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巻き戻り悪役令嬢の奔走~ルツーラと引きこもらなかった箱入令嬢~[引きこもり箱入令嬢の外箱]  作者: 北乃ゆうひ


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第41順

あけましておめでとうございます٩( 'ω' )و

本編コミカライズ最終9巻発売中です!よしなに。


 ゲイル様の手を取った日。

 そこから、状況が一気に変わっていきました。


 いや、単にティノとゲイル様による根回しと外堀を埋める速度が恐ろしすぎたというべきでしょうか……。


 気がつくと、両家の両親からの許可が下り、私たちは無事に婚約者となりました。

 ……なんでしょう。このあっという間感は……。


 二人とも私なんかの為に全力を出しすぎでは?


 しかも、その間にモカ様とサイフォン様の婚約発表の日が過ぎました。

 前回はこの時点で幽閉邸にいたことを思うと、なんとも感慨深いというかなんというか。


 また前回は派閥争いも激しく、モカ様も引きこもりの『箱入り』だったのもあって、対外的なアピールが必要でした。

 だからこその、モカ様が中心となって冷温球(れいおんきゅう)という魔心具開発していると公表するという手段をとっていたんだと思います。


 ですが、今回は派閥争いは表面上小さく、今回のモカ様には別に対外的なアピールが必要なほどネガティブな要素がない。


 なので、冷温球はモカ様が主導ではあるものの、ドールトール王家(殿下兄弟実家)ドリップス家(モカ様実家)ウェイビック家(コナ様実家)の三家が協力して開発しており、いずれ市井にも出回るだろうと発表したのでしょう。


 一時の間、市井はおめでたい話にお祭り騒ぎになっておりましたが、それもややして沈静化。

 ただ、発表会中に限界が来て箱に入ってしまったモカ様を見た城下の人々は、彼女のことを箱姫と呼ぶようになり、空前の箱ブームとやらがやってきているのだとか。


 ……なんなのですか、箱ブームって?


 さておき。

 そんなめまぐるしく状況が変わっていく日々の中のある日――


「どうしたのかしらダーリィ? 急に呼び出したりなんかして」


 ――私は、ダーリィに呼び出されて二人きりのお茶会をしています。


「ルツーラ様にお詫びとご挨拶をと思いまして」


 お詫びはともかく挨拶――?

 私は僅かに首を傾げましたが、すぐに合点がいきました。


「そう。ご両親から従者育成機関(エクセレンス)への入学許可が下りたのね」

「……はい」


 ダーリィは少し驚いた様子を見せてから、小さくうなずきます。


「本当にルツーラ様はすごいですね。わたしはまだ何も言っていないのに」

「本来は私なんて足下にも及ばないような権謀術数に長けた方々相手に身体を張らねばならないのだもの。多少は察しが良くなっていなければ、対応できませんもの」

「……そうですね」


 俯きながらお茶で口を湿してから、懺悔(ざんげ)でもするかのようにダーリィは言葉を漏らします。


「そう。ルツーラ様はすごかった。私なんかが囃し立てる必要がないくらい。

 ……いいえ、私はルツーラ様がすごいコトを皆に知って欲しがっていたくせに、何がすごいのか、どうすごいのか、それをちゃんと理解できずにいた――それも違うか。理解しようとすらしていなかった」

「そうね。周囲がすごいと言うから貴女はそれにのっかってすごいすごいと言う一方で、『すごい』と皆が言い出したキッカケや理由、その意味を一切気にしていなかった」

「今思うと本当に阿呆ですよね。ルツーラ様は、私に何度も『自分の理想のルツーラ様像を押しつけるな』と口にされていましたけれど、冷静になった今ならそれもちょっと違うのだと思います」

「……違う、と言いますと?」

「無かったんですよ。そんなもの。私には『私が理想とするルツーラ様像』なんてものすらなかった。

 ただルツーラ様にはすごい存在でいてほしかった。そのクセ、何を持ってすごいとするのかという定義みたいなのはなくて……ただただ叱られたり貶められたり嫌味を言われたり、誰かに頭を下げたり――そういう姿のルツーラ様を見たくなくて、認められなくて、無意味に喚き散らしているだけだったんですよ。すごい人の横にいるすごい自分でいたかっただけ。

 理想なんてものは最初からなくて、ただただ見たくない姿を見せるルツーラ様を見たくなかった。どうしてそんな姿を取るかどうかなんて関係のない、ただの癇癪(かんしゃく)でしかなかった」


 小さな声で、でもまるで血を吐くように、己の愚かさの全てをさらけ出すように。

 その姿は幽閉邸の中で、繰り返し己の愚行を後悔し続けた自分のよう。


「……取り返しが付かなくなる前に、貴女がそれに気づけて良かったわ」

「ルツーラ様……」

「それに気づけないまま貴女が何か罪を犯し、幽閉邸に閉じ込められたりしたら、きっと貴女は何も変わらないまま生涯を幽閉されて過ごしたコトでしょう」

「そう、ですね……自覚はあります」

「結構。ならばそれで構いませんわ。まだ取り返しがつくタイミングで目覚めたコトは、喜ぶべきコトですから」


 そう告げて、私はお茶で口を湿したあと、小さく息を吐き笑いかけます。


「エクセレンスは大変厳しい場所だと聞いています。その歪みきった感情、存分にたたき直してもらってきなさい。ダーリィ。

 貴女のその曇った双眸が、完全に晴れた時にまた会いましょう。その時は、後悔を懺悔も飲み込んで背筋を伸ばして前を見る貴女であるコトを祈ります」


 これはきっと、自分自身へと言い聞かせる言葉。

 ゲイル様やティノが言ってくれた言葉を自分なりに解釈し、同じように罪悪を背負い続けようとするダーリィに、正しい背負い方を教える先達としての言葉。


「例え罪を犯した者であったとしても、幸せを求めるのは悪いコトではないのだと聞きます。罪悪を理由に希望や幸せから目を逸らすようなコトだけはなさいませんように。またお会いできる日を楽しみにしています」

「はい。これまでありがとうございました。私も、またルツーラ様とお会いできる日を信じて、研鑽(けんさん)に励みたいと思います」


 一時間にも満たない二人だけのお茶会はこれで閉会です。


 帰りの場所へと向かう途中、ルゴダーナ子爵夫妻がこちらを見ているのに気づきました。

 それどころか、こちらへ向けて深々と頭を下げています。


 どうしたものかと思いましたが、私はそれに小さな会釈で応じるだけにしました。


 あとはダーリィ次第。

 エクセレンスにて、立派な従者になれるよう鍛えて貰えば良い話。


 さて、次は――と。


「お嬢様、次はパシャマール伯爵邸でよろしかったでしょうか?」

「ええ……そうですが――」


 ゆっくりと動き出しながら訊ねてくる御者に、私は僅かばかり逡巡にしてから答えます。


「まだ少々約束の時間には早いわね……。貴族街の入り口にあるお菓子のお店は分かるかしら? 追加で別の手土産を買おうと思います。そちらへお願い」

「かしこまりました」


 そうして、私は手土産を一つ追加してゲイル様のお宅へと向かうのでした。


 本編コミカライズ最終9巻が発売されましたので、本編の方の閑話に要望の多かったタルっ子のエピソードを公開しました٩( 'ω' )وそちらもよしなに

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― 新着の感想 ―
くぅぅぅ こっちもコミカライズして欲しい…
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