3話 乳が見れてハッピー2
そこでは、常に彼女が戦っていた。
襲い来る異形を切り裂き、あらゆる剣技を用いてその全霊でもって。
彼女は生きようとしていた。
その瞳は恐ろしく澄み切っていた。
「……ここまで来たのね………立って……」
女戦士の声。
その声は澄んでおり。慈しみがあった。
(このパイオツこそが答えなのか。)
剣の幻覚。
魔物の死体の山の中で、レヴィはその光景を、幾度も見届ける。
戦えば戦うほど幻覚は鮮明となり、現実は薄れた。
だからレヴィは、森で魔物を殺していた。
戦う力は、剣が与えてくれた。
「壊れていく……俺が……」
乳のオーケストラ第三楽章をたしなみ、夜、レヴィは虚な目をして村に帰ってくる。
「レヴィ。ちょっといいかい?」
「ただいま、ばあちゃん。どうしたの?」
「レヴィ。悪い事は言わない。その剣を置いて……」
そうしてレヴィは秒で逃げるので、ばあちゃんは関わり方を変えた。
言葉は不要。
ハンターの如き手際で、ばあちゃんはレヴィを素早く捕らえる。
鶏を捕えるように。
問答無用で森へ出かける。
レヴィは、しぶしぶ歩いていた。
2人で村の結界を抜けていく。
ばあちゃんが、魔術の結界を2人で包む。
レヴィはそこで観念したのか、引かれるように歩く手から、ようやく反抗する意思が消えた。
森をトボトボと歩いていた。
「空見るの好きだったね、レヴィは。」
「うん。」
「開けた高台へ行くよ。」
2人は、魔物を撃退しながらそこへ進んだ。
そこは村が一望できた。
「今度ノアも連れてこようかねー。」
「危ないよ?森。」
「レヴィが守るんだよ。今日みたいに。」
「そもそもばあちゃん、ここまで1人でも来れたし。」
ばあちゃんはレヴィの頭をくしゃくしゃにした。
「レヴィ。村は好きかい?」
「うん。」
「ノアは?」
「生意気。」
ばあちゃんは笑った。
「間違いない。ばあちゃんは、よく、じいちゃんに守ってもらった。たがらレヴィも、ノアを守ってあげないとね。」
「うん。わかってる。」
レヴィは胸を押さえた。
「でも、ばあちゃん。ないんだ。ここにあったはずのものが、どこにも。」
「わかるよレヴィ。私の中にもない。いなくなってしまった。でもレヴィはここにいる。そうだろ?」
変わらず、機械的に準備をしてレヴィは出かけた。
たまにばあちゃんに見つかる。
誘拐されるように、丘へ、あるいは家に連れていかれた。
言葉は不要だ。
森に行けば、村を害する魔物対象はいくらでも出てくる。
呪いの剣を使って、魔物を切る。
そこに関して異存はない。
胸を穿つ喪失は、刃よりも鋭く、今もレヴィを刺す。
剣の権能には、副作用があり、そのため幻覚や悪夢と剣は切り離せない。
幻覚や悪夢に囚われたものは、破滅へと向かう。
レヴィが経験した全ての幻覚や悪夢は、女戦士が戦う終末の光景へと辿り着いた。
まるで導かれるように。
滅びの光景を見せる事が終着点だと仮定するなら、見せる事こそが剣の目的であり、所持者の破滅は終着点ではなくなる。
破滅が目的ではないとするなら?
その意味は?
(ばあちゃんは、俺に何かを伝えたかった。剣も同じだ。何かを見せようとしていた。でも、いいんだ。そうじゃないんだ。)
体育座りで、レヴィは、その神聖な二つのふくらみを見つめていた。
なめるように
(ま、いいや。そんなことより乳だ……!!)
なんだかんだで、執着と欲望を満たす、乳のオーケストラ第三楽章こそが、レヴィを支えていた。
豪勢な胸でなくても、良かった。




