49話 シルフィリア仕事2
呪いの剣が復活した。
レヴィはシルフィリアの仕事を手伝っていた。
魔瘴の森は瘴気をため込んだ魔物がいる。そういう魔物は風が効きづらい。
そんな時にレヴィをぶっ飛ばす事で、シルフィリアは魔瘴の森の魔物を倒した。
「便利ねー。」
「……毎回吹っ飛ばされるので、すごく怖いですけどね。」
「かもねー。まあ、風の制御の第一人者だから。私。墜落はさせない。多分。」
「多分……」
「何。文句あるの?」
「ないです。」
「よろしい。」
瘴気をため込んだ巨木の魔物の死骸は、大きく二つに切り裂かれていた。
レヴィの呪いの剣が、一太刀で巨木を引き裂いていた。
「……なんだか、呪いの剣の出力が上がってない?」
「少し怖いです。軽く振るだけでとんでもない力が出る。前はこんな出力は、出なかった。」
「いろいろあったみたいだからねー。幻覚は相変わらず見えてるの?」
「見えてます。ですが胸に欲情することで幻覚は抑えられる。シルフィリア様がいてくれて良かった!」
「……それ、私の胸で欲情してるって事よね……。君、いつか死ぬからね。ホントに。」
レヴィは空を見上げる。
シルフィリアが巨大な鳥を風で巻き上げ、レヴィの元へ送り届ける。
「剣士くん、そっち落ちる!!よろしく!!」
シルフィリアの言葉通り、見上げるほどの巨体が地面へと叩きつけられた。
まだ息がある。巨鳥は咆哮をあげてシルフィリアをねめつけている。
レヴィは墜落した巨大な鳥に斬撃。
雷をまとい、見上げるほどに巨大な鳥だったが、切り裂かれた。思わずの威力にレヴィはひくつく。
柔らかい風とともに、シルフィリアが上空より降下してくる。
「私でもてこずる相手なんだけどなー。剣士くん、まだいけそうかなー。」
「今、何か、不穏な事いいませんでした?」
「どこまで、呪いを制御できるか、試してるところもあるからね。それくらいじゃ怒らないでしょ?」
「まあ……」
「よし。次行くよ。」
(この、謎の信頼はなんなのか。)
レヴィを後ろから抱き抱えて、シルフィリアは空へと舞い上がった。
移動中レヴィは言った。
「これ、命がいくつあっても足りないですね。」
「こうして魔物を倒していると、君の前の呪いの剣の所持者の、ルゼフの事を思い出すよ。彼ともこうして、よく森の魔物を倒したんだ。ルゼフはよく吹っ飛ばされてね、笑ってたよ。」
「苦笑いですね。」
「多分ね。」
「仕留め方は同じような感じだったんですか?シルフィリア様に、ぶっ飛ばされる感じの」
「そだね。」
自慢気にシルフィリアは言った。
レヴィは思った。
(すげえや。ルゼフ先輩。こんなん付き合わされて、シルフィリア様に恋したのかよ。)
ドMすぎる。
さすが呪いの剣の所持者だ。
イカれてる。
「ねえ、レヴィ君。くどいかもしれないけど、剣を捨てたら?」
「……できません。」
「今なら手放せるよ。」
「かもしれません。」
レヴィは思う。
呪いの剣と絶望を乗り越えた出来事は、あげればキリがなかった。
いつも、剣は、剥き出しの在り方のままに伝えてきた。切れという想い。そして
(パイオツを。)
「精霊契約って知ってるよね。契約することで精霊を使役する。君と私の親和性は低くはなさそうだ。私を使役することで、私が剣の代わりができる。」
「やめてくださいよ。シルフィリア様。俺の真実は胸です。そうなったら、俺、多分シルフィリア様をずっと鑑賞しますよ。」
「呪いの剣の物語がそれで終わるなら、私の胸が君の真実でも、ギリギリ、許容範囲……」
少し目が泳いだ。
「いや、ちょっときついか……」
内容はふざけていたが、その提案は真剣だった。
「この線は無理かー。レヴィ君、呪いの剣を置くと約束してくれるなら考えるけど。」
「シルフィリア様を、使役……」
「剣を置くならね。」
「申し出はありがたいですが、お互いにとって無理が生じます。シルフィリア様は、そういうのは嫌うはずです。」
「うわ。剣士くんに諭された……えぐ。」
(シルフィリア様が無理するほど、呪いの剣は危険なのか……。だが答えは出ている。)
レヴィは強く頷いた。
「わかっています。シルフィリア様の胸では、呪いの制御はできても。絶望は越えられなかった。それが真実です。あなたのパイオツは美しい。胸を突くほどに。ですが俺の求めるパイオツではありません!!!!」
「も、もうわかったから。よく理解したから。追撃しないで。な、泣いちゃいそうだから。」




