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剣の呪いで修羅となったので、最強を目指す。進化条件はセクハラ!?いいだろう。俺は胸を直視し手を伸ばす。  作者: 無印のカレー
落日の日

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12話 魔瘴の森3

幻覚は続いた。

最後に死んだ老人。村の大人たち。子供。ノア。自分。

レヴィは全て一刀のもと切り捨てた。


──子供たちは、泣いていた。


そりゃそうだ。


目の前で、優しく呼びかけてくる村の人々の幻が現れて、

ほんの一瞬だけ幻の中に「本物の笑顔」のようなものが浮かび、それは異形となり、すぐさま惨殺死体へとなり下がった。


そこには血も涙もない。

ただ、圧倒的な殺戮と殺意があった。


「造形が甘いんだよなー、腕の長さも違う。あーおしい。だけど笑顔がきもい。ハイだめ。ノアはそこまで胸はでかくない。ハイ偽物」


幻覚に対して、ダメ出しをしながら、嬉々としてレヴィは進んだ。


次々と現れる幻覚。

黒い剣で親しい者をぶち殺し続ける男。

子供達の泣き声。


(地獄絵図じゃん。)


ガチ泣きしている子供達をなだめながらノアは思った。


「あんなみえみえの幻覚に誰がひっかかるってんだ。なあ、ノア」

「そ、そうね」


ノアは曖昧に笑った。








幻覚がひと段落つき、少し森の開けた場所で、一行は休憩もかねて腰掛けていた。

レヴィは警戒を解かず周囲に意識を向けている。


「ねえ。一個聞かせて」


ノアは声は静かだったが、どこか痛みを含んでいた。

それでも、聞かずにはいられなかった。


「なんで……そんなにずっと戦い続けられるの?あんなのと、幻覚と……私、だめだな。実は最初の幻覚が出てきた時に、本当のおばあちゃんかと思っちゃった。実は生きてたのかなって。」



本物と見紛うばあちゃんのその幻を、少年が一瞬で斬り捨てたのだ。

ノアはそれを見た。子供達も。

幻覚が現実として焼きつけられるまで、幾度も。


「……ごめんな」


少年は剣を下ろしながら、そっと言った。


「でもあれは本物じゃない。あれは“食う”ために、

 おばあちゃんやみんなの顔をしてただけだ」


けれど、少年の姿はどこか、冷たく見えた。

優しさと冷酷さが、背中合わせにそこにある。


「わかってるよ……でも、でも……」


ノアは言いよどむ。

子供達はすすり泣いていた。


「……だから嫌なんだよな、この剣」


少年は呟いた。


「斬るしかできない。

 抱きしめる手が……もう残ってねえ」


幼馴染は、そっと彼の隣に並んだ。

そして、自分の手を差し出す。


「じゃあ、あたしが代わりに抱きしめるよ。

 その分、あんたは剣を振って」


子供たちをひとりひとり、腕に抱いて、頭を撫でてやる。

泣きながら、でも前を向けるように。


子供達も、泣いて、泣いて、それでも前に進もうと、歯を食いしばっていた。


少年は、一瞬だけ目を伏せてから、再び前を向いた。


「……わかった」


「ちゃんと頼りなさい。ばか」


「はいはい」


ノアの存在が、子供達の勇気が、ありがたかった。




「ところで、私の胸がでかくないとかなんとか言ってなかった?」


レヴィは明言を避けた。

この重い雰囲気を維持することで、なんとかごまかせないかなと真剣に考えていた。










目の前の景色はすでに何度となく訪れた、先ほどの開けた場所。

けれど、それは魔障が作り出した幻影の迷路。


何度も同じ場所をぐるぐる回るうちに、体の疲労が限界に近づいているのを感じていた。特に子供達は限界だ。ノアにも疲労が見えている。


──そろそろ、体力的にまずい。


「くそ。前に進めねえ……」



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