1話 村へ帰る
レヴィは村に戻った。村の長老であるばあちゃんがレヴィを出迎えた。
「レヴィ。その剣は?」
「拾った」
「剣は落ちてないと思うんだよね」
「うん。刺さってたから」
「……?」
レヴィは、剣をばあちゃんに見せた。
赤黒い血管みたいなものが走っており、ばあちゃんは思わず後ずさる。
控え目に言ってその剣は本格的過ぎた。
「ばあちゃん。この剣、すごいんだ。幻覚が見えるんだ
「だ、大丈夫なのかい?
「わかんない。でも両親と会えると思う
「レヴィ。両親は」
「死んだんだよね?わかってる。」
「レヴィ。」
ばあちゃんは、レヴィを両手で抱きしめる。
「痛いよ。ばあちゃん」
「レヴィ。ばあちゃんを置いてっちゃだめだよ。ばあちゃん、レヴィまでいなくなったら、どうにかなっちまうよ。」
「うん。わかってる。ばあちゃんを置いてかないよ。」
「よし。いい子だ。」
ばあちゃんはレヴィを離した。
「じゃあおれ、両親と会ってくるから。行くよ。またね。」
そう言うと、レヴィは家の中は消えた。
取り残されたばあちゃんは思った。
(なんもわかってねー。)
心配するばあちゃんを尻目に、家に帰って来たレヴィは椅子に座る。
レヴィは呪いの剣を改めて見る。美しい剣だった。
家の中は静かだ。
「……ただいま。」
声を出すが返事はない。
椅子は3つ。
何も変わらないはずの場所が、今は妙に遠く、冷たく見える。なかなか慣れない。
(始めよう。)
レヴィは椅子に腰掛けると、呪いの剣に意識を集中する。
剣はすぐに応えた。
――レヴィおかえり。
――レヴィ今日も頑張ったね。
両親の幻覚。
レヴィは光のない瞳でそれを見ていた。
(――違う。)
そしてもう一度幻覚を繰り返す。
――違う
何度も、何度も繰り返す。
壊れたテープレコーダーのように
(――違う。――これも違う。)
何度も何度も。
やがてレヴィは寝ていた。
机の上で。
もう一度試す。
よくわからん幻覚が出てため息をつく。
(両親の幻覚は出るには出る。だけど他の幻覚も出る。
一回両親と会うまでに、何時間かかるんだよ。)
両親は家にいて、よく、遊んで帰ってきたレヴィを笑顔で出迎えた。腕は取れていなかったはずだ。
なんとかそこまでいきたかった。
だけどまずその両親の姿が出るまでに、何時間も掛かってるようでは、控えめに言って使えない。
(首もげるし。)
レヴィは冷めた目で呪いの剣を見た。
(クソ仕様すぎる。)
どこかでわかってはいた。
この剣はきっと、所持者に暖かさの夢を見せるものではない。
もっと残酷で、もっと怖いものだ。
(だけど。)
でも。ダメなものはだめだ。
(使えなねー。
レヴィの中で剣の扱いが決まった。
レヴィの視界には試すように呪いの幻覚が揺れていた。
見えていたのは両親の幻覚だけではなかった。
呪いの源たる古の戦場。
それらを抜けて、蒼銀の鎧に身を包んだ、女戦士。
その女戦士の肉体
2つの胸の膨らみ
豪快に敵を斬り伏せ、装甲の隙間から揺れる光。
単純にエロかった。
(パイオツの造型だけは深いんだよなー。)
憧憬のようにそれは、レヴィの心を痛烈に引き裂いた。
世界が震えた。
世界の深淵が彼を見つめ返していた。
乳が。
(採用……総合的に見て、完全に採用。)
レヴィは思春期だった。




