2話 乳が見れてハッピー
つい先日の事だ。
レヴィは剣を拾って帰ってきた。
剣だけが、以前と違う。
その剣だけが、生活の中に違和感を生むように挟み込まれている。
ばあちゃんは、家から出てきたレヴィに声をかけた。
「おはようレヴィ。今日も早いね」
「おはよーばあちゃん。」
眠そうにレヴィはあくびをする。
普段のレヴィと全く変わりない。
「レヴィ。両親には会えたかい?」
「だめだね。いいところまで行くけど、手が取れたり、顔が増えるんだ。使えないよこの剣。」
「そ、そう。」
ばあちゃんは思った
(やっべ。いみわかんね。)
レヴィは剣を片手に、歩く。
そしてレヴィは、ふらふらと森へと消えた。虚な目をしていた。
(やっぱり、だめだ。いくら必要な事だとはいえ、レヴィには危険すぎる。)
村のばあちゃんとレヴィに、直接の血縁はない。
だが、村人であるなら、それは孫と同義。そのレヴィが、魔物に殺された両親と会えると言い出した。
ばあちゃんはレヴィを呼び止めようとする。
考えている間に、もういなかった。
レヴィは村の結界を抜ける。
結界は、村の中心広場から円を描くように村をすっぽりと覆う。
そこを抜ければすぐに森だ。
剣が見せる幻覚や悪夢は、幾度となくレヴィに、それを突きつけた。
両親の死。
魔物の群れから、レヴィを守るために犠牲となった場面。
その心情、怨嗟の声。
両親が死んだ時点から、レヴィの時間は凍っていた。
やがて静かになった世界に、孤高に戦う一人の女戦士が現れた。
レヴィは彼女の事をパイオツの戦士と呼んでいた。
その胸は、決して豪勢なものではなかった。
だけど彼女は、戦い続けていた。
レヴィは、焦がれていた。
強さに。光に。
それが自分の運命のためであろうと、呪いのためであろうと、関係なかった。
ただ、必死に、切ないくらいに、誰かと心を通わせることを――渇望していた。
だからレヴィは、前を向いた。
彼女のように。そうした。
呪いの剣の権能は、レヴィに膂力と、戦闘技術をもたらした。
彼女の胸を見れるなら、副作用である幻覚も悪夢もどうでも良かった。
レヴィは、森での時間のほぼ全てを、二つのことに捧げ始めた。
一つは、森の警備。もう一つはパイオツの戦士。
大事なのは時間を捧げているということだった。
思春期の多感な時期に、レヴィはずっと焦がれていた。どんな時も、寝る時も、食べる時も。故に、彼は、その想いを抱いて呪いを制御するに至った。
控えめに言って変態だった。
だからこそ、レヴィは思う。
呪いの剣とこれから歩む気なら、向き合わなければならない。
自分自身の喪失と共に、この揺れ動く心と。
つまり、パイオツのゆらめきについて、今まで以上に深く。
いつか、パイオツにむしゃぶりつく日を願って。




