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拾弐話 リシュアン・レオンハルトの頸

「久しぶり‥‥かな? クラリス」

「そのようだね。リシュアン。今日こそ君との戦いに決着をつける。そして我らの地を取り戻す。‥‥決着と言っても、もう着いているかもね。私の方に軍配が上がって」

 ハルバードを握りしめる。あっちもグレイヴを手に取った。

 視線がぶつかる。それ即ち一騎打ちの意思表示。

 耳先数ミリをグレイヴが通る。強烈な突き。そこで止まったかと思えたその時、横にその刃先が動いた。

 屈んでかわす。次はこっちの番だ。

 右から薙ぐ。しかし、その金の鎧でそれは止まる。恐らくは重装甲甲冑。大陸にも数がない一級品。

「言ったでしょ? もう決着は付いているって」

 俺は背中に背負ったメイスを引き抜くと、ハルバードを自軍の方へ放り投げた。

 まず、馬と馬をぶつけて地面に落とした。とりあえず、これで第一段階が完了した。射程の短いメイス幅上での戦いに向かない。

「リシュアン様!」

 後ろから盾が飛んできた。なるほど。

「クラリス様もこれを」

 彼女の後ろからも盾が飛んできた。

 綻びのできたさっき切りつけた後にメイスを当てる。確実に鎧がひしゃげた。俺の盾にも傷が入った。

 打ち合いをつづけた。俺自身ももうボロボロに近いが、奴の鎧にもかなりの綻びができた。最後にメイスと盾を投げつけると、腰に射した剣二本を構えた。一本は綻びのできた胴に、もう一本はクローズドヘルムの隙間に。

「ラアアア!」


 ♦♦♦


「文武外合同臨時朝廷会議を始める」

 俺は始めた。臨時で外交をも含めた一大会議を。

「まずは灰嶺山脈での勝利を収めたリシュアンに礼が言いたい。ありがとう」

「いえ、自分だけでは敗北を喫していたかもしれません。今自分がここに居られるのは前線で共に戦ってくれた勇士たちあってこそです」

「では右宰相。戦後報告を頼む」

「承知いたしました。我が方の損害は凡そ七万。相対する敵方は損害十五万とクラリスという大損害を被りました」

「北部への手当は頼むぞダリオ、セルジュ」

「「承知」」

「外交面はアリシア特使より少し話があると聞きましたが?」

「はい。皆様の耳に既に届いているかとは思いますが葉桜寄り盟が持ち掛けられました。私は条件次第では受けてもよいとは考えているのですが、皆様のご意見を再度耳に入れておきたいのですが」

 それぞれ自らの意見を述べた。リシュアンをはじめ全員が賛成だった。

「そして使節団の編成を真勝手ながら考えさせていただきました。特使は私アリシア・ヴァルティア。副使に軍総司令リシュアン・レオンハルト殿、そして葉桜との外交経験をお持ちの宰相セルジュ・セルド様、そして私の配下外交官数名と外交護衛にシリウス・ゼイファード近衛兵長です。何かご予定がかぶりましたらこの場で私に」

「俺は何でもいい」

「私もです」

「ええでゃ、これで決まりということで宜しいですか?」

「異論はない」

「同じく」


 ♦♦♦


「論功行賞を執り行う!」

 翌日の会議で王が言った。

「まず第一功リシュアン・レオンハルト。貴殿の活躍を称え、北部セリウスの城の城主に任命すると」

 片膝ついて、

「有難く」

「後日武官の方々には勲功に見合った褒章を与える予定だ」

 城主不在のセリウスの城主に俺を当てたか。まあ、問題はない。

「では、早速ですが軍議を始めさせていただきます。現在我らが光龍軍は徐々に北部・西部より兵を撤退させ、東部南部に充てております。南部は特に翆玲の動きが怪しいためぶ厚めにしております。次に兵糧ですが、今年の収穫は豊作が見込めるかと。そこで内政の方々と一つ相談なのですが、今年だけ税を軽くしては如何でしょうか?」

「確かに‥‥悪い策とは思わないですな」

「従来の収穫量の三十パーセントを納めるというのも昨年までと同じ量が見込めそうなのであれば」

「そこはご安心を」

「分かった。臨時法案を立ち上げておくとしよう」


 ♦♦♦


「次は使節団を狙う。ここでリシュアン・レオンハルトやアリシア・ヴァルティアを葬る」

「フハハ。承知です。金の方は出しておきます」

「お前もかなりの男だな。自らの娘とその婿を殺そうとしている男を止めぬとは」

「そんなもの、私の出世の糧の一部であれば切り捨てます」

「その野心、買ったぞ!」

「元からかっておられるのに‥‥まさに私の主君にふさわしいお方ですなぁ!」

「照れるではないか。して、次に雇う暗殺団の目星はついたのか?」

「ええ。次は裏情報を頼りに最強の暗殺団を雇うことにしました。出し惜しみはありません」

「フハハ! 愉快愉快。必ずやリシュアン・レオンハルトの頸を取ってこいと伝よ!」

「ハハァ!」

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