表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひらひら本と 〇〇シリーズ  作者: ツナ缶
1/6

ひらひら本と はじめて ひらひらした日

ある日、だれもいない図書室のすみっこで

ほんだなの下に、ちいさな本がひとつ そっとすわっていました。


まだ名前も、声も、物語もない。

ただ、3まいだけの ふるえるようなページを持つ

赤ちゃんのような ひらひら本。


その日、小さな窓から やさしい風がふきぬけて——

ページが、1まい ひらいたのです。


カサッ。


それは葉っぱの音のようで、

だれかの足音のようで、

まだ見ぬ読者の こころの音みたいでした。


「ぼく、ここにいるよ」

そんな ちいさな言葉が、ページの間に ゆれていました。


ひらひら本は まだ力が弱くて

自分のすべてのページを ひらくことはできませんでした。


まるで、赤ちゃんの歯みたいに——

ページは少しずつ、時間とともに 増えていったのです。


1まい、また1まい。

日ざしにふれながら、

静かな図書室の音を聞きながら、

おはなしの味を ゆっくりかみしめるように。


それは、かじる歯じゃなくて

物語を感じる “おはなしの歯”でした。


そして、ページが5まいになったころ

はじめて、だれかの手がそっと触れました。


それは、図書室にきた 小さな子の手。

指先で やさしくめくられたページに

ひらひら本は、少しくすぐったそうにふるえて——


「やっと、きみに会えたんだね」


そのとき、物語は はじめて声を持ったのです。

本も、子どもも、おたがいを見つけて、

いっしょに ひらひらと物語をあそび始めました。


---


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ