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ひらひら本と ひのなかのちかい
ある日、風に舞ってやってきたひらひら本は、ひのこがはじける村に降り立ちました。
村の人々は争っていました。言葉が熱く、心がちくちく燃える毎日。
ひらひら本は静かにページをひらきました。するとそこには、いくつもの「火」「炎」のことばが踊っていました。
村人たちはそのページを見て、自分たちの心の熱さを知りました。
「もう、こんなに熱く叫ばなくてもいいかもしれない」
誰かがそうつぶやいた瞬間、炎のような言葉がすっと風に消えていきました。
ひらひら本は、そのあとも村をまわりながら、ページの言葉を少しずつやさしく書き換えていきました。
気づくと、「火」「炎」の文字はひとつも残っていなかったのです。
残されたのは「つながり」「手をとる」「静かなちかい」――
まるで本の中で、ことばたち自身が、新しい物語をえらびとったかのようでした。
村の夜、みんなで囲む灯りのそばで、だれかがそっと言いました。
「この本が教えてくれたのは…熱じゃなく、ぬくもりだったんだね。」
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