25話 ダンジョンに潜る男
そしてその画面には――。
「エンディング:The End of the Villainess.」
静かに文字が浮かび上がっていた。
寝ぼけた頭で目をこすりながら、プレイヤーは思わず息を呑む。
――何だこれ。
そんなエンディング、見たことがない。攻略サイトにも、ファンWikiにも載っていない。
画面の中では、学園の卒業式。
晴れた空の下で、悪役令嬢が笑っていた。
その隣には、正ヒロイン。そして攻略対象たち。
全員が、幸福そうに。
そして、画面の片隅に文字が浮かんだ。
「ありがとう。あなたがわたしを終わらせてくれた。」
プレイヤーは凍りついた。
心臓の奥をなにかが掴んだような感覚。
……だって、そのセリフ。
どこにもない。スクリプトデータにも存在しない。
カーソルを動かそうとすると、画面が一瞬だけノイズに包まれる。
最後に一枚の静止画が映し出された。
――悪役令嬢が、こちらを見て笑っていた。
「あなたがくれた“終わり”は、わたしの“はじまり”になった。」
次の瞬間、画面は暗転し、二度とそのセーブデータは開けなくなった。
……彼女は、本当に「終わった」のだろうか?
それとも――まだ、どこかで続いているのだろうか。




