表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の呪いで修羅となったので、最強を目指す。進化条件はセクハラ!?いいだろう。俺は胸を直視し手を伸ばす。  作者: 無印のカレー
転章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/62

45話 故郷の村

狼はまるで人の心を持っているかのようだった。


希望なんて、どこにもなかった。

両親は死に、ばあちゃんが死んで、村が滅んで、大事なノアすらぶち殺して。


この手で。



呪いの剣は、相変わらずレヴィの右手に握られていた。


剣を握る力もない自分が川に流されてもなお、

その手から離れていなかった。



レヴィの足は、まだ不安定だった。

それでも、確かに動いた。


歩む。

一歩進むごとに、痛みや強い倦怠感が襲った。


狼に支えられて、掻き立てられるように、レヴィは歩いた。




気づけば、レヴィの足は見覚えのある場所へと辿り着いていた。


(……そうだよな。崖は魔瘴の森へとつながっていた)


レヴィは魔瘴の森で育った。


故に無目的に歩き続ければ、見慣れた目印を辿るようにして「そこ」たどり着いた。


故郷の村。



小さな村だ。


村の中央に位置する聖なる木の根も加護を失い、朽ちていた。


見慣れた風景。


家と道

畑と川。

村の中央の広場と、聖なる木。


一呼吸のわずかな瞬間にも、懐かしい何かを見つけ出す事ができた。何度となく歩いたのだ。


狼は静かに寄り添う。


狼は静かに周囲を見渡し、レヴィの横で鼻を鳴らす。

この村に興味はなさそうだった。周囲への警戒だけがあった。


変わってしまった、でも見慣れた村の道をレヴィは狼とともに歩いた。


(帰ってきちまった。俺は……ここにいた。いたんだ。)


でも、罪は消えない。

手の中に呪いの剣は今もある。


なら。いかねばならないのだろう。


(俺と剣の、出会いの場所へ。)


始まりの地へ。







かつて一度だけ避けた崖下の獣道を通り抜ける。


棘の通路や、古木の木の根の間を抜けて、漆黒の湖をぬけていく。


苔むした建造物、祠のような出立ち、朽ちた黒曜石の祭壇。


祠は、深い霧の中にぽつんと佇んでいた。

無数の枝葉が陽を遮り、足元の古びた石段をレヴィは上がっていく。


以前に剣の刺さっていた台座の前で、レヴィは剣を眺める。


川でレヴィが目覚めてからというもの、呪いの剣は、幻覚も黒い瘴気も発していなかった。


(今なら捨てられるかもしれない。呪いの剣を。剣が機能していない。所持者の元へと舞い戻る剣の機能も、麻痺している。感覚でわかる。)


レヴィは過去と呪いの狭間で揺れていた。


さながらパイオツのように。


(俺が希望かよ。笑える。呪いに呑まれて、みっともなく生き残って……そんな俺が、よりにもよって……)





そのとき、風がふいた。


振り返ると、空中にふわりと浮かぶ一人の女性がいた。

淡い光をまとい、透き通るような美しさ。



空からゆっくりと降りてくる。

レヴィを見る彼女の眼差しは鋭く、何もかも見透かされているような輝きがあった。


風の羽衣と薄い生地が、美しく風にゆれている。



「久しぶりです……シルフィリア様。」

「やあ、剣士君、息災みたいね。」

「……息災……に見えますかね?」


「まあ、ボロ雑巾かな。ちゃんと。」


「ぼ、ボロ雑巾ですか?」


「いや、ぼろ雑巾でもないか。……さらに小さい布の切れ端というか……ううん、朽ちた落ち葉というか……」


シルフィリアは首をかしげた。


「……埃?」


レヴィは思った。

(否定できないんだけど、久しぶりなのにひでーや。)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ