表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の呪いで修羅となったので、最強を目指す。進化条件はセクハラ!?いいだろう。俺は胸を直視し手を伸ばす。  作者: 無印のカレー
落日の日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/62

19話 風の大精霊シルフィリア5

日数がたっていた。


レヴィは手の動きや体を動きを確かめていた。


「傷は癒えてきているみたいね。」

「ああ。おかげさまでな。おそらく以前のように戦えるだろう。」


子供達は広場を走り回っていた。

ウサギが煩わしそうに逃げていた。


まぶしそうにノアはその光景を見る。


「どうするの?」

「シルフィリア様の頼みか?」

「うん……」


森から出るだけなら、もはや出る事ができる。

きっとシルフィリアは言葉通り、森の外へと導いてくれるだろう。


(シルフィリア様は言った。)


シヴェルは、300年森を彷徨い、呪いが深まった存在。

森の変質は、そもそもシヴェルの力の影響が、急速に拡大したことにある。


シヴェルを倒す事で、魔瘴の森は開放される。


(シルフィリア様は森を浄化したい。その手伝いを俺や、呪いの剣に求めている。)


彼女の声には慈愛と同時に、厳しさもあった。


(彼女の助けがなければ自分も、ノアも、子供達も死んでいた。恩がある。それに……村が滅んだ原因に、一言、言ってやりたい気持ちもある。)


「……ノア」


レヴィは静かに言った。


「行くよ。俺。」


ノアは呆れたように小さくため息をついた。


「そういうところ、あるよね。わざわざ逃げ道まで用意してくれてるのに。死んじゃうかもって言ってるのに。」


レヴィは拳を握りしめ、目を真っ直ぐに見据えた。


「正直、300年の呪いとか言われてもよくわかんないけど、呪いの剣はクソだけど……せっかくだから、俺の真実をその呪いの果てにぶつけてやる。」


レヴィは声に熱を込める。


「この乳への、情熱を。」


ノアはとりあえず曖昧に頷きながらも、胸の内で強く思った。


(乳はやめろ……)


風が静かに吹き抜け、二人の決意を祝福するように揺れた。




二人はシルフィリアに告げた。

その決意を。


シルフィリアは、レヴィの顔を見つめながら、静かに言った。


「……何度も聞くけど、いいの? 剣士君。」


「ああ。あんたには世話になった。あの時、俺たちは終わっていたはずだった。だが、それを抜きにしても、シヴェルには一言言ってやりたい。俺の想い。そして村のみんなの想いを。」

「そう。死ぬかもよ?」

「かもしれない……だけど」


レヴィは呪いの剣を見た。


「俺はこいつを制御するのに、何度も死にかけた。大変な事ばっかりだった。だけどそうでなければ、そうしなければ、俺は死んでいた。その道は、まだ途切れていないように俺は思う。」


「……めんどくさい剣士君ね。これだけ警告してるのに、お人よしだこと。」


風がざわめく。

シルフィリアの瞳はどこかに優しさと、鋭い悲しみを帯びていた。


「シヴェルは強大。300年前、“選定の剣”の契約者だった者が、己の命と意志を“理“に変えてまで、この森を封じた存在。つまり、ひらたく言えば君の先輩。」


その視線は、もう試すようなものではない。“戦う者の覚悟”だ。


「下手をすれば──いや、下手をしなくても、死ぬ。戻るなら、今だ。その剣は君の選択を否定することはない。真実は、いつか別の形で果たせるかもしれない。だが──それでも進むなら」


言わなくても、わかっている。


「進むなら、すべてを賭けてもらうから」

「当たり前だ。」


その覚悟がなければ、この森は超えられない。

ノアも守り切れない。

子供達も守り切れない。


そして、ばあちゃんや村のみんなから託された、たくさんのものを、守り切る事ができない。






ノアは、風に髪を揺らしながら、レヴィの背中を見つめていた。


「……気をつけてね。レヴィ。変なとこで死なないで。帰ってきたら、ちゃんと文句言わせてもらうから」


その言葉に、レヴィは小さく笑った。


事前に話し合っていた。ノアは残る。子供達を見ている者が必要だ。役割分担が必要だった。


「了解。生きて帰る。胸を張ってみんなのために戦ったって言うからさ」


風が揺れる。


「なんか、大事になっちゃったね。」

「だなー」

「レヴィはなんかすごく強くなってるし」

「俺も……俺自身を、わかってないんだけどな」


風が揺れ、木々がざわめく。


「だけどな……クソみてぇな幻影を張り巡らせて、誰も彼も惑わせるようなやつに……」


レヴィは、ゆっくりと剣を構え、足を一歩踏み出す。


「負けるわけねぇ。俺は、いつだって手を伸ばしてきた。誰かのために、何かのために、そして──」


その目は、真っ直ぐだった。

剣の奥に宿る、今はもう呪いではない光が揺れる。


「真実に。」


「その真実って、おっぱいだよね?言いたいだけだよね??かっこつけてもだめだからね。」

「……はい、すんません。」


ノアは、静かに観念した。

唇を噛みしめ、目を伏せて、それでも顔を上げたときには、強い意志がそこにあった。


「レヴィ。待ってるから」

「おう。」


村の中で見せた笑顔と、同じ顔を、レヴィは見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ