない。

 確実に一体一体処理すればいいだけだ。


 数分後には俺の周りに騎士団の骸の山が出来上がった。

「どうだ? まだ続けるか?」

 俺の睨みは、騎士団長と思しき男とぶつかり、騎士団は一歩二歩、少しづつ退がりだした。 

「貴様! 俺がどうなっても良いのか⁉ このフーラン家次男の俺様が!」

「いい加減、その口、閉じてくれないかな?」

 俺の剣はルラの頸を飛ばした。宙に晒されたルラの頸は鈍い音と共に地に落ちた。

「戦に私情を全面的に持ち込んだときから、お前の死は決まっていたと思え。ルラ・ダル=ネヴィカ」

「ルラ・ダル=ネヴィカ?」

「ああ、この男、本当の父親はヴァルゼン・ダル=グラオだったんだ。俺の情報網に入ってきた情報を繋ぎ合わせた。こいつは、本当の父親が誰か知らないまま逝ったんだ。俺とどっちが上かって感じだな」

「報告! マルム様の戦場に敵将レン・フーランが現れました!」

「スルールは今どうしている!?」

「今、救援の軍を出したとの報告入りましたが、橋を渡ろうとした所を、橋落としを喰らい、混乱状態だと!」


 ♦♦♦


「レン・フーラン大隊そこまで来ています!」

「騎兵大隊を退け、歩兵大隊に入れ替えさせろ。〈燐渦の陣〉!」

 〈燐渦の陣〉とは歩兵大隊による、止め石を作り、敵軍に流れを付けさせ、知らぬ間にUターンさせる陣。まぁ、よほどの馬鹿じゃない限り、この策にかかる前に離脱するんだけどな。

「敵将大隊。掛かりました! 次々と陣外に吐き出され行きます!」

 何故。これまでの動きから推察するに、相対している敵将は相当キレ者の筈。

「報告! 止め石を砕く中隊多数在り! 敵将の部隊と思われます!」

「重騎兵で前を固めろ! 後ろから迫るスルール将軍の援軍が到着するまで粘るぞ!」

「重騎兵間に合いません! レン・フーランが来ます!」



 ♦♦♦


「報告! 葉桜国峠方面より軍が現れました! その数は三万!」

「三万‥‥。後軍の気配は?」

「ありません!」

「不思議ですね‥‥。たかが三万で取れる領土はたかが知れています。加えて今は葉桜軍は南の翆玲軍を止めることに必死の筈。わざわざ軍費や危険を払ってまで、三万を動かすか甚だ疑問が残ります」

 王宮会議中に報告が入り、武官たちはリシュアン不在の中、それぞれの意見を述べ始めた。

「まずは使者を立て、目的を探ることが肝要かと」

「なんだと!? 相手はあの使節団を強襲した葉桜だぞ⁉ 帰ってくるのは返答ではなく、使者の生首である可能性もあるのだぞ!」

「例えば、その三万が我らの領土を踏みしだかんとするならば、停戦要求をした方がよいではないか。今、西部から軍や将の殆どが招集されており、手薄そのものです。ならば停戦を選んだほうが良いではないですか。他にも、同盟使節団強襲は誤解であり、その詫びとして援軍を連れて来た。という可能性はあります」

「誤解だと!?」

「ええ。誰の命令かと問われた刺客が、咄嗟に両国の関係を悪くするために葉桜の命令と答えた可能性も十分あります」

「‥‥左宰相のいう事ももっともだ。使者を立て、相手の目論見を探ろう。右宰相は葉桜の外交官への尋問を続けろ」

 秋の初めの風が王都を吹き抜ける頃、大陸の勢力図は大きく、揺れ動こうとしていた。

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